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第244話 剣斎vs屍
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「……本当に殴り飛ばしたわね」
「お母様、ユキマサ様は変な嘘は吐きませんよ」
唖然とする女王をみて、フォルタニアがユキマサへのフォローを入れる。
辺りを見ると女王だけではなく、兵士達、そして、エルルカやシリュウまでもが目を奪われていた。
*
地震のような轟音を轟かしながら、辺りの木や岩を根こそぎ破壊し、最後は大きなクレーターを作った所で漸く、殴り飛ばされたウルスラは陸地に止まった。
(王宮から大分離れたな)
ゆっくりと、ウルスラが起き上がって来る。
「ごきげんよう。お前の相手は俺だ」
ウルスラの頭上から俺は話しかける。
「GUGYAA!!」
こちらを睨むウルスラはご機嫌斜めの様子だ。
「悪いが容赦はしない。覚悟しな、黒龍さんよ──」
*
──エルフの国
シルフディート・大広間──
そこには〝剣斎〟と屍が戦う姿があった。
「《我が刃に・宿れ・焔の精霊》──〝緋刃〟」
エルルカが魔法を唱えると、エルルカの持つ2本のドスの刀身に緋色に煌めく焔が纏われる。
「少し本気で行くわ」
「死死死死、私もそろそろ本気で殺しに行きますよ」
先に動いたのはエルルカであった。
一瞬で間合いを詰め、炎の刃を振るう!!
「《裂きなさい》──〝炎華鳳凰刃〟!」
2本のドスから放たれるエルルカの飛ぶ斬撃が業火に纏われ威力を増し、飛ぶ斬撃と同時に業火で作られた、美しく大きな大鳳がシリュウを襲う。
「これはこれはお見事──〝死神の双剣〟!」
シリュウも斬撃を飛ばす。闇属性の毒魔法を帯びた斬撃だ。これをまともに喰らえば、肌荒れ所じゃない痛みを伴い、全身に重くのし掛かる重力が何倍にもなり、全身を押し潰してくることだろう。
魔法と魔法の勝負の行方は──互角。
……に、見えたが、エルルカが僅かに押した。
斬撃は相殺したが、エルルカの放った業火の大鳳が無傷でシリュウに向かっていた。シリュウは「死死」っと、笑うと肩に駆けてあったライフルに魔力を込め、難なく撃ち落とす。
「ッ!? 消えた!」
ライフルを撃ち終わり、砂埃が晴れると、そこにいた筈のエルルカの姿が、どこにも見当たらない。
ガキンッ!!
一瞬で間合いを詰めたエルルカが──✕するようにシリュウに斬りかかるが、失敗に終わる。
「これはこれは流石にお速い」
エルルカは手を休めず追撃する。
業火を纏った刀で。
「──〝火蜥蜴・乱舞〟」
双剣を構え、防御姿勢のシリュウの間をエルルカはスルリと抜ける。
そしてシリュウの左腕を裂いた。
今までのエルルカの技は〝剛〟であったが、今の攻撃は〝柔〟であった。柔らかい剣撃──力任せの剣の剛とは違い、柔らかさを持った柔の剣は、こういった相手に対しては結構な確率でよく効く。
斬られた腕を忌々し気な表情で押さえるシリュウに向かい、エルルカは美しく妖艶なゾッとするような笑みを浮かべていた。
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