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第一章:プロローグ
第二話:入社式にて
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「いつ見ても大きいな」
今、俺が立つ目の前の建物が『異世界電気保安協会』の本部だ。
ちなみに、保安協会の後ろに見えるさらに大きな建物が『異世界電力株式会社』で、その隣が『異世界電機株式会社』である。
「よし!」
気合を入れた俺が、取っ手の無いドアへと近づくと、ドアが自動的に開いた。
これは母さんが社長を務める会社『異世界電機株式会社』の製品で『自動ドア』という。
余談だが、各種ギルドや商館などの入り口に設置されて、かなり儲かったらしい。
俺は『総合受付』と書かれたカウンターにいた女性に声をかけた。人間族の美人なお姉さんだ。
そう言えば爺ちゃんが「受け付け嬢は美人が基本」とか言ってたっけな。
「すみません」
「いらっしゃいませ。異世界電気保安協会へようこそ。本日はどういったご用件でしょうか?」
「今日ここで入社式を行うと案内状を貰ったんですが――」
「入社式は講堂で行われますので、講堂へ向かってください。場所は分かりますか?」
「はい、入社試験の時に行ったところですよね?」
「そうです。頑張ってくださいね」
受付嬢のお姉さんは、笑顔で応援してくれた。
我ながら単純だが、これだけでも嬉しくなってしまう。
「ありがとうございました」
そう言って講堂へ向かう途中、武装した職員が慌てて出ていくのに遭遇した。
様々な防御魔法が付与された制服に身を包み、颯爽と走って行く。
なんでも、森にある電線の中継局に、ゴブリンが入り込んだらしい。
数が多く、初期対応していた異世界電力の保安チームから、応援要請があったみたいだな。
電線を切られたりすると大変だからな。こういったトラブルに対処するのも大事な仕事だ。
今では『ご家庭からダンジョンまで』と言われるほど張り巡らされた送電線。
その安全確保は異世界電力株式会社がやっているが、こうして時々応援要請があるらしい。
そんな事を考えていたら、いつの間にか目的地の講堂に着いた。
中は大勢の新入社員でひしめいている。
「今年は随分沢山採用したんだな……」
そんな事をつぶやいた時、声をかけられた。
「よう、ライト」
「おはよう、ライト君」
俺に声をかけてきたこの二人は、学生時代の同級生だ。学年主席と次席だった二人で、男のエルフ族の方が「ラシーク」、モフモフした尻尾が目立つ、狐耳少女の方が「カナデ」と言う名前だ。
本来ここに居るはずのない――と俺は思っていた――二人が居たため、俺は驚いて問いただした。
「ラシークにカナデ!? なんでここに?」
「なんでって、ライト君知らないの?」
「入社式に出るからに決まってるだろうが」
「え? だってここは保安協会だぞ? お前らは電力と電機だろ?」
俺の発言に、心底呆れたという表情を見せた二人は、深くため息をついた。
「あのなぁ、この講堂は三社共同なの!」
「合同入社式だって、案内状に書いてあったでしょう?」
カナデに言われて慌ててポケットから案内状を取り出す――
「あ、ホントだ。書いてあったわ。ははは」
「ははは、じゃねぇ!」
「そうだよ、しっかりしないとダメだよ? 特に電力と保安協会は――」
その時、カナデの声を遮る様に大きな声が講堂に響いた。その大音量に思わず耳を抑える。
『これから合同入社式を始めます。新入社員の皆さんは案内状記載の座席へお座りください』
拡声魔法を使うにしても加減して欲しいな……耳が痛くなるわ!
案の定、俺よりも耳の良いラシークとカナデも耳を押さえていた。
「大丈夫か?」
「まだ耳が痛いよ」
「私も……じゃあ電機はあっちだから行くね」
「ああ、またな。カナデ」
カナデを見送っていると、ラシークが指をパチンと鳴らした。
これはラシークの癖で、何か思いついた時によく出る。
それを知ってるからか、カナデも不審そうな顔で振り返った。
特に悪巧みの時が多かったからな……そんな顔になるのも無理はない。
「入社式終わったら、皆で食事でもしようぜ?」
「俺はいいけど。カナデは?」
「私もOKよ」
「じゃあ決まりだな♪」
今回は悪巧みではなかったらしい。平穏無事で良かったはずなのに、なぜか釈然としない。
「じゃあ、俺も行くよ」
「おう、また後でな」
そう言ってラシークと別れた俺は、保安協会の座席へと進む。
俺は一番最後か……なんか最後だと補欠入社っぽく感じるよな。まぁ単純に名前の順だろうけど。
そんな事を考えながら席で待っていると、異世界電力のお偉いさんが壇上に現れた。
まぁ、殆どウチの家族なんですけどね。そうして入社式が始まった――
と思ったらもう終わった……所要時間およそ5分。
会長の爺ちゃんを筆頭に、それぞれのスピーチが1分も無いって……家じゃお喋りな癖に……
とはいえ、終わったことには変わりない。この後は各社に別れての説明会と配属先の発表らしい。
講堂から出た俺達、安全協会の新入社員一同は、先輩職員の指示に従い地下の訓練所に連れて行かれた。そこには先程壇上でスピーチした4人の内の一人が仁王立ちで我ら新入社員を待ち構えていた。
高い身長に細身の体、紳士然とした物腰だが、射貫くような眼。
背中には蝙蝠の様な翼がある魔族の男。その名を『ガリバール』と言う。
昔の魔族の進攻の際、反対派だった魔王の一人で、爺ちゃんの説得で味方になった元パーティメンバーの一人だ。そして、異世界電気保安協会の現会長でもある。
「諸君! ようこそ異世界電気保安協会へ! 私が保安協会会長のガリバールだ。君たちを歓迎する。早速だが本題に入ろう。今日これから諸君の配属先を決めるわけだが、知っての通り保安協会では即戦力を必要としている。そこで、諸君らの適性を見るため、模擬戦を行うことにした。相手は私一人だ、遠慮なくかかって来るが良い!」
会長の言葉に、静寂が広がる。そして次の瞬間には、同期達から歓声が上がった。
「うぉおおおおお!!!」
「やってやんぜ~!!」
そんな声が周りから沸き起こるなか、俺も気合を入れ直す。
希望部署への配属を狙うなら、ここは良い所を見せておかないとな!
「はい、注目~」
ガリバール会長と入れ替わりで部屋に入ってきた女性が、優しげな声で話し始める。
しかし、これから英雄との模擬戦が控えている同期達は、興奮冷めやらずと言った感じで誰も聞いていない様子だった。
壇上の女性はプルプルと震えていたが、次の瞬間、強烈なオーラと共に大声を張り上げた。
「注目って言ってんだろうがぁ!!!」
その圧力すら感じる大声に、会場は静まり返る。
そして新入社員一同の視線が、一気にその女性に集中した。
しかしその女性は、まるで何も無かったかのように、ごく普通に話を始めた。
「はい、いいですか? この隣の部屋が控室となって居ますので、各自そちらで準備を整えておいてくださいね。ちなみに男女別ですよ。間違え無いように注意してください。模擬戦は座席番号順に行います。開始は30分後です。何か質問は?」
そこまで言った女性は、一息置いて俺たちを見回す。
「よろしい。それでは準備初め!」
女性の声に一斉に動き出す同期達。俺は最後だからな。のんびり行こう。
とは言っても全部で30人だ――最後の俺が30番だからね――すぐに順番が来るだろうなぁ。
そう考えながら俺が控室に入ると、すでに着替え終わっている者が大勢いた。
全員同じ服を着ている。
魔法学校でも採用されている『運動着』ってやつだ。白い綿素材の半袖シャツに、赤いラインが入っている。下は紺の短パン。それから胸に番号と名前を書いたゼッケンを付けるらしい。
のんびり着替えていると、アナウンスがあった。
「これより模擬戦を始めます。呼ばれた者から訓練所へ出る様に!」
配属先をかけた一戦が、いよいよ始まる。
今、俺が立つ目の前の建物が『異世界電気保安協会』の本部だ。
ちなみに、保安協会の後ろに見えるさらに大きな建物が『異世界電力株式会社』で、その隣が『異世界電機株式会社』である。
「よし!」
気合を入れた俺が、取っ手の無いドアへと近づくと、ドアが自動的に開いた。
これは母さんが社長を務める会社『異世界電機株式会社』の製品で『自動ドア』という。
余談だが、各種ギルドや商館などの入り口に設置されて、かなり儲かったらしい。
俺は『総合受付』と書かれたカウンターにいた女性に声をかけた。人間族の美人なお姉さんだ。
そう言えば爺ちゃんが「受け付け嬢は美人が基本」とか言ってたっけな。
「すみません」
「いらっしゃいませ。異世界電気保安協会へようこそ。本日はどういったご用件でしょうか?」
「今日ここで入社式を行うと案内状を貰ったんですが――」
「入社式は講堂で行われますので、講堂へ向かってください。場所は分かりますか?」
「はい、入社試験の時に行ったところですよね?」
「そうです。頑張ってくださいね」
受付嬢のお姉さんは、笑顔で応援してくれた。
我ながら単純だが、これだけでも嬉しくなってしまう。
「ありがとうございました」
そう言って講堂へ向かう途中、武装した職員が慌てて出ていくのに遭遇した。
様々な防御魔法が付与された制服に身を包み、颯爽と走って行く。
なんでも、森にある電線の中継局に、ゴブリンが入り込んだらしい。
数が多く、初期対応していた異世界電力の保安チームから、応援要請があったみたいだな。
電線を切られたりすると大変だからな。こういったトラブルに対処するのも大事な仕事だ。
今では『ご家庭からダンジョンまで』と言われるほど張り巡らされた送電線。
その安全確保は異世界電力株式会社がやっているが、こうして時々応援要請があるらしい。
そんな事を考えていたら、いつの間にか目的地の講堂に着いた。
中は大勢の新入社員でひしめいている。
「今年は随分沢山採用したんだな……」
そんな事をつぶやいた時、声をかけられた。
「よう、ライト」
「おはよう、ライト君」
俺に声をかけてきたこの二人は、学生時代の同級生だ。学年主席と次席だった二人で、男のエルフ族の方が「ラシーク」、モフモフした尻尾が目立つ、狐耳少女の方が「カナデ」と言う名前だ。
本来ここに居るはずのない――と俺は思っていた――二人が居たため、俺は驚いて問いただした。
「ラシークにカナデ!? なんでここに?」
「なんでって、ライト君知らないの?」
「入社式に出るからに決まってるだろうが」
「え? だってここは保安協会だぞ? お前らは電力と電機だろ?」
俺の発言に、心底呆れたという表情を見せた二人は、深くため息をついた。
「あのなぁ、この講堂は三社共同なの!」
「合同入社式だって、案内状に書いてあったでしょう?」
カナデに言われて慌ててポケットから案内状を取り出す――
「あ、ホントだ。書いてあったわ。ははは」
「ははは、じゃねぇ!」
「そうだよ、しっかりしないとダメだよ? 特に電力と保安協会は――」
その時、カナデの声を遮る様に大きな声が講堂に響いた。その大音量に思わず耳を抑える。
『これから合同入社式を始めます。新入社員の皆さんは案内状記載の座席へお座りください』
拡声魔法を使うにしても加減して欲しいな……耳が痛くなるわ!
案の定、俺よりも耳の良いラシークとカナデも耳を押さえていた。
「大丈夫か?」
「まだ耳が痛いよ」
「私も……じゃあ電機はあっちだから行くね」
「ああ、またな。カナデ」
カナデを見送っていると、ラシークが指をパチンと鳴らした。
これはラシークの癖で、何か思いついた時によく出る。
それを知ってるからか、カナデも不審そうな顔で振り返った。
特に悪巧みの時が多かったからな……そんな顔になるのも無理はない。
「入社式終わったら、皆で食事でもしようぜ?」
「俺はいいけど。カナデは?」
「私もOKよ」
「じゃあ決まりだな♪」
今回は悪巧みではなかったらしい。平穏無事で良かったはずなのに、なぜか釈然としない。
「じゃあ、俺も行くよ」
「おう、また後でな」
そう言ってラシークと別れた俺は、保安協会の座席へと進む。
俺は一番最後か……なんか最後だと補欠入社っぽく感じるよな。まぁ単純に名前の順だろうけど。
そんな事を考えながら席で待っていると、異世界電力のお偉いさんが壇上に現れた。
まぁ、殆どウチの家族なんですけどね。そうして入社式が始まった――
と思ったらもう終わった……所要時間およそ5分。
会長の爺ちゃんを筆頭に、それぞれのスピーチが1分も無いって……家じゃお喋りな癖に……
とはいえ、終わったことには変わりない。この後は各社に別れての説明会と配属先の発表らしい。
講堂から出た俺達、安全協会の新入社員一同は、先輩職員の指示に従い地下の訓練所に連れて行かれた。そこには先程壇上でスピーチした4人の内の一人が仁王立ちで我ら新入社員を待ち構えていた。
高い身長に細身の体、紳士然とした物腰だが、射貫くような眼。
背中には蝙蝠の様な翼がある魔族の男。その名を『ガリバール』と言う。
昔の魔族の進攻の際、反対派だった魔王の一人で、爺ちゃんの説得で味方になった元パーティメンバーの一人だ。そして、異世界電気保安協会の現会長でもある。
「諸君! ようこそ異世界電気保安協会へ! 私が保安協会会長のガリバールだ。君たちを歓迎する。早速だが本題に入ろう。今日これから諸君の配属先を決めるわけだが、知っての通り保安協会では即戦力を必要としている。そこで、諸君らの適性を見るため、模擬戦を行うことにした。相手は私一人だ、遠慮なくかかって来るが良い!」
会長の言葉に、静寂が広がる。そして次の瞬間には、同期達から歓声が上がった。
「うぉおおおおお!!!」
「やってやんぜ~!!」
そんな声が周りから沸き起こるなか、俺も気合を入れ直す。
希望部署への配属を狙うなら、ここは良い所を見せておかないとな!
「はい、注目~」
ガリバール会長と入れ替わりで部屋に入ってきた女性が、優しげな声で話し始める。
しかし、これから英雄との模擬戦が控えている同期達は、興奮冷めやらずと言った感じで誰も聞いていない様子だった。
壇上の女性はプルプルと震えていたが、次の瞬間、強烈なオーラと共に大声を張り上げた。
「注目って言ってんだろうがぁ!!!」
その圧力すら感じる大声に、会場は静まり返る。
そして新入社員一同の視線が、一気にその女性に集中した。
しかしその女性は、まるで何も無かったかのように、ごく普通に話を始めた。
「はい、いいですか? この隣の部屋が控室となって居ますので、各自そちらで準備を整えておいてくださいね。ちなみに男女別ですよ。間違え無いように注意してください。模擬戦は座席番号順に行います。開始は30分後です。何か質問は?」
そこまで言った女性は、一息置いて俺たちを見回す。
「よろしい。それでは準備初め!」
女性の声に一斉に動き出す同期達。俺は最後だからな。のんびり行こう。
とは言っても全部で30人だ――最後の俺が30番だからね――すぐに順番が来るだろうなぁ。
そう考えながら俺が控室に入ると、すでに着替え終わっている者が大勢いた。
全員同じ服を着ている。
魔法学校でも採用されている『運動着』ってやつだ。白い綿素材の半袖シャツに、赤いラインが入っている。下は紺の短パン。それから胸に番号と名前を書いたゼッケンを付けるらしい。
のんびり着替えていると、アナウンスがあった。
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配属先をかけた一戦が、いよいよ始まる。
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