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第4章

カテジナ視点「ドーガに闇討ちをかけて、役人に突き出しましょう?」

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 -ドーガパーティ-
 -カテジナ視点-


 それは突然だった。
 宿でシャルロットと他愛もない話をして過ごしていたら、ドンドンと走る足音が近づいて来て、ドアが強引に開けられた。

「ちょっとドーガ。部屋に勝手に入ってこないでよ」

「それ所じゃない。今すぐ荷物をまとめろ。逃げるぞ!」

「逃げるって」

「良いから早くしろ!」

 血相を変えたドーガの言葉に、シャルロットが動き出し、荷物をまとめ始めた。
 かくいう私も、シャルロットに続き荷物をまとめたのだ。

 逃げる理由は分からないが、思い当たるフシは少々ある。
 多分シャルロットも私と同じで、何か思い当たるような事があるのだろう。

 この時、もう少し冷静に考えておくべきだった。
 あの男ドーガが私達の身を案じるような、出来た人間じゃないって事を忘れていた。 

 急いで支度を終え、さぁ街を出ようとした所で追手が来た。

「クソ、このままじゃ追いつかれちまう。何か魔法で追い払ってくれ」

「あー、もう。中級風魔法サイクロンウォール!」

 魔法使い系のスキルで、小規模の竜巻を発生させ、広範囲に強風の壁を作る風魔法。
 範囲は広く、水魔法の氷の壁や土魔法の壁と違い破壊しづらいために広範囲で長時間の足止めを出来る。
 ただし、水や土と違い、侵入しづらいだけで侵入できないわけではない。ここで余裕を見せて足を止めればまたすぐにでも追いつかれる可能性がある。

「今の内に急いで逃げるよ!」

「おう!」


 ★ ★ ★


 何とか逃げ切り、私達は森の中に作られた建物に身を隠した。
 かつてここいら一帯が集落だった頃、森へ狩りに来る人たちが休憩や狩りの寝床として使っていた場所だろう。
 王都が出来てからは誰も使っていないようで、中は埃っぽい。

「実はドランの奴を殺したのがバレてよ。わりぃ、ギルドも俺の事を庇いきれなかったみたいだ」

 もしかしたら自分のせいかもしれない。だから何故追われてるかあえて聞かなかった。
 だというのに、このバカドーガは、わりぃと言いつつも自慢げに話し始めたのだ。

 私とシャルロットは一切関係なく、こいつ一人の責任だ。
 なのに私は、逃げる際に中級風魔法を使い、ドーガを捕まえるのを妨害してしまった。
 これでは私も関わっていると言っているようなものだ。もはや「関係ないから私は帰る」とは言えない状況だ。
 
「追手が来ていないか、ちょっと表を見てくる。大丈夫だ、お前たちは俺が守ってやるからな!」

 誰のせいだよ。
 もう最悪だ。よりにもよって殺人犯の片棒を担いでしまったのだから。
 今頃、私の冒険者資格は剥奪されているだろう。それどころか指名手配の手続きだってされているかもしれない。

 こんなことなら、ゴブリンの巣の依頼の後にパーティを抜けておくべきだった。
 前に出たがるバカだから、適当に死ぬまで前衛をやらせておけば楽が出来ると思っていたのに、想像を超えるバカだった。

「ねぇカテジナ」

「何よ!」

「私達、犯罪者として追われちゃうわね」

「そうよ! 私達もう終わりよ! あのバカのせいで!」

 まだやりたいことが沢山ある。
 こんな所で終わりたくなんてない。もし自首をしても罪は軽くならないだろう。
 あれこれ考えるが、良い答えは出ない。完全に袋小路だ。

「まだ終わっていないわ」

「……えっ?」

 シャルロットが私に近づき、こっそり耳打ちをしてくる。
 万が一にもドーガに聞かれないように、小声で話しかけて来た。

「やったのは、ドーガだけ。あいつはバカだから捕まっても自慢げに俺がやったというわ」

「そ、そうね」

「だから、ドーガに闇討ちをかけて、役人に突き出しましょう?」

 それで上手くいくのだろうか?
 そう悩む私に、シャルロットは「ドーガに脅された」事にするための口裏を合わせる話をし始めた。
 確かにこれならいけるかもしれない。ビクビクしながら逃亡生活をするよりはマシだ。
 それに、そうでもしないと冒険者の資格が無くなってしまう。それが無くなったら私が出来る仕事なんて……考えたくもない。

 問題はいつ襲うかだった。
 だけど、その問題はすぐに解決された。

 見回りから帰って来たドーガと、どのルートで逃げるか話している時だった。
 不意にドアが開けられた。

「ドーガ。ここに居たのか」

 ドアの先には、役立たずの元パーティメンバーだったアンリが居た。
 ドーガはアンリを見ている。

 私はシャルロットに目配せし、お互いに頷き合った。
 どうやってここをかぎつけたか分からないけど、これはチャンスだ。
 ここでドーガがアンリに夢中になったタイミングで、闇討ちをかける。
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