「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう
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第1章
第3話「コイツは思ったよりも大物かもしれないな」
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「まずはこの依頼から始めようか」
ギルドで依頼を受け街を出た、近くの森へやってきた。
ここは通称『ラビットの森』と呼ばれる、駆け出し冒険者達が良く来る場所だ。
主な出現モンスターはラビット種と呼ばれる、一回りでかいウサギと、それを主食にする動物型のモンスターやゴブリン。
それと、俺達の討伐依頼であるラビットウルフ。ラビット種を襲うモンスターを狙うために擬態しているモンスターだ。
「ラビットウルフ……ウサギの狼ですか?」
「あぁ、大体そんな感じのモンスターだ。パッと見ただけではラビット種と見分けがつかないが、ラビット種と違い、群れで行動し、獲物を見つけたら強靭な顎と牙で襲い掛かってくる」
可愛い見た目に反し、大人でも群れで襲われると命の危険がある程だ。
「他のモンスターはどうしますか?」
「必要なければ無視しても構わないが、ラビット種は狩れるなら狩っておきたい所だな」
ラビット種は普通のウサギより脚力があるので、体当たりを受けるとそれなりに痛いが、大抵は人間に怯えてすぐ逃げだす弱いモンスターだ。
ちなみに種類は色によって、ホワイトラビット、ブラウンラビット等と分けられている。コイツの肉は食用に適しており、毛皮は色によってはそれなりの値段で売れるので、駆け出し冒険者には人気のモンスターだ。
冒険者ではない人間も、たまに小遣い稼ぎに狩りに来るほどだ。
今の俺は無一文。更に言えば飯抜きで腹が減っている。
ラビット種が狩れれば、その両方をどうにかしてくれるので、狩れるなら狩っておきたい。
「ふむ。早速発見だ」
「えっ、どこどこ?」
ベルがキョロキョロと辺りを見渡すが、見つけられないようだ。
それもそのはずだ。俺だってモンスターの姿は見えていない。『気配感知』のスキルで見つけただけだからだ。
本職が使えば、相手が何か分かるが、俺はあくまでそこに何かが居る程度しか分からない。
「そこの茂みの奥だ。音を立てないようにゆっくりついて来い」
「はい」
小声で返事をしたベルと身を隠しながら、茂みに移動していく。
「ピンクラビットと、ブラウンラビットだ。見えるか?」
「見えました。こっちには気づいていないみたいですが、どうしましょうか?」
「俺がスキル『プロヴォーク』を使って引き付ける。その間に倒してくれ」
「プロヴォーク?」
よく分からないといった表情をされた。
冒険者になったばかりで、クラスやスキルについてあまり知らないという事か。
「モンスターのヘイト……えっと、注意を一瞬俺に向けさせるスキルだ」
なおも分かったような分からないような微妙な表情で頷かれた。
そんな話をしてる間にピンクラビットの耳がピクピクし始めた、警戒し始めたのだろう。このままでそろそろ気づかれそうだな。
仕方がない。詳しい説明はこいつらを倒してからだ。
太い棒をベルに手渡す。道中で拾ったただの木の棒だが、ラビット種を倒すくらいならこれで十分だ。
「行くぞ。準備は良いか?」
「は、はい」
俺は一時的にモンスターからヘイトを向けられるスキル『プロヴォーク』を発動させた。
「来たぞ!」
俺の『プロヴォーク』で、ラビット種が速度を上げて俺へと向かって来る。
お手並み拝見といきたいが、彼女じゃラビット種をいきなり倒すのは無理だろう。
かつて、ドーガ達とここへ来たときは酷かった。僧侶と魔法使いが「こんな可愛いのに殺すなんて出来ない!」とごねにごねたからだ。
きっと、ベルも「こんな可愛いモンスターさんを倒すのは無理ですぅ」なんて言い出すに違いない。
「たぁ」
少し間延びした声が聞こえた。
ベルは木の棒を高く振り上げ、迷うことなくピンクラビットの脳天へ振り下ろした。
ベキッと鈍い音を立て、ピンクラビットがその場でピクピクとしている。
「やぁ」
ベルがもう一度、気の抜けるような声で木の棒を振り上げて、今度はブラウンラビットの頭をカチ割った。
……マジか。
「あの、ボクどうでした?」
おずおずと上目遣いで聞いてくる割には、やや興奮気味だ。上手くいった自信はあるのだろう。
実際上手くやってくれているわけだが。
素直にほめると「えへへ」と顔を赤らめて喜んでくれた。
「そうだ。この辺に水辺ってありますか?」
水辺?
あぁ、返り血で手が汚れたから洗いたいのだろうな。
「こっちだ」
水辺まで案内した。
すると俺のナイフを借りて、ベルは先ほど仕留めたピンクラビットとブラウンラビットの血抜きを始めた。
「エモノの解体の仕方はお父さんに教わったので、少し得意なんです」
鼻歌交じりに毛皮を剥いで、次々と解体していくベル。
コイツは思ったより大物かもしれないな。
俺は食べる分のラビットの肉を焼きながら、ベルの評価を改めた。
ギルドで依頼を受け街を出た、近くの森へやってきた。
ここは通称『ラビットの森』と呼ばれる、駆け出し冒険者達が良く来る場所だ。
主な出現モンスターはラビット種と呼ばれる、一回りでかいウサギと、それを主食にする動物型のモンスターやゴブリン。
それと、俺達の討伐依頼であるラビットウルフ。ラビット種を襲うモンスターを狙うために擬態しているモンスターだ。
「ラビットウルフ……ウサギの狼ですか?」
「あぁ、大体そんな感じのモンスターだ。パッと見ただけではラビット種と見分けがつかないが、ラビット種と違い、群れで行動し、獲物を見つけたら強靭な顎と牙で襲い掛かってくる」
可愛い見た目に反し、大人でも群れで襲われると命の危険がある程だ。
「他のモンスターはどうしますか?」
「必要なければ無視しても構わないが、ラビット種は狩れるなら狩っておきたい所だな」
ラビット種は普通のウサギより脚力があるので、体当たりを受けるとそれなりに痛いが、大抵は人間に怯えてすぐ逃げだす弱いモンスターだ。
ちなみに種類は色によって、ホワイトラビット、ブラウンラビット等と分けられている。コイツの肉は食用に適しており、毛皮は色によってはそれなりの値段で売れるので、駆け出し冒険者には人気のモンスターだ。
冒険者ではない人間も、たまに小遣い稼ぎに狩りに来るほどだ。
今の俺は無一文。更に言えば飯抜きで腹が減っている。
ラビット種が狩れれば、その両方をどうにかしてくれるので、狩れるなら狩っておきたい。
「ふむ。早速発見だ」
「えっ、どこどこ?」
ベルがキョロキョロと辺りを見渡すが、見つけられないようだ。
それもそのはずだ。俺だってモンスターの姿は見えていない。『気配感知』のスキルで見つけただけだからだ。
本職が使えば、相手が何か分かるが、俺はあくまでそこに何かが居る程度しか分からない。
「そこの茂みの奥だ。音を立てないようにゆっくりついて来い」
「はい」
小声で返事をしたベルと身を隠しながら、茂みに移動していく。
「ピンクラビットと、ブラウンラビットだ。見えるか?」
「見えました。こっちには気づいていないみたいですが、どうしましょうか?」
「俺がスキル『プロヴォーク』を使って引き付ける。その間に倒してくれ」
「プロヴォーク?」
よく分からないといった表情をされた。
冒険者になったばかりで、クラスやスキルについてあまり知らないという事か。
「モンスターのヘイト……えっと、注意を一瞬俺に向けさせるスキルだ」
なおも分かったような分からないような微妙な表情で頷かれた。
そんな話をしてる間にピンクラビットの耳がピクピクし始めた、警戒し始めたのだろう。このままでそろそろ気づかれそうだな。
仕方がない。詳しい説明はこいつらを倒してからだ。
太い棒をベルに手渡す。道中で拾ったただの木の棒だが、ラビット種を倒すくらいならこれで十分だ。
「行くぞ。準備は良いか?」
「は、はい」
俺は一時的にモンスターからヘイトを向けられるスキル『プロヴォーク』を発動させた。
「来たぞ!」
俺の『プロヴォーク』で、ラビット種が速度を上げて俺へと向かって来る。
お手並み拝見といきたいが、彼女じゃラビット種をいきなり倒すのは無理だろう。
かつて、ドーガ達とここへ来たときは酷かった。僧侶と魔法使いが「こんな可愛いのに殺すなんて出来ない!」とごねにごねたからだ。
きっと、ベルも「こんな可愛いモンスターさんを倒すのは無理ですぅ」なんて言い出すに違いない。
「たぁ」
少し間延びした声が聞こえた。
ベルは木の棒を高く振り上げ、迷うことなくピンクラビットの脳天へ振り下ろした。
ベキッと鈍い音を立て、ピンクラビットがその場でピクピクとしている。
「やぁ」
ベルがもう一度、気の抜けるような声で木の棒を振り上げて、今度はブラウンラビットの頭をカチ割った。
……マジか。
「あの、ボクどうでした?」
おずおずと上目遣いで聞いてくる割には、やや興奮気味だ。上手くいった自信はあるのだろう。
実際上手くやってくれているわけだが。
素直にほめると「えへへ」と顔を赤らめて喜んでくれた。
「そうだ。この辺に水辺ってありますか?」
水辺?
あぁ、返り血で手が汚れたから洗いたいのだろうな。
「こっちだ」
水辺まで案内した。
すると俺のナイフを借りて、ベルは先ほど仕留めたピンクラビットとブラウンラビットの血抜きを始めた。
「エモノの解体の仕方はお父さんに教わったので、少し得意なんです」
鼻歌交じりに毛皮を剥いで、次々と解体していくベル。
コイツは思ったより大物かもしれないな。
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