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2章

嵐がやって来る

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ヴェルサス様から夜会の話があってから、警備の観点で朝のお手伝いは中止になった。

これから夜会に参加する各国の来賓がこの城に滞在するそうで、それまで私は来賓の方に会ってはいけないらしい。

その為部屋も移動することになり、王族の居住区に引っ越しすることになってしまった。

本来なら落ち人はもともと王族の居住区に住むらしいのだが、私がシンリ湖にいた事と発見までに時間がかかった事など色々な観点から、客室にいてもらったとヴァレン様から申し訳なさそうに説明をされた。

今、そのヴァレン様に私の新しい部屋に案内をされたのだが。


部屋に入るなりまず金ピカに光った豪華な装飾が目に入り、壁は調度品を引き立たせるような真っ白な壁。カーテンは淡いピンクだが、タッセルが凄い金色。
ソファーもテーブルも、横にある棚も恐らく一流の職人が作りました!と言わんばかりにオーラを放っている。

「わ、私こんな部屋無理です。客室に帰りたいです、、、」

「マイ様、客室に長く住まわれていたので愛着があるのは分かりますが、本来お通しするのはこちらのお部屋だったんです。さ、入ってしまえばきっと慣れますよ」

ヴァレン様は困り顔になるも、さっと切り替わり強引に私を部屋の中へ引き入れた。


いやいや、元の世界は1DKの庶民的な家でして、家具も食器もシンプルイズベストなものしか置いてないんです。
さすがにカーテンは奮発して遮光、断熱、防音がついたやつにはしましたよ?
でも、こんなに豪華な部屋は私には無理です。

「もうあちらの客室は来賓用になっていますので、戻ることは出来ません。それにマイ様がこちらに居てくれた方が私も早く駆けつけられますし、警備の観点からも安全ですのでご了承下さいね」

でました。ヴァレン様のキラキラオーラ。

ふふ、あれからだいぶ耐性がつきましたよ。


「警備の手間をとらせるのは申し訳ないので、我慢してこちらにいることにします、、、」

私は渋々了承することにした。


それから数日後、来賓の方々がお見えになったようで城内に賑やかさと緊迫感が漂い始める。

ヴェルサス様もヴァレン様もお忙しいようでたまに顔を見せに来てくれるが、前みたいに長居はしなくなった。
勿論それが当たり前の筈なのに、少し寂しいと感じてしまう私は欲張りなんだろうか。


ミーチェさんはそんな私に苦笑しながら、今日は久しぶりに緑茶ベースのお茶を出してくれた。

「あ、このお茶久しぶりですね。そういえばいつか聞こうと思ってたんですけど、このお茶ってなんて言うんですか?」

「これはリョクチャという飲み物で、初代落ち人様が見つけた薬草を煎じてます。お出しするのは王族の方だけなのですが、陛下よりマイ様にお出しするように言われましたので最初の数日間だけお出ししてました。他の方々は渋いといってお飲みにならないので今は陛下とマイ様しか召し上がりません。
効能は魔力を抑えたり、気分を落ち着かせたりするそうですよ?」

ミーチェさんは微笑みながらお代わりを入れてくれた。

そして私はやっぱり緑茶か!と心の中で叫んだ。

初代落ち人は間違いなく日本人であることに間違いない。

確か、初代は元の世界に戻ったと言っていたから、恐らく日本へ戻ったのだろう。

強く戻りたいとは思わない。けれど、一度戻って整理したいことはいっぱいある。
お城の本を読めば何かわかるかな、と思っていたら廊下の外が賑やかになってきた。

「何やら外が騒がしいですね。マイ様、確認して参りますのでお部屋からでないでくださいね」

ミーチェさんはそう言って外の様子を確認しにいった。

扉を開けたときに、女性と男性が言い争う声が聞こえたが何かあったのだろうか?
部屋から出ては行けないと、言われたのでのんびり緑茶を飲んでいると段々と声が近くなってきた。

そして、勢いよくドアの扉が開かれ一人の女性が現れた。そして

「ここはわたくしの部屋よ!そこをお退きなさい!」

大きな声で捲し立てられた。

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