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第4章

(ざまぁ)ミーシャ視点「切り裂かれた所を糸で縫い合わせれば、死なないらしいよ」

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 -ミーシャ視点-


 あの日、ゴブリンを産んだ私に、天からの声が聞こえた。

『今度はお前が天罰を与える番だ』

 ゴブリン我が子を殺そうとする女冒険者から、自らの手で打ちたいと言って剣を借り、隙をついて冒険者や神父たちを皆殺しにしてやった。
 その時生まれたゴブリンは、私の言葉が分かるらしく、他のゴブリン達と私を結ぶかけ橋になってくれた。

 そして、ドーガ達の場所を知らせたら、アンリ達が奇襲のタイミングを作ってくれた。
 これはきっと、自らの罪を認め、罰を受け悔い改めた私への神の御めぼしでしょう。
 神よ。感謝します。


 ★ ★ ★


 さぁて、メインディッシュの時間だ。
 思わず笑みがこぼれる。

「お、おい。俺をどうするつもりだ? 俺は男だからゴブリンと子作りなんて出来ないぞ!」

 あらあら。
 もしかして、ドーガは知らないのかな?

「ゴブリンは相手の性別関係なしに孕ませれるって、もしかして知らなかったの?」

「えっ……どうやって?」

 本当に知らないのか、キョトンとした顔をしている。
 そう、知らないのね。じゃあ教えてあげよう。
 だって、「どうやって?」と聞かれたのだから。

「お前ら、やれ」

「グギャアアアアアアア!!!」

 4匹のゴブリンウォーリアがドーガに襲い掛かり、服を脱がし始めた。

「えっ、ちょ……まさかっ!?」

 どうやら答えが分かったようだ。

「待て、俺はそんな趣味はない。頼む。やめてくれ後生だ! ミーシャ、お前に忠誠を誓う。だからッ!」

「ダメよ。これは天罰なのだから」

「やめ、やめろぉおおおおおおおお!! んああああああ!!!」 

 ドーガの汚い声が、辺り一面に鳴り響く。

「やめてくれ! し、死んでしまう!」

 痛みか、それとも男として辱められているからか、涙を流しながらドーガは私に許しを請う。
 死んでしまう、か。私も初めてをドーガに奪われた時、死ぬんじゃないかと思うほど痛かった。
 そして、痛みに耐えながら泣く私に言った事を、今言い返そう。
   
「おいおい、もっと気持ちよさそうに腰を振れよ」

 目配せすると、ゴブリンウォーリアの一体が、ドーガの目の前に剣を振り下ろした。 

「は、はい! 喜んで腰を振らせて頂きます!」

 ハハッ、いい気味だ。 
 難癖付けて毎晩のように私に迫って来たんだ。次は自分が毎晩迫られる番だ。


 ★ ★ ★


 7日後。
 そこには妊婦のようにお腹を大きくしたカテジナ、シャルロット、そしてドーガが居た。
 妊婦のように大きくなっているのは当然だ。全員子供が出来ているからだ。
 もちろん相手は人間じゃない。ゴブリンだ。

「いや、ゴブリンの子供を産むなんて嫌よ!」

「大丈夫。初めは不安かもしれないけど、慣れれば難しくないわ」

 不安がるシャルロットのお腹を優しく撫でる。
 元気が良いようで、お腹越しに動いているのが分かる。

「嫌よ! 絶対に嫌!」

 なおも喚き叫ぶシャルロット。
 不意にシャルロットの手をホブゴブリンが握った。

「あら、シャルロットのお産を手伝ってくれるのね。それじゃあ私はカテジナの方に行くわ」

「や、やだ。コイツ気持ち悪いから退けてよ。お願い、ミーシャがここに居て!」

 愛し合う者同士の中に割り込むほど、野暮ではない。
 私はその場から離れ、カテジナの元へ歩き出す。
 シャルロットの叫び声の質が変わった。騒いだことで出産が始まったのだろう。

「カテジナ。調子はどう?」

「……れつに」

 シャルロットに対し、カテジナは従順だ。
 多分「別に」と言ったのだろう。舌を取ってしまったので上手く発音が出来ていない。

 最初は反抗的な態度を取っていたが、そのたびに舌を引き抜き、爪を剥ぎ、逆らうとどうなるか体で教えた。
 今では呂律ろれつの周らない舌で「ごめんなさい」を繰り返すようになった。彼女は天罰が下ったことを理解したのだろう。 
 
「う、ぐぅ……」

「あら、カテジナも始まったのね」

 額には玉のような汗がにじんでいる。
 初めてのお産で、痛いのだろう、苦しいのだろう。
 これが私の受けた天罰で、貴女達がこれから受ける天罰だ。
 
 カテジナとシャルロットの出産は程なくして終わった。
 彼女達にはこの後もゴブリン達の子作りに励んでもらう。もし彼女たちの罪が清算されるとしたら、誰かが助けに来たときだろう。
 それまでは罰を受け続けてもらう。

 だけど、その前にドーガの出産だ。

「ああああああああああ!!!!!」

 先ほどからドーガは体を反り、ずっと叫んでいる。
 お腹がぶよぶよと動くたびに、声を張り上げ叫ぶ。こちらももう間もなくだろう。

「ぐあああああああああああ!!!」

 ドーガの腹から爪が生えて来た。
 すると、そのまま腹を突き破りゴブリンが中から出て来た。
 男の場合はこうしてゴブリンを出産する。 

「うわぁ、うわあああああああ!?!?!?」

 自分の内側から割かれた腹を見て、素っ頓狂な声を上げるドーガ。
 もはや助からないのは一目瞭然だった。

「大丈夫よ。実は私が生む前に、教会で偶然男性が出産してるところに立ち会ったの」

 その男もドーガのように腹を引き裂かれていた。
 助からないだろう。そう思ったがその男は死ななかった。

「切り裂かれた所を糸で縫い合わせれば、死なないらしいよ」

 私はドーガの腹の中に手を入れて、破れた部分を糸で縫い始める。
 糸を縫うたびに、ドーガの体はビクンビクンと跳ね上がり、口からは泡を吹き始めた。

「シャルロット。言わなくても分かるわよね?」

「は、はい。『中級回復魔法ハイヒール』をかければ良いんですね!?」

「ええ。そうよ」

 100%助かるというわけではないので、万が一死んでしまっては困る。
 回復魔法をかけながら、チクチクと縫い。何とか終わった。

 これで、またゴブリンを産ませることが出来る。
 コイツには死ぬまで死ぬような思いをさせてやるんだ。
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