9 / 62
初めての友達.
しおりを挟む
8***
お祈りする時間はあっという間に過ぎ去り、陽が落ちる前に帰る事にした。
カノンには、いろいろと頼りっぱなしで感謝しかない。
教会の前までカノンと一緒に来て、少し前に出たところで足を止めた。
後ろを振り返ると、カノンが俺を見送るために立っていた。
どうしたらいいのか今は分からない、だけどカノンと知り合いになれて良かった。
カノンがいなかったら、きっと俺は諦めていたかもしれない。
あのプロフィールは脳内に焼き付いて、離れたりしない。
でもそれはきっとカノンと知り合いになっていない世界の俺だ。
今の俺とカノンではない、もしもの話でしかない。
カノンはずっと俺とまっすぐ向き合って話してくれた。
だから、俺も本当の気持ちを隠さずカノンと接したい。
それが、人の心に触れる攻略というものなんだと思う。
そういえば、カノンと自己紹介をしていない事を思い出した。
俺はミッシェルのプロフィールでカノンを知れたが、カノンはきっと俺の名を知らない。
おもちゃをいろんな人に見せる時に、自己紹介をして回った事はない。
周りの人達は、俺の家が有名な金持ちだから名前を知っているだけだ。
カノンもそうかもしれないが、自己紹介は始まりに必要だ。
「俺の名前、フォルテって言うんだ」
「私はカノン、この教会に住んでいる」
「また、教会に来てもいい?」
「祈りを捧げる者は誰だろうと拒んだりはしないよ」
カノンの言葉に、心からの笑みを向けた。
俺の笑みにつられるように、カノンの表情も柔らかくなる。
大きく手を振ってカノンと別れて、自分の家に向かった。
もう外には子供達はいなくて、酒場の灯りが街を照らしていた。
家に帰ると、当然のように母さんに頭の包帯の事を聞かれた。
周りにどう思われてるか、心配掛けるから母さんには言えない。
幸いな事に、母さんは専業主婦で外とはあまり交流がない。
祖父母も後ろめたい仕事をしているから、外と交流する事を嫌がっている。
父さんは仕事上、外に出るのは仕方ないから放置しているが、実の娘である母さんには厳しい。
俺も最初の頃は止められていたが、俺が嫌われていると分かった瞬間に自由にさせた。
とにかく、誰かと仲良くなって秘密を知られるのを恐れているんだろう。
俺がカノンと仲良くしていたら、絶対に妨害しそうで嫌だ。
今は別の国で仕事しているからバレる心配がないから良かった。
何をしているのかは、知りたくないし俺には関係ない。
母さんも、今なら自由に出来るのに幼少期からの言いつけをずっと守っている。
転んだら目の前に石があってぶつかったと嘘を付いた。
母さんには心配掛けたくない、この事は墓場まで持っていくつもりだ。
不安そうな母さんと執事に明るく振る舞って、大丈夫だとアピールした。
何も言わない俺に折れたのは二人の方だった。
心配する母さんに教会に通う事になったと伝えた。
何処に行くか分かれば心配する事もないだろう。
今まで神様を信じている素振りがなかったからか、驚いた顔をしていた。
でも、教会に通うと決めたのは本当だ…カノンを見ていると神様はいると信じさせてくれる。
夕飯と風呂を済ませて、部屋に戻った。
包帯は母さんがやってくれて、包帯に触れた。
母さんの話によると、傷口は小さいものみたいだ。
血が流れていたから死んだと思っていたから、このくらいで済んで良かった。
ベッドに座ってやる事もないから寝ようと思った。
脳内で自称神様が話しかけてきた。
『攻略するつもりが、攻略されてない?』
ミッシェルの言葉にハッと我に返った。
そんな、いつの間に攻略されたんだ?
俺はただカノンに感謝しているだけで、カノンに恋愛感情を抱いているわけではない。
友達として好きも攻略なら、さすが主人公を落とす攻略キャラクターだ。
でもそれのなにが問題なのか分からない。
攻略キャラクターと親しくなるなら、そっちの方がやりやすいのではないのか?
「別にいいんじゃないか?それで」
『君は忘れているみたいだけど、100人を攻略するんだよ…一人に夢中になってどうするの?平等に愛してあげないと』
そんな事を言われても、俺にどうしろって言うんだ?
確かに誰かを傷付けないためには、同じくらい愛する必要がある。
それに、俺が好きになっても片想いで終わるのは目に見えている。
攻略キャラクターは常に好かれ慣れているわけだしな。
俺だってそう簡単に男を好きになる筈もなく、先が見えず真っ暗だ。
それに俺が一番謝らなくてはいけない子があの場にいなかった。
何処にいるんだろう、俺に会いたくないだろうけど会わないと何も始まらないとカノンが教えてくれた。
あの時の誤解をちゃんと晴らさないといけない。
お祈りする時間はあっという間に過ぎ去り、陽が落ちる前に帰る事にした。
カノンには、いろいろと頼りっぱなしで感謝しかない。
教会の前までカノンと一緒に来て、少し前に出たところで足を止めた。
後ろを振り返ると、カノンが俺を見送るために立っていた。
どうしたらいいのか今は分からない、だけどカノンと知り合いになれて良かった。
カノンがいなかったら、きっと俺は諦めていたかもしれない。
あのプロフィールは脳内に焼き付いて、離れたりしない。
でもそれはきっとカノンと知り合いになっていない世界の俺だ。
今の俺とカノンではない、もしもの話でしかない。
カノンはずっと俺とまっすぐ向き合って話してくれた。
だから、俺も本当の気持ちを隠さずカノンと接したい。
それが、人の心に触れる攻略というものなんだと思う。
そういえば、カノンと自己紹介をしていない事を思い出した。
俺はミッシェルのプロフィールでカノンを知れたが、カノンはきっと俺の名を知らない。
おもちゃをいろんな人に見せる時に、自己紹介をして回った事はない。
周りの人達は、俺の家が有名な金持ちだから名前を知っているだけだ。
カノンもそうかもしれないが、自己紹介は始まりに必要だ。
「俺の名前、フォルテって言うんだ」
「私はカノン、この教会に住んでいる」
「また、教会に来てもいい?」
「祈りを捧げる者は誰だろうと拒んだりはしないよ」
カノンの言葉に、心からの笑みを向けた。
俺の笑みにつられるように、カノンの表情も柔らかくなる。
大きく手を振ってカノンと別れて、自分の家に向かった。
もう外には子供達はいなくて、酒場の灯りが街を照らしていた。
家に帰ると、当然のように母さんに頭の包帯の事を聞かれた。
周りにどう思われてるか、心配掛けるから母さんには言えない。
幸いな事に、母さんは専業主婦で外とはあまり交流がない。
祖父母も後ろめたい仕事をしているから、外と交流する事を嫌がっている。
父さんは仕事上、外に出るのは仕方ないから放置しているが、実の娘である母さんには厳しい。
俺も最初の頃は止められていたが、俺が嫌われていると分かった瞬間に自由にさせた。
とにかく、誰かと仲良くなって秘密を知られるのを恐れているんだろう。
俺がカノンと仲良くしていたら、絶対に妨害しそうで嫌だ。
今は別の国で仕事しているからバレる心配がないから良かった。
何をしているのかは、知りたくないし俺には関係ない。
母さんも、今なら自由に出来るのに幼少期からの言いつけをずっと守っている。
転んだら目の前に石があってぶつかったと嘘を付いた。
母さんには心配掛けたくない、この事は墓場まで持っていくつもりだ。
不安そうな母さんと執事に明るく振る舞って、大丈夫だとアピールした。
何も言わない俺に折れたのは二人の方だった。
心配する母さんに教会に通う事になったと伝えた。
何処に行くか分かれば心配する事もないだろう。
今まで神様を信じている素振りがなかったからか、驚いた顔をしていた。
でも、教会に通うと決めたのは本当だ…カノンを見ていると神様はいると信じさせてくれる。
夕飯と風呂を済ませて、部屋に戻った。
包帯は母さんがやってくれて、包帯に触れた。
母さんの話によると、傷口は小さいものみたいだ。
血が流れていたから死んだと思っていたから、このくらいで済んで良かった。
ベッドに座ってやる事もないから寝ようと思った。
脳内で自称神様が話しかけてきた。
『攻略するつもりが、攻略されてない?』
ミッシェルの言葉にハッと我に返った。
そんな、いつの間に攻略されたんだ?
俺はただカノンに感謝しているだけで、カノンに恋愛感情を抱いているわけではない。
友達として好きも攻略なら、さすが主人公を落とす攻略キャラクターだ。
でもそれのなにが問題なのか分からない。
攻略キャラクターと親しくなるなら、そっちの方がやりやすいのではないのか?
「別にいいんじゃないか?それで」
『君は忘れているみたいだけど、100人を攻略するんだよ…一人に夢中になってどうするの?平等に愛してあげないと』
そんな事を言われても、俺にどうしろって言うんだ?
確かに誰かを傷付けないためには、同じくらい愛する必要がある。
それに、俺が好きになっても片想いで終わるのは目に見えている。
攻略キャラクターは常に好かれ慣れているわけだしな。
俺だってそう簡単に男を好きになる筈もなく、先が見えず真っ暗だ。
それに俺が一番謝らなくてはいけない子があの場にいなかった。
何処にいるんだろう、俺に会いたくないだろうけど会わないと何も始まらないとカノンが教えてくれた。
あの時の誤解をちゃんと晴らさないといけない。
144
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む
紫楼
ファンタジー
酔っ払って寝て起きたらなんか手が小さい。びっくりしてベットから落ちて今の自分の情報と前の自分の記憶が一気に脳内を巡ってそのまま気絶した。
私は放置された16歳の少女リーシャに転生?してた。自分の状況を理解してすぐになぜか王様の命令で辺境にお嫁に行くことになったよ!
辺境はイケメンマッチョパラダイス!!だったので天国でした!
食べ物が美味しくない国だったので好き放題食べたい物作らせて貰える環境を与えられて幸せです。
もふもふ?に出会ったけどなんか違う!?
もふじゃない爺と契約!?とかなんだかなーな仲間もできるよ。
両親のこととかリーシャの真実が明るみに出たり、思わぬ方向に物事が進んだり?
いつかは立派な辺境伯夫人になりたいリーシャの日常のお話。
主人公が結婚するんでR指定は保険です。外見とかストーリー的に身長とか容姿について表現があるので不快になりそうでしたらそっと閉じてください。完全な性表現は書くの苦手なのでほぼ無いとは思いますが。
倫理観論理感の強い人には向かないと思われますので、そっ閉じしてください。
小さい見た目のお転婆さんとか書きたかっただけのお話。ふんわり設定なので軽ーく受け流してください。
描写とか適当シーンも多いので軽く読み流す物としてお楽しみください。
タイトルのついた分は少し台詞回しいじったり誤字脱字の訂正が済みました。
多少表現が変わった程度でストーリーに触る改稿はしてません。
カクヨム様にも載せてます。
BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている
青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子
ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ
そんな主人公が、BLゲームの世界で
モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを
楽しみにしていた。
だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない……
そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし
BL要素は、軽めです。
僕の兄は◯◯です。
山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。
兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。
「僕の弟を知らないか?」
「はい?」
これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。
文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。
ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。
ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです!
ーーーーーーーー✂︎
この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。
今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。
35歳からの楽しいホストクラブ
綺沙きさき(きさきさき)
BL
『35歳、職業ホスト。指名はまだ、ありません――』
35歳で会社を辞めさせられた青葉幸助は、学生時代の後輩の紹介でホストクラブで働くことになったが……――。
慣れないホスト業界や若者たちに戸惑いつつも、35歳のおじさんが新米ホストとして奮闘する物語。
・売れっ子ホスト(22)×リストラされた元リーマン(35)
・のんびり平凡総受け
・攻めは俺様ホストやエリート親友、変人コック、オタク王子、溺愛兄など
※本編では性描写はありません。
(総受けのため、番外編のパラレル設定で性描写ありの小話をのせる予定です)
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!
をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。
母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。
生を受けた俺を待っていたのは、精神的な虐待。
最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていた。
だれでもいいから、
暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。
ただそれだけを願って毎日を過ごした。
そして言葉が分かるようになって、遂に自分の状況を理解してしまった。
(ぼくはかあさまをころしてうまれた。
だから、みんなぼくのことがきらい。
ぼくがあいされることはないんだ)
わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望した。
そしてそんな俺を救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったんだ。
「いやいや、サフィが悪いんじゃなくね?」
公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。
俺には新たな家族ができた。俺の叔父ゲイルだ。優しくてかっこいい最高のお父様!
俺は血のつながった家族を捨て、新たな家族と幸せになる!
★注意★
ご都合主義。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。
ひたすら主人公かわいいです。苦手な方はそっ閉じを!
感想などコメント頂ければ作者モチベが上がりますw
【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが
咲
BL
俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。
ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。
「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」
モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?
重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。
※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。
※第三者×兄(弟)描写があります。
※ヤンデレの闇属性でビッチです。
※兄の方が優位です。
※男性向けの表現を含みます。
※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。
お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる