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第274話 帰路4

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「そうですね、では、ユキマサ様のお勧めの料理が食べてみたいです」
「うーん、お勧めか」

 いつもなら『和食』と、答えるのだが〝極楽鳥ごくらくちょうTKGたまごかけご飯〟という、エルフ米を使った、極上の和食を昨日食べたばかりなので、今日は自重する。
 これが朝食なら、即和食でもよかったんだが、夕食に和食は献立にもよるが、少し時間がかかるしな。

「なら〝大猪おおししの肉〟でも食うか?」

 異世界で食べた料理の中じゃ、間違いなく俺の中では1.2位を争うであろう〝大猪の肉〟を提案する。

「大猪って、超高級食材じゃないですか?」
「らしいな、たまたま捕れたんだ、食うか?」

「いいんですか? そんな高級食材を」
「ああ、腹一杯食おうぜ?」

 そういいながら俺は〝アイテムストレージ〟の中から〝大猪の肉〟を取り出し、ニヤリと笑う。

 流石に荷台の中で肉を焼くのは煙いし、臭いも残るので外に出て、適当に火を起こし、肉を焼いていく。岩塩と胡椒は適量で振りかけていく。

 その間にフォルタニアがサラダを作ってくれた。レタスにベーコン、そしてミリアに貰ったクリムゾントマトを使ったサラダだ。それに〝アイテムストレージ〟から取り出した、ドレッシングをかけて完成だ。

 肉はじっくりと焼いていく。
 あー、肉って焼いてる間も何だか楽しいよな。
 
 焼き終えると何とも香ばしい香りが鼻腔を擽る。

 何にせよ、今夜のメニューは〝大猪のステーキ〟と〝サラダ〟そして実はちゃんと鍋で炊いていた〝ライス〟だ。フォルタニアには案の定「お肉にお米ですか?」と言われたが「食べてみな、合うから」と言うと「はい、分かりました」と優しく笑ってくれた。

 そして、いざ実食──

 フォルタニアと荷台に腰かけて食べる。

「美味しそうですね!」
「そう言って貰えてよかったよ。ちなみに何だが、エルフは肉とか食べる風習は普通にあるのか?」

「え? あ、はい。普通にありますよ?」

 不思議そうな顔で返された。
 やっぱこの世界のエルフは普通に肉も食べるらしい。漫画とかだと肉とか食べないことが多いからな。

 つーか、作る前に聞けよ、俺!

「いや悪い、忘れてくれ、さあ食べようぜ?」
「あ、はい、いただきます」

 と、フォルタニアがいただきますをすると、俺も手を合わせ、いただきますを言い、ステーキを食べる。

 ぱくり──ふむ、美味いけど。個人的には〝ハラゴシラエ〟の店主の焼き方のが好みだな。
 まあ、山の中での急ごしらえの調理じゃ上出来か。

「う~ん♪ 美味しいです!」
「そうか? そりゃよかった。いっぱい食べてくれ」

 フォルタニアが美味いと言うならば、本当に美味いと思ってくれているのだろう──普通に嬉しいな。
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