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4.平凡令嬢、平凡に出会う。
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-パオラ視点-
感情的になってしまい、つい神級魔法で街を吹き飛ばしてしまいました。
賑わいを見せた商業都市は、今や跡形は無く、ただ静けさが漂うだけの荒野と化したの見て、思わず笑いが零れてしまいます。
「ははっ……あはは……あはははははは!!!!!」
カチュアお姉さまに復讐する。そう心に決めて覚悟をしたはずですが、所詮は平凡。
すぐさま街を潰した後悔の責で、心が今にも潰れてしまいそうです。
別に街の人達を殺す必要はなかった。そんなのは分かっています。
ですが、ただただ嬉しそうにカチュアお姉さまの事を口にする彼らが、憎くて憎くて……。
狂ったように涙を流しながら声を上げて笑い、得も言わぬ不快感に襲われ、その場で膝をつきげぇげぇと胃の中の物を吐き出しました。
あぁ……本当に狂ってしまえたなら、どれほど楽だったでしょうか。
覚悟して頂きますよう、お願い申し上げます等と思いながらも、覚悟が出来ていなかったのは私の方。
そんなだから私は、平凡なのでしょう。
「これをやったのは、貴女でしょうか?」
気が付くと、私の近くには一人の青年が立っていました。
短く切り揃えられた輝くようなブロンドの髪。決して身なりが良いとは言えないはずなのに、どこか品格が漂い、声を聴くだけで何故か安心をさせてくれる方でした。
腰に剣を携え、ジュリアン様と同じ青い目で私を見ています。
「はい。全て私がやりました」
素直に告白します。私がやりましたと。
彼は騒ぎを聞きつけて、鎮圧に来た憲兵の方でしょうか? それとも軍役の方でしょうか?
いえ、どちらでも構いません。
「なので……私を殺してください」
こんな中途半端な私を終わらせてくれるのでしたら、誰でも良いです。
そこで私の記憶は途切れました。
気が付くと、ベッドの上で寝かされていました。
少し体が痛く感じるのは、ベッドが硬いからでしょう。
「ここは……?」
ジュリアン様をカチュアお姉さまに取られ婚約破棄をされ、感情のまま駆け出した先の商業都市を荒野にした所までは覚えていますが。
「お目覚めでしょうか」
「ひゃいっ!」
唐突に声を掛けられ、思わず変な声が出てしまいました。
クスクスと笑われ、たまらずシーツで顔を隠してしまいます。
私に声をかけ笑っているのは、商業都市で私に声をかけてきた青年です。
「これは失礼」
そう言いながらも、クスクスと笑うのを辞めてくれません。
まるでお転婆をした子供を見守る保護者のような目で見られ、余計に恥ずかしく感じてしまいます。
「申し遅れました。私はリカルドと申します。以後お見知りおきを」
リカルドと名乗った青年は、右手を左胸に当て、軽く頭を下げた。貴族式の挨拶です。
「リカルド様、ですか……。あの、すみません。先に一つ確認をさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「はい。答えられる範囲で宜しければですが」
「もしかして、ジュリアン皇太子様の弟のリカルド様でしょうか?」
良く見ると、何となくですが似ているように思えます。
「はい。私はジュリアン皇太子の弟、皇位継承権第2位であるリカルドです」
リカルド様といえば、平凡故に非凡な兄を恐れ国外へ逃亡したと噂される人物ですが、そんなお方が何故ここにいるのでしょう?
リカルド様の表情は、笑みが消え真剣な顔つきに変わっていきます。
「折り入って貴女にお願いがあります。非凡な兄に復讐するために、平凡な私に力を貸していただきたい」
感情的になってしまい、つい神級魔法で街を吹き飛ばしてしまいました。
賑わいを見せた商業都市は、今や跡形は無く、ただ静けさが漂うだけの荒野と化したの見て、思わず笑いが零れてしまいます。
「ははっ……あはは……あはははははは!!!!!」
カチュアお姉さまに復讐する。そう心に決めて覚悟をしたはずですが、所詮は平凡。
すぐさま街を潰した後悔の責で、心が今にも潰れてしまいそうです。
別に街の人達を殺す必要はなかった。そんなのは分かっています。
ですが、ただただ嬉しそうにカチュアお姉さまの事を口にする彼らが、憎くて憎くて……。
狂ったように涙を流しながら声を上げて笑い、得も言わぬ不快感に襲われ、その場で膝をつきげぇげぇと胃の中の物を吐き出しました。
あぁ……本当に狂ってしまえたなら、どれほど楽だったでしょうか。
覚悟して頂きますよう、お願い申し上げます等と思いながらも、覚悟が出来ていなかったのは私の方。
そんなだから私は、平凡なのでしょう。
「これをやったのは、貴女でしょうか?」
気が付くと、私の近くには一人の青年が立っていました。
短く切り揃えられた輝くようなブロンドの髪。決して身なりが良いとは言えないはずなのに、どこか品格が漂い、声を聴くだけで何故か安心をさせてくれる方でした。
腰に剣を携え、ジュリアン様と同じ青い目で私を見ています。
「はい。全て私がやりました」
素直に告白します。私がやりましたと。
彼は騒ぎを聞きつけて、鎮圧に来た憲兵の方でしょうか? それとも軍役の方でしょうか?
いえ、どちらでも構いません。
「なので……私を殺してください」
こんな中途半端な私を終わらせてくれるのでしたら、誰でも良いです。
そこで私の記憶は途切れました。
気が付くと、ベッドの上で寝かされていました。
少し体が痛く感じるのは、ベッドが硬いからでしょう。
「ここは……?」
ジュリアン様をカチュアお姉さまに取られ婚約破棄をされ、感情のまま駆け出した先の商業都市を荒野にした所までは覚えていますが。
「お目覚めでしょうか」
「ひゃいっ!」
唐突に声を掛けられ、思わず変な声が出てしまいました。
クスクスと笑われ、たまらずシーツで顔を隠してしまいます。
私に声をかけ笑っているのは、商業都市で私に声をかけてきた青年です。
「これは失礼」
そう言いながらも、クスクスと笑うのを辞めてくれません。
まるでお転婆をした子供を見守る保護者のような目で見られ、余計に恥ずかしく感じてしまいます。
「申し遅れました。私はリカルドと申します。以後お見知りおきを」
リカルドと名乗った青年は、右手を左胸に当て、軽く頭を下げた。貴族式の挨拶です。
「リカルド様、ですか……。あの、すみません。先に一つ確認をさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「はい。答えられる範囲で宜しければですが」
「もしかして、ジュリアン皇太子様の弟のリカルド様でしょうか?」
良く見ると、何となくですが似ているように思えます。
「はい。私はジュリアン皇太子の弟、皇位継承権第2位であるリカルドです」
リカルド様といえば、平凡故に非凡な兄を恐れ国外へ逃亡したと噂される人物ですが、そんなお方が何故ここにいるのでしょう?
リカルド様の表情は、笑みが消え真剣な顔つきに変わっていきます。
「折り入って貴女にお願いがあります。非凡な兄に復讐するために、平凡な私に力を貸していただきたい」
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