吸血鬼 詰め合わせ

ritkun

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無邪気×もじもじ(微エロ)

菖蒲湯(モジモジ君サイド)

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 あるじの部屋は館の南西にあって廊下をまっすぐ歩けば書庫というありがたい位置。窓際に置かれたソファで本を読んだりあるじの代わりに授業に出たり、人間だった頃「ガリ勉」と呼ばれていた俺には幸せな環境だ。

 ソファに座って本を読んでいたらローテーブルの向こうの空気が変わった。黒い煙から実態になる様子があんまりにも美しくて最初は体が勝手に立ち上がっていた。今はしっかり見たいって気持ちと俺のご飯の為に働いてきてくれたっていう感謝で、気配を感じたらすぐに立ち上がるようにしてる。

「ただいま!
 これ貰った」
 喋ると庶民的で、元気な様子が眩しい。虫を捕まえた子供みたいだ。あるじの種族はそんなことしないけど。

「お帰りなさい。
 菖蒲しょうぶだ。大丈夫なの?」
「うん。むしろ力になるって退魔師が言ってた」
 子供の頃は草食で成人すると飲まれても平気な相手の血を飲むだけ。博愛主義で魔除けの菖蒲も効果が無いどころか力になる。あるじの種族って本当に吸血「鬼」なのかな?
 館の最古参の方が違う種族の物知りな方を紹介してくれるって言ってたから、その方に訊いてみよう。

「風呂に浮かべるんだろ?
 この香り好きだ。速攻飲んでいい?」
「いいよ。すぐ支度するね」
 お風呂でヘタらせるという解決法を見つけてから俺の気持ちは明るい。しかもお風呂の中でことが済むなら余裕じゃないか。

「ほんと良い香りだな。俺も後で入ろ」
 一緒に入ったらさすがにヤバイけど、最初に倒れたせいであるじはいつでも助けられるようにって一緒には入らない。申し訳ないけど俺は運が良い。

 気持ちにゆとりがあるのとお風呂の気持ち良さで、思ってることがそのまま口に出た。
あるじは葉っぱよりも薔薇の方が似合うよ。薔薇も今が開花時期だから香りが気に入ったら試してみようよ」
「……そうか?
 じゃあ今度な」

「飲んでいい?」
「なんで手なの」
 服を着てお風呂場にいるせいであるじがのぼせそうなのかな。なんかホワホワしてる。
「めちゃくちゃ飲みやすい状態だよ?」
 いつもの所を噛みやすいように見せたらなんか真面目な表情になった。菖蒲の効果が変な風に働いてるのかな?

 え?
 キスした?
 待って。なんで1回キスしたの?
 しかも噛みつかれるまでの口の開け方が愛撫みたいだよ!

 優しい気持ち良さからの血を飲まれる刺激的な気持ち良さでいつの間にかあるじの背中に手を回していた。服が濡れちゃうから離したけど完全には離れたくなくて袖をちょっと掴ませてもらったら、手首を掴まれてあるじの背中側に引っ張られた。

「あ、あるじ?」
 顔の位置はそのままに牙を抜くだけで答える。
「捕まってろよ。沈んだら大変だろ?」

 人間の頃からぽっちゃりと言われていた俺だけど、あるじのこの言葉には傷つかない。だってあるじは俺を煙に変えられるから。「沈んだら大変」って運べないって意味じゃなくて俺がしんどいだろって心配してくれているんだ。

 でも服を乾かしたりとかはできないし肌の感覚は同じ。目の前で「張り付いてヤダ」とか言って脱ぎだしそうで、そうなったら俺また倒れちゃうから。
「服が濡れちゃうよ」
「どうせ着替える服だよ」
「濡れた服がくっつくの嫌じゃない?」
「じゃあ濡れる前に脱ぐ」
「え!?」

 俺たちとほぼ同時に契約した2組はそこそこ意思の疎通ができてるのに、俺たちはイマイチだ。考えてることが微妙にズレて伝わることがままある。今回もやっぱり予想外な反応が来た。

 俺の驚きが伝わってないみたいで、驚いて少し離れた隙にばっと脱いでまた引き寄せられた。ベッドの中では当たってるって感じだからまだなんとかなってるけど、こんな明らかに抱き締めようと意思が感じられる触られ方はマズイ。

 バスタブが邪魔……間違えた。バスタブがあって良かった。なんとか理性を保っていられるよ。

「人魚みたい」
「は!?」
「友達の恋人が、上が俺たちみたいで下が魚みたいなんだよ。友達は上下まあ俺たちみたいな感じ。二人がこうしてるの見たことあんだよ」
 いや人魚は知ってるよ。

 そしてなんで俺たちを恋人に例えたんですかって爆弾ぶっこんどいて普通に食事の再開ですか。

 今日の俺めちゃくちゃ余裕じゃないかって思ってたのに結局最後はこうなるのか。
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