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琴人の第一章 曲がって育った木は、真っ直ぐには育たない  

初めての会話

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小学校入学、この春、私は6才になった。
ピカピカの一年生だ、学校は楽しくない場所だとお母さんに、言われた。

周りの子は楽しそうに会話をしている、自分も混ざりたい。

お母さん以外の人と会話をしたことがない私が、誰かと楽しそうに話している姿を想像する、

《想像は現実にならなかった》

「わからない、どうやって話したらいいかわからないよ」

お母さんの言うとおり学校は楽しくないのかもしれない。

自分の机に座り、窓から空を眺めていると、1人のクラスメイトから話しかけられた。

「ねぇ」 

「うぁ!」

突然話しかけられたので、びっくりしてしまった。

「なに?そんなにビビって、」

「いや、なんでもない」

会話だ、初めての会話ができた

「嬉しい」素直にそう思いたかったが

「なに?その包帯?」

そのクラスメイトの質問に動揺した

「あ、これは…えーと…」

答えに困った、ピアノのお稽古をして、失敗したから、お母さんに叩かれた、なんてそんなこと言ったら、お母さんに怒られちゃう

「こ...これは、こ…転んで怪我しちゃったの」

とっさに嘘をついてしまった。

でも、お母さんはこの場にいない

《静かにしてればバレない》だろうと思った

「包帯の巻き方…下手ね」ー

突然発せられたその言葉に

《私の頭が沸騰した》

「それってどうゆうことなの!」

少しキレ気味にかつ、周りに聞こえないように、言い返した。

この包帯は

《お母さんが巻いてくれたんだ》

「怒ってるの?」

「だって下手じゃん!巻きが雑だし、それに、ヘンテコなシールで、止めてあるし」

このヘンテコなシールは

《お母さんから初めて貰ったものだ》

「っ‼︎‼︎」

私はその話しかけて来たクラスメイトを睨んだ。

「なに?その顔?ブサイク!」

言葉が出なかった、悔しくて、悔しくて、たまらなかったのだ!

「やっぱり、学校は楽しくない…」

◆◇◆◇◆◇

「はいはーい♪みんなー」

担任の先生が明るい声で、音頭をとった

「今日は、みんなが学校に来て、丁度1ヶ月経ちました。ということで心機一転、席替えをしたいと思います!」 

「席替えか…」

今、私の横に座っている男の子は、わかりやすく言うと不良みたいな子だ。

学校生活、1週間で2人の生徒と喧嘩しているような子だ

もちろん、怖くて、会話なんて出来なかった

新しいお隣さんは、宗善(むねよし)というなんか、名前が言いにくい子だ

特に特徴がない子だけど、

(前のお隣さんよりはいいかな)

でも、なんだろう…なんかこの子、ふわふわしているっていうか、のんびりしているっていうか、話しやすそう。

「よろしく」

「っ‼︎」

挨拶をされた。さわやかでもない、かといって元気ってわけではない声だ

コクリ.

私は軽く頷いた

「ん~、なんか今の返事、冷たい人だと思われたかもしれない。どうしよう、今度はうまく会話しないと…」

◆◇◆◇◆◇

理科の授業、なぜ、人は感情があるのか?と言う内容だった。

人間は楽しいことをしている時に笑い、悲しんでいる時は泣いてしまうのか?

それを各々の意見を共有する授業内容だったと思う。

そして、先生が言った。

「楽しくなることはいつでもできますよ!」

「ホントに~」「どうやってなるの~」

先生の問いに対して一同が疑問を持つ。

「では、起立!」

先生が合図した。

まだ、授業が終わる時間じゃないのになんでだろう?

その場にいた、全員がそう思った。

「これからダンスをします!なんでもいいので踊ってください!」

「え?」

いきなりだ!

「なんでですか~?」

1人の生徒が問いかた

「楽しくなるからですよ!さぁ!隣の席の人と手を繋いで!」

そうい言うと先生がCDプレイヤーを取り出して音楽をかけた。

周りの生徒が次々と隣の席の人と手を繋いぐ、皆ノリノリだ、では、私は躊躇していた、

《手を…繋ぐ…か》

私はお母さん以外の人と触れ合ったことがないのだ

《どうしよう!どう声をかけよう!》

「どうしたの?早く手を繋ぎなさいよ!始まらない」

他のクラスメイトがそうか話しけて来た

でも、手を繋いで、傷を見られたらって思うと、勇気が出ない

(どうしよう、どうしよう)

隣の子(宗善)と一瞬目があった

「あれ?」

私は気づいた

(この子、今の私と同じだ!勇気が出せないでいる!)

自分とそっくりだと、そう思った

(私だけじゃなかったんだ!)

私は手を繋ぐことを怖がってる、そして彼も怖がっている、

《同じ感情でここにいる》

気づくと私は、自分の両手を彼の両手に繋ぎ合わせていた。

「踊ろう!」

《初めて自分から声をかけた》

彼は驚いてた、言葉が下品だけど、ちょっと…

《おバカな表情を》していた。

私は気づいたら、自然に笑顔になっていた

あ~、《楽しいってこうゆうことなんだ!》

いや、これは彼が人を笑わせる才能があるだけかもしれない!

音楽が、人の心を楽しくしてくれてるのかもしれない!

それとも、私の自己満足なのかもしれない!

でも、それでも、音楽と彼との、この楽しい時間が続いてくれたらって思うと

それだけで、今よりも、
《楽しい毎日が過ごせるかもしれない》

◆◇◆◇◆◇◆

学校が終わって家に帰る

「今日は、楽しかったな~」

心からそう思った、帰宅すると
お母さんから突然言われた

「琴人、夏が明けたら、引っ越すわよ」

「っ‼︎‼︎」



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