魔具師になったら何をつくろう?

アマクニノタスク

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町おこし編

第21話 ゴムを作ろう

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ガサガサ ガサガサ

茂みが大きく揺れて出て来たのは・・・

ビグルだった。


「って、ビグルかよ!」

「なんだ、ガルド。お前だったのか。」


ビグルは毒蛇の間引きで森に入っていたのだが、聞き慣れない音がしたので様子を見にこちらへ来たそうだ。
猪の魔物もどうやら俺の銅鑼の音が原因で寄って来てしまったらしい。

丁度良いのでビグルに魔物の解体を手伝ってもらった。
俺はファングボアの牙を切り落とし、ビグルには毛皮をお願いした。

ビグルも町に戻るそうなので荷物を分けて運ぶ。
帰りはビグルに魔物を避けた道を進んでもらったのですんなりと戻れた。

牙や毛皮の換金はビグルに任せた。
俺は家に戻り採取した素材を工房に置く。
そして大工のゲンガーさんの所で新しい木桶を3つ買ってから、朝に仕込んだゴムの樹液を回収しに行く。

設置しておいた3つの木桶を確認すると、桶の3分の1程度しか溜まっていなかった。
新しい木桶と交換して樹液を回収する。
家に戻り樹液を工房に置いてからビグルの実家へ向かう。

ビグルは依頼の報告をしに冒険者ギルドへ行ってしまったそうだ。
代わりにキリサさんが対応してくれた。

「ビグルから換金分の代金を預かっているわよ。」

「キリサさん、ありがとうございます。いくらになりましたか?」

「毛皮に牙と骨素材で合計2銀貨になったけど、どうかしら?」

「はい、それでお願いします。」

「ありがとう、またよろしくね。良かったら武器も見ていく?」

「い、いや。武器はまた今度にします。」

「あら、残念。また来てね。」


今日はキリサさんの趣味に付き合っている時間はないのだ。
家に帰る前に食材屋へ寄っていく。

食材屋のバンズのおっちゃんから林檎を2カゴ買う。そして古くなったワインはないか聞いてみると、2樽あるとの事なので格安で譲ってもらう事にする。
ワインは持ち帰れないので、後で運んで貰う事にした。

家に帰るとまずは体を拭いてさっぱりとさせる。

「さてと、色々と試していかないとな。」

工房に素材を運び、まずは水筒に入れて置いたゴムの樹液を新しい木桶に入れ替える。
よく観察すると小さなゴミや不純物が多い。
精製スキルを試してみる。

『精製』

樹液が淡く光り、ぽわーっと煙が出た。
不純物が取り除かれて綺麗なゴムの樹液になった。上手くいったようだ。

次は林檎を麻袋に2個入れる。
それを空のタライの上で踏み潰す。
林檎の果汁が滲み出てくる。絞り出すように踏み続けて果汁を集める。

精製した樹液に果汁を加えてかき混ぜる。
これで酸と反応してゴムが固まるはずだ。
前世にテレビで見て知った程度の浅知恵なので配分などはわからない。
そのあたりは試行錯誤するしかないな。

次は土ごと持ち帰った樹液を精製する。
しかし不純物が多いからか煙がすごい事になった。
モクモクと煙が上がり止まらない。
堪らず窓を開けて工房から退避する。

そんなタイミングでバンズのおっちゃんがワイン樽を届けに来てくれた。
今は使っていない部屋があるので、そこへ2人で運び入れた。
おっちゃんにお礼を言って見送る。

ワイン樽は蓋を取ってしまい代わりに布を被せておく。そして部屋を暗くして安置しておく。
こうすればワインが酸化していずれはワインビネガーになるはずだ。酢ができれば酢酸として果汁の代わりに使える狙いなのだが。上手くいくといいなぁ。

工房へ戻ってみると煙は晴れていた。
木桶の中を確認すると綺麗なゴムの樹液に精製されている。
そして果汁を混ぜたゴムを確認すると固まっている。
弾力性のある生ゴムが出来上がった。
後は乾燥させれば加工に使えそうだ。
生ゴムのままではビョーンと伸びたり縮んだりするゴム独特の性質はない。
生ゴムに硫黄を加えなくてはダメらしいのでそれは今後の課題かな。

その後は残りの樹液を精製してから林檎の果汁をたくさん絞り出して樹液との配分を実験したりしていく。
色々なパターンの配分で少量ずつ生ゴムを作り乾燥させる為に安置していく。
この時に竹材が丁度良い器となったので活用する。
果汁を絞り切った林檎は明日にでもゴムの木の根元に埋めておこう。たぶん肥料代わりになるだろう。

切りの良いところで作業を中断する。
気が付けば夜も更けてきている。
お腹が減ったので野菜スープを作って食べた。

そして作業を再開してようやく終えたのはどっぷりと深夜だった。
明日の朝はゆっくりと寝る事にしよう。

「こんな時は自営業って良いよね。」

社畜の頃には無かった特権を使う事にしてベッドに入るとすぐに深い眠り落ちてしまった。
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