吸血鬼 詰め合わせ

ritkun

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無邪気×もじもじ(微エロ)

ホワイトデート 2

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 なんかホワイトデーっていうかお正月みたいだ。

 あるじと契約したことで体が変わった俺は元の世界に適応できなくなった。それでお守りというか護符というか、守ってくれるからと持たされているのが松の枝。しかも松脂まつやにが付かないように和紙で巻かれているからお正月感が増している。俺浮いてない?

 ちなみに最古参のかたは牛乳がそんなに好きじゃないし、自分たちのホワイトデープランがあるからと紹介だけしてくれて帰っていった。

 牧場のおじいさんからグラスを両手で受け取ろうとしたら、事情を知っているから遠慮しなくていい、松を置いてはいけないと言われた。

 お言葉に甘えて片手で受け取る。1口飲んだら感動で動きが止まったけどすぐに一気飲みして、グラスを置いて手をあるじに差し出す。

 あるじが俺の血を飲んで驚いた顔になるのを待ってから俺も感動を解放した。
「「うんまあ~」」

 生の食材を好むあるじの種族には、殺菌処理していない牛乳は尚更おいしく感じるだろう。

 おじいさんは俺に噛みついたあるじにも動じない。むしろニコニコして銭湯にあるみたいな牛乳瓶を持ってきてくれた。
「これは4日前に瓶詰めした物なんだけどね」

 厚紙でできたフタを取ったら裏側に分厚い塊が付いてて、そのまま渡された。
「天然の生クリームだよ。そのまま食べてごらん」

 松を握っている右手の親指と人差し指で厚紙を持って、左手をあるじに差し出した状態で厚紙を口に入れた。あるじが直後に噛みつく。

 俺たちは言葉も出ずにおじさんを見つめた。おじいさんが笑顔で頷く。
「喜んでもらえて嬉しいよ。あとは滑りたいんだったね」

 あるじは久しぶりに思うままに動けて楽しそう。俺は松明たいまつ滑走かっそうのように松を持って少し滑った。同じ字を使っているのにどうしてこうも印象が変わってしまうんだ。

 本当はここにいるだけでも大変なんだから無理をしないようにおじいさんに言われた。運動は好きじゃないし結果オーライだ。

 絵になる滑りのあるじを眺めながら焚火の側で搾りたて牛乳を飲む。最高だ。

 そろそろ他のかたたちから聞いていたあるじの運動量の半分くらいか。
「あるじー!」

 滑り終わる少し手前で立ち上がって呼んだら、軽く右手を上げてから進行方向を調節して俺の2メートル手前で止まった。かっこいい!!

 からのゴーグルを上げた顔がかわいい!!
 造作の問題だけじゃなく楽しいっていうのが伝わってきて俺も楽しくなる。
「そろそろ帰るか?」
 それでもそんなこと言ってくれるのがあるじなんだよな。

 俺は首を振った。
「この牧場を指定したのはね、牛乳が非加熱ってだけじゃなくて牛さんが食べる草も無農薬だからなんだ。それに栄養的にも貧血に効果がある。
 もうひと滑りする前に追加で飲んでって言いたかっただけ」

 無防備に驚くあるじの表情に幸せがこみ上げる。あるじにも俺にも。

 これでもう少しあるじが滑ってから帰れば俺の計画はほぼ完璧だった。

 俺は忘れていたっていうか、甘かったっていうか。
 あるじの俺への甘さ具合を理解しきれていなかった。

「寒かっただろ?
 お前あんま滑んないだろうなと思ってたから温泉も用意しといたんだ。俺からのホワイトデーだ」

 ………………え?

「え、そんな、ここに来るのが」
「俺頼んだだけだし、それでおいしい血を飲めるの俺だし。
 だから帰りに寄ろうと思って準備しといた」

 落ち着け、落ち着け。ここで固まったらあるじに嬉しくないと誤解される。
「それって……どんなお風呂?」

「お前寒がりなのにのぼせやすいからさ、部屋ごとに風呂が付いてる宿にした。
 ……良かった。めちゃめちゃテンション上がってるじゃん」
 良かった。色々妄想して興奮してるのを良い感じに誤解してくれた。
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