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大人になったうちの子へ
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人は変わる。今の俺にとってのずっと一緒にいたいと思っている玄樹じゃなくなる日がくるかもしれないし、玄樹にとっての俺だって同じこと。
それでも変わっていくその時々で、寄り添いたいと思い合える二人でいられたらと思っていた。俺は今でも思っている。
仁士に壁ドンされただけで上書きしたいみたいに俺に甘えてきていた玄樹が、夏休みに入ってからは毎日のように仁士の家に行くようになって、ついに俺の仕事終わりより遅い時間まで入り浸るようになった。
本当の住人なのに、俺に開けてほしくてチャイムを鳴らしてくる玄樹。俺は嬉しいくせに少しだけ呆れたような余裕のある顔を作ってからドアを開けた。
「おかえり。また仁士の家に行ってたのか?大丈夫なのか?」
玄樹の団地に入り浸ってる俺が言うのもなんか変だな。
玄樹が忘れているようなのは壁ドンされたことなのか、その時の嫌な気持ちだけなのか。日焼け止め用のパーカーを見せるように俺の前で両手を広げた。
「ただいま。大丈夫だよ。目立つ境目がつかなければ多少は焼けてもいいってカニちゃんに言われてるから」
俺の求めた答えじゃないことに気付いていない楽しそうな玄樹についてリビングに向かう。これ以上言ったら妻か母親の小言みたいだよな。
「仁士は凄いよ。俺は去年やっと進路が決まったのに、ずっと前からやりたいことがあってそのためにどうするかも決めてあるんだ。家の事情で遠回りするしかなくても諦めないでがんばってさ。なんかコウちゃんみたい。分野が違うから漢字や言葉の意味を教えるくらいしかできないけど、力になれるのが嬉しいんだ」
前向きな二人の気持ちに水を差さずに済んで良かったという気持ちの中に、氷水を飲んだように体が冷える感覚が混ざっている。
それでも変わっていくその時々で、寄り添いたいと思い合える二人でいられたらと思っていた。俺は今でも思っている。
仁士に壁ドンされただけで上書きしたいみたいに俺に甘えてきていた玄樹が、夏休みに入ってからは毎日のように仁士の家に行くようになって、ついに俺の仕事終わりより遅い時間まで入り浸るようになった。
本当の住人なのに、俺に開けてほしくてチャイムを鳴らしてくる玄樹。俺は嬉しいくせに少しだけ呆れたような余裕のある顔を作ってからドアを開けた。
「おかえり。また仁士の家に行ってたのか?大丈夫なのか?」
玄樹の団地に入り浸ってる俺が言うのもなんか変だな。
玄樹が忘れているようなのは壁ドンされたことなのか、その時の嫌な気持ちだけなのか。日焼け止め用のパーカーを見せるように俺の前で両手を広げた。
「ただいま。大丈夫だよ。目立つ境目がつかなければ多少は焼けてもいいってカニちゃんに言われてるから」
俺の求めた答えじゃないことに気付いていない楽しそうな玄樹についてリビングに向かう。これ以上言ったら妻か母親の小言みたいだよな。
「仁士は凄いよ。俺は去年やっと進路が決まったのに、ずっと前からやりたいことがあってそのためにどうするかも決めてあるんだ。家の事情で遠回りするしかなくても諦めないでがんばってさ。なんかコウちゃんみたい。分野が違うから漢字や言葉の意味を教えるくらいしかできないけど、力になれるのが嬉しいんだ」
前向きな二人の気持ちに水を差さずに済んで良かったという気持ちの中に、氷水を飲んだように体が冷える感覚が混ざっている。
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