初恋同士

ritkun

文字の大きさ
上 下
8 / 14
1

8

しおりを挟む
 玄関を開けると二人が立っていた。
「出かける時は行き先と帰る時間を言う約束でしょ?」
「まあまあ、先輩。帰って来てくれたんですから」
 普通に夫婦の会話、家族の風景だ。祖父ちゃんと祖母ちゃんも揃ったら理想の家族。そこに俺も入ってることに安心してる。

 馬場さんに言われるまで気付いてなかったけど、やっぱりちょっと不安だったのかな。
「ごめんなさい」
 馬場さんに貰った袋を持ち上げる。
「お酒を開けないならオレンジかグレフルが合うんじゃないかって馬場さんが教えてくれて」

「馬場さん?」
 あ、そうか。父ちゃんは知らないんだ。壮二さんは袋でジムの馬場さんって気付いたみたい。父ちゃんに説明しようした。
「ジムの……とりあえず座りましょうか」
 話すと長くなる関係なんだ。

 ジュースをグラスに注いで食事を再開する。まずはグレフルから。
「順を追って話すなら先輩がいなくなってからですね。
 俺が元気無いのを心配して同じクラスの高田がジムに誘ってくれたんですよ。
 その高田と同じ日に入会してたのが馬場。俺たちの一個下なんですけど、小学校は先輩と同じだったから顔と名前は知ってるって言ってました。
 それからずっと一緒でそのまま就職して、今回も三人でここに来てるんですよ」

 説明自体は長くなかった。時間にしたら15年以上だし、お店の立ち上げまで同じチームなんだから言葉にしきれない色々があるんだろう。

 父ちゃんは馬場さんを思い出そうと頑張ってみる。
「俺が六年生の時に三年生だった馬場……」
「分からないと思うって言ってました。スタイルも顔も頭も良くて運動もできて性格もいい。なのになぜか皆の印象に残らないんですよ」

 そうなんだよね。こんな完璧な人いるの?ってくらいスゴイのに、なんでかぼんやりとしか記憶に残らない。あんなに良くして貰ったのに本当になんで?

 でももっと気になることがある。
「父ちゃんがいなくなって、そんな心配されるくらいに元気無くなったんですか?」
「そりゃあ、昨日は一緒に見回りして普通に別れたのに翌日には引っ越しましたって言われたんだよ?」
「ごめん……」
「いえ責めてる訳じゃないです。
 それに、もういなくならないでしょ?」
「うん」
 父ちゃんがかわいく頷いた。

 なにこの空気。
「あれ?もしかしてもうくっついた?」
 ちらっと見つめ合ってから俯く二人。
 父ちゃんが教えてくれる。
「あの画像、壮二もずっと保存してたんだ。それで、気持ちが分かって、それで」
 そしてまたチラッと見つめ合った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男の娘を好きに成っても良いですか?

小春かぜね
BL
とある投稿サイトで、自分を応援してくれる人を、女性だと信じ好意を持ってしまった主人公。 相手のプロフィールから、思い思いに女性の姿を想像し、日増しにその想いは強く成っていく。 相手プロフィールからの情報で、自分との年齢差が有る事から、過度の交流を悩んでいた主人公だが、意外にも相手側が積極的の感じだ!? これを機会と捉えた主人公は、女性だと思われる人とやりとりを始めるが……衝撃事実に発展する!!!

今日くらい泣けばいい。

亜衣藍
BL
ファッション部からBL編集部に転属された尾上は、因縁の男の担当編集になってしまう!お仕事がテーマのBLです☆('ω')☆

死に戻り騎士は、今こそ駆け落ち王子を護ります!

時雨
BL
「駆け落ちの供をしてほしい」 すべては真面目な王子エリアスの、この一言から始まった。 王子に”国を捨てても一緒になりたい人がいる”と打ち明けられた、護衛騎士ランベルト。 発表されたばかりの公爵家令嬢との婚約はなんだったのか!?混乱する騎士の気持ちなど関係ない。 国境へ向かう二人を追う影……騎士ランベルトは追手の剣に倒れた。 後悔と共に途切れた騎士の意識は、死亡した時から三年も前の騎士団の寮で目覚める。 ――二人に追手を放った犯人は、一体誰だったのか? 容疑者が浮かんでは消える。そもそも犯人が三年先まで何もしてこない保証はない。 怪しいのは、王位を争う第一王子?裏切られた公爵令嬢?…正体不明の駆け落ち相手? 今度こそ王子エリアスを護るため、過去の記憶よりも積極的に王子に関わるランベルト。 急に距離を縮める騎士を、はじめは警戒するエリアス。ランベルトの昔と変わらぬ態度に、徐々にその警戒も解けていって…? 過去にない行動で変わっていく事象。動き出す影。 ランベルトは今度こそエリアスを護りきれるのか!? 負けず嫌いで頑固で堅実、第二王子(年下) × 面倒見の良い、気の長い一途騎士(年上)のお話です。 ------------------------------------------------------------------- 主人公は頑な、王子も頑固なので、ゆるい気持ちで見守っていただけると幸いです。

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

【完結】もう一度恋に落ちる運命

grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。 そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…? 【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】 ※攻め視点で1話完結の短い話です。 ※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

勘違いラブレター

ぽぽ
BL
穏やかな先輩×シスコン後輩 重度のシスコンである創は妹の想い人を知ってしまった。おまけに相手は部活の先輩。二人を引き離そうとしたが、何故か自分が先輩と付き合うことに? ━━━━━━━━━━━━━ 主人公ちょいヤバです。妹の事しか頭に無いですが、先輩も創の事しか頭に無いです。

処理中です...