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第272話 帰路2
しおりを挟む地竜に竜車ごと引かれながら、ゴトゴトと山道を進んでいく。
元いた世界でも荷馬車何て物には乗ったことがなかったので、これは色々と新鮮な気分だ。引いてるのが馬ではなく地竜という恐竜みたいな生物ってのも、異世界感があって、私的にはこれもまた好ポイントだ。
「本当なら空竜に乗って空からだと凄く早いのですけどね。ですが、ここら辺は空飛ぶ魔物も多いので個人ではあまりお勧めできませんね」
「個人? 団体ならいいのか?」
「そうですね。正確に言えば、王室クラスの団体で陣形を組めるのでしたらというのが正解でしょうか?」
「なるほど。まあ、俺は空竜でもよかったがな。常時、空中射撃大会にはなりそうだが……」
「ふふ、ユキマサ様ならそれも可能ですね。ですが、のんびりと地竜に乗るのも、また一興ですよ──と、そういえば、ユキマサ様は走ってきたと言ってましたが、この距離を一体どうやって」
「ん? ああ、走ってきたぞ。一人なら走った方が早いしな。それでもちょっと迷ったから半日はかかったが」
「半日って、そんなに早く着いたのですか?」
「崖を降りたり、河を渡ったりして、近道してるような物だからな? 普通よりはそりゃ早く着くよ。まあ、帰りぐらいのんびり帰ろうぜ? 折角、地竜も借りたんだしな」
そんなこんなの話をしながら数時間、すると大きく広げた湖に出る。ミリアの湖程では無いが立派な湖だ。水も綺麗だし。
「少し休むか? 手綱を握るのも疲れてきた頃だろ?」
「そうですね。綺麗な湖もありますし、休憩にしますか」
手短なところにフォルタニアと共に腰を下ろす。
「軽食と果物どっちがいい?」
「そうですね、今は果物な気分です」
フォルタニアの返事を聞くと、俺は〝アイテムストレージ〟から、ミリアにもらった果物を取り出す。
洋梨、メロメロン、ジュースの実だ。
ナイフで洋梨とメロメロンを切り分け、一口サイズにしていく。
ジュースの実は俺がオレンジでフォルタニアはアップルを選んだ。
「本当に魔法ですね、こんな風に食事が出てくるのを見ると」
「正確には〝アイテムストレージ〟の応用だからスキルだけどな?」
「そうでしたね。どちらにしろとても便利そうで羨ましいです。私もそんなスキル欲しかったです」
メロメロンを口に運ぶ。うん、相変わらず美味い。
「何だかユキマサ様を見てると全てが羨ましく見えてきて不思議な気分です」
「それは本当に不思議な気分だな? 何でだよ?」
ふふっと笑うフォルタニアはこんな会話ですら、楽しそうな様子だ。まあ、でも何か和むな。
これはフォルタニアの人柄だろう、クレハとはまた違った、一緒にいてホッとするような安心感がある。
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