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疲労と回復

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「ねぇ、王子様を変な事に巻き込まないでくれる?」

ずっと黙っていたレッドが口を開いた。

レッドの瞳が俺に突き刺さり、何も言えなくなる。
そんなに瞳で怒るほど気に触るような事を言っただろうか。

いや、俺がフォルテなだけで特になにかがあるわけではないのかもしれない。
ゲームのレッドも、慕ってくるフォルテにいい感情を抱いていなかった。
今思えば、友人と口では言っていたがずっと下に見ていたのかもしれない。

でなければ、今こうして敵意を向けられる事もない筈だ。

レッドに言おうと口を開いたが、レオンハルトに手を向けられて口を閉ざした。

「巻き込まれたとは思っていません、僕がお願いしたんです」

「普通科は理性のないサルの集まりですよ、レオンハルト様」

レオンハルトを本気で心配しているのか、心配のフリして普通科の生徒をバカにしているのか、両方か分かりにくい。
本人は大丈夫だと言いたげだったが、俺達は守る立場の人間だ…危険なところに行かせられない。

人がいない時間なら案内出来るから、その時にと約束した。
見るだけなら夕方とかなら誰もいないし、静かでいいかもしれない。

レッドもそれ以上何かを言ってくる事はなかった。

食事は、美味しかったんだと思うけど…レッドの視線を感じながら食べるものは味がなかった。
せっかくいいところの食堂なのに、もったいない。

食事を終えて、俺は普通科に戻るからカノン達と別れた。
レッドの視線を感じない方法って、なにかないのかな。

「あ、ラウル!」

「……フォルテ?」

向かいの廊下からラウルが大きな荷物を抱えて歩いてきた。
そういえばなにかロボットを作ってるって言っていた事を思い出した。

近くにはユリウスの姿がないから、昼は別行動だったのか。

大変そうだな、俺は部活には入っていないから気楽だ。
なにかやろうにも、運動神経は平凡だし文学も分からない。
出来るのは魔術だけだけど、この学院で魔術を使えるのは俺だけだからそんな部活はない。

荷物を持ってくるのが大変そうだから、俺の方からラウルに近付いた。
機械の事はさっぱり分からないから、これが何なのか分からない。

「特別科の護衛してたんだよね、なにかあった?」

「あったら困るよ、普通に食事していただけ」

「そっか、それは良かった」

ラウルは荷物を探っていて、なにかを取り出した。
それは、虹色に輝く液体が入った怪しい瓶だった。

何なのかさっぱり分からず、ラウルに恐る恐る聞いてみた。
ラウルは「疲労回復液だよ!試作品だけど」と満面の笑みを向けていた。

疲労回復、見ているだけで疲れが溜まりそうな色をしている。

ラウルの瞳がキラキラしていて、断りづらい雰囲気になっていた。

ラウルから瓶を受け取って、飲むジェスチャーをされた。
一気に飲めば、なんて事はないよな…ラウルが危ないものを友達に進めるとは思えない。

一気に液体を流し込んで、未知なる味に悶える覚悟をしていた。
液体からは想像も出来ない甘い味が口に広がり後味は悪くなかった。

「美味しい、なんで?」

「ふっふっふ、効果だけじゃなくて味にもこだわってるんだよ!それで、効果は?」

「ん?…あ、なんか身体が軽くなった感じがする」

「そうでしょそうでしょ!これもコンテストに出すんだよ!」

「機械だけじゃなくて、薬も作ってるんだな」

「動いて喋るだけが機械じゃないからね、中に薬を入れたらご主人様をケアする事も出来るんだよ!」

ラウルは自信に溢れた顔をして、荷物を抱えて俺に手を振った。
これから部室に行って荷物を置いてくるみたいだ。

ラウルを見送って、俺は教室に向かって歩き出した。

薬の研究もしているのか、配膳ロボットに薬のケアを入れると凄いものが出来そうだな。
本当に気分が晴れやかだな、今なら駆け足で廊下を走り回れる!怒られるからやらないけど…

疲れているように見えたのかな、確かにレッドの事で顔色が悪かったかもしれない。

ラウルにはなにかお礼がしたいな、そういえば街の甘味処がお気に入りだったな。
甘いものが好きだから、あの薬も甘くしたのかな。

今度の休みに一緒に行こうかな、お礼として奢ろう。

あ、もしかしてラウルなら苦手な相手を気にしなくなる機械があればいいな。
ラウルの話を聞くと、機械に無限の可能性があるような気がしている。

教室に行くと、ユリウスがクラスメイトと話していて俺に気付いた。
クラスメイト達との話を終わらせて、俺に手を振っていた。

「ごめん、邪魔しちゃった?」

「いや、もう話は終わって時間潰してただけだから」

ユリウスの後ろに座ると、椅子ごとこちらを向いた。

さっきそこでラウルと会った事を話すと、ユリウスもあの薬を飲んだみたいだ。
「いつも疲れてる顔してるから!」とラウルはにこやかに言っていたみたいで、ユリウスは薬をもらってラウルを軽く叩いたと言っていた。

疲れた顔なのを気にしているのか、眉間に指を当てて伸ばしていた。
いろいろユリウスも苦労してるよな、俺やラウルで…

ごめん、ユリウスも一緒に甘味処に行こう、奢るよ。

ユリウスはあまり甘いものを食べてるところを見た事がない。
苦手だったら、連れていくのはまたユリウスを疲れさせてしまう。

「ユリウスは甘いもの大丈夫?」

「平気だ、じゃないとアイツの薬を飲めない」

「確かに、凄い甘かったからね」

それなら良かった、四人で一緒に甘味処に行こう。
カノンにも、日頃の感謝を伝えるために奢りたい。

久々に四人で遊びたい気持ちもある、カノンが護衛になってからあまり四人で会う機会がなかった。
教室に入ってきたラウルを手招きして、二人に甘味処に行く事を提案した。

二人は頷いてくれたけど、奢る事に関しては首を縦に振らなかった。
俺なりにお世話になっているのもあるから奢りたかったんだけどな。

家は金持ちだけど、ちゃんとコツコツ毎月の小遣いを節約していたお金だ。
俺がそうしたいから、遠慮しなくていいけど負担に思われたかもしれない。

「俺のお礼なんだけど、ユリウスには迷惑掛けっぱなしで、ラウルにはさっきの薬のお礼として」

「迷惑掛けられたとは思ってねぇよ、顔は生まれつきだ…俺達ら対等だろ」

「そうだよ、それに薬のお礼なら薬で返してくれたらいいよ」

ラウルがふざけて悪どい顔をして、ユリウスが顔面を叩いていた。
「酷いよ暴力ユリウス!」と、ネコパンチを繰り広げていたが簡単にユリウスに止められていた。

行くならもうすぐ街で行われる創立パレードに合わせようという事になった。
ラウルはよく見えるとっておきの場所があると張り切っていた。

そういえば、創立パレードにはレオンハルトが出るんだよな。
この時は、本職の騎士団の人達が王族を守るから気にしなくていい。

純粋に祭り事は好きだから楽しみだな、去年のようにならない事を願うよ。

放課後、レオンハルトを寮の部屋に送り届けてから俺達も部屋に入った。
カノンにも伝えると、当日は教会の飾り付けやいろんなところに手伝いに行かないといけないみたいで、行けないと申し訳なさそうにしていた。

俺はまだ諦めてはいない、四人で集まるせっかくの機会だからな。
何も無理に遊ばなくてもいいんだ、カノンと一緒にいるだけでいい。
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