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1章

【幕間】王子と騎士団長の攻防

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お気に入り登録100件御礼話を作成中です。題材はリクエストの多かったニートな彼編です!
が、彼の行く末を決めかねている駄目作者なので、アップまでもう少しお時間頂きたく。
その代わりといってはなんですが、性格が崩壊し始めた二人のお話をどうぞ~

***************************

俺はこの国の第一王子ヴェルサス。
この国では強い魔力を持つと言われる、黒髪持ちだ。まぁ、畏怖の対象でもあるが。

祖先の初代落ち人も黒髪で魔力が強かったという文献が残っているので、俺はその力を強く受け継いだのだろう。

今のところ、他の人よりレベルの高い魔法が使えるくらいでその恩恵を受けているとは言いがたいが、欲にまみれた臣下を黙らせることが出来るのはいいことだ。

ちなみにヴァレンとヴィーノ以外には王子キャラで接している。

1年前の落ち人騒動がやっと終わったと思った矢先、ナハトから結界に歪みが発生したと連絡が入った。
結果新たな落ち人が現れ、保護までに2日かかってしまった。

保護したその日の報告会。
俺の従兄弟で第3騎士団長のヴァレンティノに落ち人についてどういう人物か聞いてみた。
もう、前回の落ち人には充分懲りたから明日いきなり会うよりも前もって情報が欲しい。

 ヴァレンは珍しく饒舌で、短時間の接触の割には落ち人についてよく観察していた。
どうやら今回の落ち人はとても聡明で、前回とは大違いのようだ。思い出して苦笑すると珍しくヴァレンも笑っていた。俺とヴァレンは人前で滅多に笑わないせいか「氷の~」なんて言われているらしい。
だからこそ、部屋を出る前にニッコリ微笑んだ従兄弟を見て気持ち悪いと言ってやった。

その後すぐに父上の部屋へ行き、落ち人について報告をした。
父上は「ふむ」と一旦考え込むと

「明日の謁見は会議室にて茶会形式で行おう」

思わず「はぁ?」と口に出そうになった。

「その方が今回の落ち人は、我々に対して話をしやすそうだ」

父上は魔力は低いが、落ち人由来の何かの能力を持っている。恐らく今回も何かを感じ取ってのことだろう。
俺は反論もせず、簡単に明日の流れを父上と確認し部屋を後にする。そしてすぐに各師団長へ明日の謁見について伝令を飛ばした。


翌朝。
想像通り執務室へ行くと、すでに各師団長と宰相がテーブルに座って話し合っていた。
題材は謁見という名のお茶会について。
ひとまず場をまとめ、父上の意向である旨と質問は1人に絞ることにし落ち人へ不快感を与えないようにすることを決めた。

しばらくすると、弟のヴィーノが帰って来たので報告が終わり次第寄ってもらうよう伝えた。
それからいくつか執務をこなし戻ってきたヴィーノにも状況を説明をして、ついに謁見の時間となった。


彼女が部屋に入って早々、保護したことへ感謝された際は誰もが驚いたことだろう。
そしてきっと皆思った。

「今回の落ち人は聡明な方だ!」と。

父上は珍しく機嫌がよく、笑顔を振り撒き茶を楽しみ始める。若干話し方が変わっているが大丈夫か? 

それから落ち人の話を聞き、ナハトからいくつか質問をしてもらう。
そこで予想外の質問が出た。

「最後に、、、マイ様は瞳の色が黒いようですが髪色は違いますよね?瞳の色、もしくは髪色を変化させているのですか?」

「地毛は真っ黒ですよ?」

俺はつい声を上げそうになった。
過去の落ち人達は皆金髪やら茶髪で、黒髪は初代以降来ていない。ここにいる誰もが彼女の存在認識を改めただろう。

黒髪持ちは畏怖の対象だが、初代落ち人の功績とその力の強さ故に民衆からの信仰心が高い。
また落ち人の知識もあるが故に、彼女の利用価値は他の落ち人より高くなってしまう。

下手に自由を与えれば、きっと彼女はいらない戦に巻き込まれることになるだろう。
やっと俺と同じ黒髪持ちに出会えたのに、彼女をそんな事へ巻き込ませたくない。

何とかして彼女を守らなければ、、、。


俺は慌てて父上に発言の許可をもらい、口八丁で何とか城内に留まってもらいたい旨を説明し、質問があると思うから部屋に行きたいと半ば強引に進めた。
彼女はすぐに了承してくれたので思わず顔が綻ぶ。

その後、時間になってしまった為父上は退出することになったが、お茶会に誘っている辺りかなり気に入ってるのだろう。
というより、あの口うるさい母上が一言も話さなかったことも一因かもしれない。

その後彼女も部屋を出ていったので、残った者たちで今後の話をする。、、、筈だった。


「ヴェルサス王子、随分強引な手を使いましたね」

ヴァレンがニコニコと気持ち悪い笑みを浮かべている。

「彼女が黒髪持ちということが判明した以上、通常の落ち人と同じ扱いをするのは危険すぎるからな」

とりあえずもっともらしい事を言って誤魔化してみるも、ヴァレンは相変わらずニコニコ顔を崩そうとしない。こいつ楽しんでやがる。

「彼女は黒髪持ちで、聡明で落ち人。王子の伴侶の相手には十分なお方です。それに王子も、今までの方とは反応も違うようですし」

宰相はいつの間にか席について、茶を飲みはじめる。

「確かに同じ黒髪持ちであれば魔力の均衡も取れるし、世継ぎも期待できますね!私個人としてはマイ様にはずっとこの国にいて欲しいですし」

ナハトは彼女を研究対象として見ているのか、質問時から興奮しっぱなしだ。
お前一応魔法師団長だろ?

「尊き方を御守りすることができるのであれば、我々は命をかけて守る。前回の落ち人は、範囲外だ」

第1師団長はかなりの脳筋だが、すでに仕えるものが分かっているらしい。ある意味さすがだ。

「街に来ることがあったらいくらでも警護するよ。謙虚な子と街を歩くのって楽しいし、何でも買ってあげたくなるよね」

第2師団長はかなりの女好きだが、どうやら彼女は別格らしい。確かに彼女には何でも買ってあげたくなるな。
街にお忍びで行くのも悪くない。

「私は、ヴェルサス王子に従いますよ。なんなりとお申し付け下さい」

ヴァレン、お前キャラが崩壊してるぞ。
さっきから表情豊かで気持ち悪い。


話の方向がかなりずれてしまった為、一度お開きにすることになった。
俺はこのあとヴァレンと彼女の部屋に行く予定があるが、まずは執務室に戻って軽く書類を片付けなければ。

俺とヴァレン、そしてヴィーノも一緒に執務室へと向かう途中ヴィーノが爆弾を落とした。


「兄上もヴァレンティノも、マイ殿が来てから楽しそうですね。彼女はどっちに付くのかな」


そう言ってヴィーノは軽い足取りで執務室へと向かっていった。
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