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北の森のダンジョン編

第77話 北の森のダンジョンその4

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「美~味~し~い~!!美味しいです、師匠!」

「凄い!私の知ってるエリンギよりも、もっと美味しい。」

あっ、やっぱりエリンギなんだ。


「うん。良い出来だ。」

「ガルドさん。これは何で炒めてあるんですか?」

「バターですよ。」

「バター。王都で見かけましたが、エリンギとこんなに合うなんて知りませんでした。」

「師匠!お代わりください!」

「もうないよ。」

「えー!!ショックです。」

サラは物欲しそうに俺の皿を見つめる。


「彼は、食べなくて良いんですか?」

「あー、トラちゃんは平気です。ゴーレムなんで。」

「えぇ!!ゴーレムって、あのゴーレム?」

「はい。体は土じゃなくて、俺の特製ですけど。」

「私たちは魔具師なんです。しかも、師匠は天才魔具師なんです!」

「そうだったんですか・・・道理で珍しい武器で戦っていたんですね。てっきり魔術師なのかと思ってました。」

「これは銃と言ってですね!」

「あー、サラの話は長くなるんで。これも魔導具の1種なんです。一応、秘密にしといて下さいね。」

「はい。分かりました。」

サラは1人で銃の説明を続けている。


「リポポさんはキノコが好きなんですか?」

「えっと、実は・・・私も秘密なんですけど。」

「分かりました。秘密は守ります。」

「私の固有魔法が菌糸の魔法なんです。」

「えっ、禁忌の魔法?」

「違います。菌糸です。」

「きんし。菌糸ってキノコの元になってる、あの菌糸?」

「そうです!よくご存知ですね。」

「そんな魔法もあるんですね。」

「はい。私はこの魔法でキノコを育てる事が出来るので、珍しいキノコを探して旅をしているんです。」

「そうだったんですか。ちなみに、シイタケとかあります?」

「まぁ!シイタケをご存知とは、本当に博識なんですね。」

「あるんですか!?シイタケがあれば、スープの出汁にも使えるし、干して乾物にするのも良いんですよねぇ。」

「シイタケを干すんですか?斬新ですね。」

「干したシイタケの方が旨味が増すらしいですよ?」

「知りませんでした。ガルドさん、恐るべし。」

その後もリポポさんと珍しいキノコなど、情報交換を続ける。
サラはその間もずっと1人で銃について熱く語っていた。


「さて、お腹も満足したし、少し仮眠しておきますか?」

「その方が良いですかね?」

「ダンジョン内だと昼夜が分からないから、仮眠は取れる時に取っておいた方が良いと思いますよ。」

「なら、そうしましょう。見張りはトラちゃんがやってくれますので。」

「それは助かりますね。」

1人で話しているサラの目を覚まさせて、それぞれのテントを用意する。


「リポポさんのテントは?」

「私は、コレです。」

リポポさんの手には平たいキノコが。


「このキノコに水をあげると。」

ムクムクとキノコが膨らんでいく。
すぐにカマクラくらいの大きさになった。


「これはドームダケと言って、水をあげると膨らむんです。しかも中が空洞になっているんで、テントの代わりになるんです。」

「へぇー、こんなキノコもあるんですね。」

「これも、食べられるんですか!?」

「残念ながら、ドームダケは無味無臭なので美味しくないんです。」

「残念です!」

トラちゃんに見張りをお願いして、仮眠を取らせてもらう。



「うーん。結構、寝たかな?」

時計も、太陽さえもないので、どれくらいの時間を寝たのかは分からない。
体感的には3時間ぐらいは寝たと思える。
テントを片付けていると、サラも起きて出てきた。


「おはようございます、師匠。」

「おはよう。寝れたか?」

「はい。グッスリでした。」

ドームダケが揺れる。
地面まで垂れている笠を持ち上げて、リポポさんが出てきた。


「おはようございます。」

「おはようございます。これは、どうやって仕舞うんですか?」

「そのまま放っておくと、また縮むんです。なので、使い捨てにする事が多いですね」

「へぇー。そうなんですか。」

テントを持ち歩かなくて良いのは楽で羨ましいな。
テントと荷物を片付けて整理しておく。
しっかりと休憩が取れたので探索を再開しよう。


「リポポさん、俺たちより先に進んでいる冒険者はいるんですかね?」

「うーん。ほとんどの冒険者は、あの乱戦に巻き込まれたはずだけど。あの場から逃れた人がいないとは限らないですね。」

だとすると、もうボスモンスターと対峙している冒険者がいるかもしれないな。
ダンジョンに変化がない所を見ると、討伐はまだされていないみたいだけど。
恐らく、もうすぐ最奥のはずだ。
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