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第248話 剣斎vs屍5
しおりを挟む「死死死死、中々の腕の立つ者のようですが、貴方では万に一つも私に勝つことはできませんよ?」
オックボックに向け、シリュウが言う。片手には無造作に構えられたライフルが構えられており、銃口はエルルカの頭部を的確に狙っている。
その時だ──
地面が大きく揺れる。
「地震?」
一瞬、狙いがズレる。シリュウが気に止めたのは、地震その物では無い。地震の発生源だ。
「ウルスラが随分と長く足止めされてるようですね。流石はガリアペスト様を葬った男ということですか」
シリュウはズレたライフルの照準を直す。
「させるか!!」
オックボックが間合いに入るが僅かに遅い。
──ドシュ!!
「また貴方ですか?」
煩わしそうにシリュウは弾の当たった人物を見る。
「弾も刃も外させはしない。全の攻撃は我が身に当たり、痛覚は快楽へと変わる」
痛覚は快楽なのだ。と、笑うのは──生粋のドMである、第二王子のヴォロン・シルフディートだ。
刹那、シリュウの首筋に向かい刃が振るわれた。
薄皮を斬るが、致命傷まではいかない。シリュウは目を軽く見開きバックステップで距離を取る。
「まさか、貴方に救われるとはね」
今の攻撃を放った張本人である、エルルカがヴォロンに向け、口を開く。礼は言わない。この人物にだけ至っては、礼を言うことは失礼に当たるからだ。
「久しぶりに、気を失ったわ。フォルタニア、ありがとう。助かったわ、後は任せなさい」
落ち着き、それでいて妖艶な、心強い言葉だ。
フォルタニアは希望が見えた、そんな気がした。
それに気を失っていたのにも関わらず、膝は付いていたものの、決して地面に倒れることはなかったエルルカにフォルタニアは心の中で称賛を送る。
「死死死死、まんまと時間を稼がれましたね。ですが、ここまでです」
シリュウの手には血だらけのヴォロンがいる。
シリュウがヴォロンにトドメを刺そうとし、それをエルルカが阻止しようとした、丁度その時だ──
樹木の根がシリュウを絡め取ったのは。
「──久しく、世界樹を離れてみれば、えらく騒がしいわね。招かれざる客よ、この地を去りなさい」
金髪のセミロングの髪の袴姿のエルフだ。
その喋り方は少し古めかしい。
「火澄!? なっ、まさか貴方がこんな場所に出向くだなんて!? 一体どうなってるの!?」
「ええ、シアナ。久しぶり。随分とドジを踏んだみたいね。お説教だけでは済まないわよ?」
女王を名前で、タメ口、呼び捨てで呼べる者は、この国では、この火澄ぐらいのものだ。二人は旧知の仲であり、女王も特に気には止めず普通に流している。
「〝樹霊守護者〟──ば、バカな。世界樹の番人が何故ここにいる!? 貴様はあの場所からは動けないのでは無かったのではなかったのかッ!?」
樹木の根で縛り上げられたシリュウは、この火澄という人物の登場は予想外だったらしく、訝しげな表情で叫ぶのだった──。
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