初恋同士

ritkun

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 玄関を開けると二人が立っていた。
「出かける時は行き先と帰る時間を言う約束でしょ?」
「まあまあ、先輩。帰って来てくれたんですから」
 普通に夫婦の会話、家族の風景だ。祖父ちゃんと祖母ちゃんも揃ったら理想の家族。そこに俺も入ってることに安心してる。

 馬場さんに言われるまで気付いてなかったけど、やっぱりちょっと不安だったのかな。
「ごめんなさい」
 馬場さんに貰った袋を持ち上げる。
「お酒を開けないならオレンジかグレフルが合うんじゃないかって馬場さんが教えてくれて」

「馬場さん?」
 あ、そうか。父ちゃんは知らないんだ。壮二さんは袋でジムの馬場さんって気付いたみたい。父ちゃんに説明しようした。
「ジムの……とりあえず座りましょうか」
 話すと長くなる関係なんだ。

 ジュースをグラスに注いで食事を再開する。まずはグレフルから。
「順を追って話すなら先輩がいなくなってからですね。
 俺が元気無いのを心配して同じクラスの高田がジムに誘ってくれたんですよ。
 その高田と同じ日に入会してたのが馬場。俺たちの一個下なんですけど、小学校は先輩と同じだったから顔と名前は知ってるって言ってました。
 それからずっと一緒でそのまま就職して、今回も三人でここに来てるんですよ」

 説明自体は長くなかった。時間にしたら15年以上だし、お店の立ち上げまで同じチームなんだから言葉にしきれない色々があるんだろう。

 父ちゃんは馬場さんを思い出そうと頑張ってみる。
「俺が六年生の時に三年生だった馬場……」
「分からないと思うって言ってました。スタイルも顔も頭も良くて運動もできて性格もいい。なのになぜか皆の印象に残らないんですよ」

 そうなんだよね。こんな完璧な人いるの?ってくらいスゴイのに、なんでかぼんやりとしか記憶に残らない。あんなに良くして貰ったのに本当になんで?

 でももっと気になることがある。
「父ちゃんがいなくなって、そんな心配されるくらいに元気無くなったんですか?」
「そりゃあ、昨日は一緒に見回りして普通に別れたのに翌日には引っ越しましたって言われたんだよ?」
「ごめん……」
「いえ責めてる訳じゃないです。
 それに、もういなくならないでしょ?」
「うん」
 父ちゃんがかわいく頷いた。

 なにこの空気。
「あれ?もしかしてもうくっついた?」
 ちらっと見つめ合ってから俯く二人。
 父ちゃんが教えてくれる。
「あの画像、壮二もずっと保存してたんだ。それで、気持ちが分かって、それで」
 そしてまたチラッと見つめ合った。

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