上 下
5 / 20
琴人の第一章 曲がって育った木は、真っ直ぐには育たない  

航海士がいない舟

しおりを挟む
「んん...」
「頭が痛い」
「うるさいな」
この音はーーー

「ピシ‼︎‼︎」

「きゃぁぁ!」

手の甲に鋭い痛みが、走る

「っん!」

「また、音がずれたわよ!これで何回目なの?」

「ごめんなさい、お母さん...」

◆◆◆琴人の章◆◆◆


私は、小鳥遊 琴人(たかなしことり) 5歳

今、私はピアノのお稽古をしている。

でも、毎日失敗してしまう。

「ピシ‼︎」

「いたい!」

いつもこんな感じだ。

お母さんは昔、ピアニストを目指していたみたいだけど、祖母から、強引にお見合いで結婚させられたらしい。

お父さんは...

分からない。

会ったことがないから、顔もわからない。

「ねぇ!なんでアンタは何回も、何回も何回も何回も!」

「ピシ!」

「いた‼︎」

また鞭が私の手を痛めつける

その、何回も打たれた手の甲からは血が滲み出ていた。

「今日はもういいわ」

そう言ってお母さんは、救急箱を取り出して、私の手を手当てしてくれた。

お母さんはピアノのお稽古の時だけ人が変わったみたいに、怖い人になる。

でも、お稽古が終わると、いつもの優しいお母さんになる。

「ごめんなさいね、琴人、これはあなたのためなのよ!」

「わたしのため?」

「そうよ、あなたにはピアニストになって、お母さんの無念を晴らして欲しいの!」

「むねん?」

5歳児には、難しくてよくわからない言葉だった

「うん!わかった!」

私は何もわからない状態で、頷く

だって、《嫌って言ったらまた、叩かれちゃうから》

私は幼稚園に行ったことがない

毎日毎日、お家でピアノのお稽古

外で遊んでいる、私と同じくらいの人たちを眺めて、ふとつぶやく

(わたしも、遊びたい)

お母さんが、後ろで聞いていた!

「琴人、お外で遊びたいの?」

お母さんが尋ねる

「うん!」

私は即答した

お母さんがお外に連れ出してくれると思ったから

返ってきた言葉は...

「まぁ琴人‼︎あなたも私を裏切るの‼︎」

《お母さんが怒った》

「え?」 

わたしは、どうしたらいいかわからない。

お母さんが私の手を強引に引っ張った。

「いたい!いたいよ!お母さん」

握られた手には包帯が巻かれている

家の床が開いた 地下への階段が見える

「なにこれ?」

「あなたが、反省するまでここにいてもらうわ!」

「私を裏切った罰としてそこでピアノのお稽古ををしなさい!」

階段の先には、ピアノが1つと、ろうそくが1つ、あとは換気扇の音がするだけ

《それ以外は、何もない》

「いやだ...いやだ!こんな暗いところにいたくないよ!」

お母さんがわたしの顔を睨みつけて話す

「今日、ご飯抜きだから」

「琴人が悪いんだから。私の言うこと黙って聞いていれば良かったのよ。」

そう言うと、お母さんは、わたしを投げてその地下の部屋を(牢獄を)後にする。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

処理中です...