上 下
195 / 350

第194話 炊き出し2

しおりを挟む


「クレハー、代わるわよ!」
「エメレアちゃん、じゃあ、お願いしようかな」

「わ、私も替わります、理沙さん」
「あ、え、私? じゃあ、お言葉に甘えようかな」

 クレハがエメレアと替わり、理沙がミリアと替わる。

「おーい、こっちだ、こっち」

 ノアとエルルカといる俺は理沙とクレハを呼ぶ。

「ユキマサ君、豚汁! 私も食べてみたい」
「というか、おじーちゃんは?」

「豚汁ならたんまりあるから貰ってきな、俺もおかわり貰おうかな。後、糞爺ならロキと話してるぜ?」
「ギルドマスターと?」

「詳しく内容までは知らないが、豚汁片手に〝7年前の魔王戦争〟のことを聞かれてるみたいだ」

「前回の魔王戦争の時は私も中央連合王国アルカディアにいたし限界超越者レッドリストも不在だったみたいだからね」
「レッドリスト?」

「私もそうだけど、LV100を越えた人達をそうよぶよ」

 ノアがこれまた豚汁片手に言う。

「そんな呼び方があるのか?」

「「「「「じ~」」」」」
「な、何だよ?」

「いや、何かユキマサ君のレベル気になっちゃって」
「というか、ユキマサ君は限界超越者レッドリストの筈だよ」

 素直に聞いてくるクレハと、確信を持って言い当ててくるノア。

「の、ノーコメントで……」

「ま、私は気にしないわよ。貴方は私より強いってことを私が認めたのだから、レベルはいくつでもいいわ」

 エルルカがすり寄って来る。
 だから、そうすると爆発的なまでのいい匂いが……

「というか、誰! その美人!」
「理沙、こいつはエルルカだ」

「エルルカって、六魔導士の!?」
「ああ、てか、よく知ってたな」

「最低限の知識はおじーちゃんから聞いてるから、そんなことより何で六魔導士の超美人がユキマサに抱きついてるわけ?」
「私がユキマサを男として好きだからよ」

 ハッキリ言うエルルカ。

「「なっ!!」」

 息の合うクレハと理沙。

「つーか、エルルカ、お前は聞いてなかったろうが、俺は異世界人だぞ? 3/4よんぶんのさんだけだけど?」
「あら、そうなの? 別に私は構わないわ、あまり私を舐めないでくれる?」

「私も構わないよ!」
「私的には1/4異世界人ってことになるかな、別に気にしないけど」

 クレハと理沙がそれぞれ言う。

「というか、ユキマサどういうつもり?」
「そうだよ、ユキマサ君ハッキリして!」

 左右から理沙とクレハに引っ張られ、背後からはエルルカに抱きつかれる俺。
 
(ったく、どうすりゃいいんだ!?)

 と、その時だ──

「ユキマサさん、豚汁が、豚汁が切れましたぁ!」

 涙目のアトラが現れる。
 まじか、結構量作っといた筈だぞ!

「悪い、すぐ作る」

 意外に人気だったらしくあれほどあった豚汁が空だ。食堂のおにぎり製作も急ピッチで行われている。

 そんな中、豚汁を作れる俺と理沙はもう一鍋作る為、理沙に野菜切りを手伝ってもらい、それらを鍋にいれ煮込み始める。

「大人気だね」
「ノアか、みたいだな、嬉しいよ」

 その後、これの他にもう一鍋作り、合計鍋3つ分を作った。

 *

「あー、食ったな、豚汁とおにぎりだけど」
「ユキマサ、豚汁とおにぎりバカにしてない?」

 じとっとした目で理沙が見てくる。

「バカにするわけないだろ?」
「だよねー、この和食バカは」

「誰が和食バカだっ」

 と、その時だ──

「すまねぇ、ギルドマスター、全部あたしの独断だ」

 土下座のような体勢で謝るのは〝アーデルハイト王国〟の最大戦力である吸血鬼のフィップだ。

「どうか、顔をあげてください。今回の戦争に参加し無かったアリス王女の理由も存じてるつもりです。何よりあなた方の判断は正しい、私でも同じことをしたでしょう」

 立ち膝でロキが言う。

「それでもすまない」

 ギシリと歯軋りするフィップはそれでも全てが納得はいってない様子だ。

「誰?」
「知り合いだちょっと行ってくる」

 首を傾げる理沙にそういい残し俺はフィップの方へ向かうのだった──
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。

克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

とある婚約破棄の顛末

瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。 あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。 まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...