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第239話 セリャドライト

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「おい、クソガキ! てめぇが俺の護衛をしろ?」
「え? 断るけど?」

 瞬時に俺は断る。
 つーか、何言い出すんだコイツは?

「何だと、俺を誰だと思ってやがる?」
「豚野郎」

 フォルタニアが要るんだ。
 嘘を吐いても無駄だろう。うん。

「呼んだか!」

 呼んでない。このドM王子、何てイキイキした顔してんだよ?
 ……てか、すげぇなコイツ。傷治ってきてんじゃねぇかよ? あまりにも盾になるのが嬉しそうなので、時間過ぎても放置してたが、俺の回復魔法要らねぇじゃん。

「貴様! ゴミの分際で何て口の聞き方だ!」
「私のことか!」

 どうしよ。本当にうるさい。二人とも。
 いや、あえてこう言おう──、と。

「おいクソガキ、今は〝シルフディート〟と、協力関係なんだろ? ならば貴様は俺を守る義務があるはずだ! 仕切り直すフォルタニアとの婚儀にも手出しはさせん! その後、お前は打ち首にしてやる!」

 何言ってんだコイツ?
 頭ん中、花でも咲いてんのかよ? 満開か?

「話は後にして貰える?」

 痺れを切らした女王が口を開く。
 てか、やべ! エルルカとの約束の時間が過ぎてる……馬鹿共に構ってる暇はねぇ──

 急ぎ俺はエルルカの元へ向かう。

 *

 〝剣斎けんさい〟エルルカ・アーレヤストはシリュウ・ブラックに押され気味であった。
 彼女にしてはとても珍しい事だ。じんわりとながら、ここまで押された記憶はこの数年に無い。それ程までに──シリュウ・ブラックは強かった。

 レベルだけで見ればエルルカは94。対するシリュウは100↑だ。格上の相手である。
 勿論、レベルが全てでは無い。だが、今回ばかりはエルルカとシリュウの戦いの相性は悪い物であった。

死死死死しししし、どうしました? 腕が止まってますよ?」

 ガキン!

 俺はエルルカとシリュウの間に割って入る。

「悪い、遅れた。いや、マジですまん」
「あら、この埋め合わせは期待していいのよね?」

「ん? ああ、ドンと来い」
「そう、ならいいわ」

 先程まで肩で息をしてたエルルカが急にとても華やかな笑顔になる。あれ、何か変なこと言ったかな?

「あ、おい。それで夫婦になれとかはダメだからな」
「分かってるわよ。それについては気長に待つわ」

「話を戻すが、アルタイルたちは復活したよ。向こうは、あいつらに任せてよさそうだ──」
「そう、なら早くこちらも片付けましょう」

死死死死しししし、片付けるとは言ってくれますね。ですが、貴女方二人を相手取るのは厳しそうだ」

 すると懐から怪しく光る黒い石を取り出す。

「なんだありゃ──?」

 嫌な予感がする。

「まさか──〝封印石セリャドライト〟!? 一体何処から!?」
「〝八柱の大結界〟の〝魔術柱コムルナ〟と同じ場所に大層大事に仕舞ってありましたよ」

「バカをいいなさい!! それは最高位の結界を張ってあった筈、そう簡単に壊せたりはしないわ!!」

 女王が声を張る。またもや今日イチで焦った声だ。
 〝八柱の大結界〟の件よりも焦ってるぞ?

「ええ、手こずりましてね。今、私は〝魔力枯渇マジックダウン〟気味なのですよ?」

 バキンっと、シリュウが〝封印石セリャドライト〟を割る。

「ッ!? 貴方たち逃げなさい! 〝シルフディート〟に大昔から封印されていた〝原始げんしくろ〟──〝龍種りゅうしゅ〟の黒龍が解き放たれるわ!」

死死死死しししし、さあ、思う存分に暴れなさい!!」
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