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第184話 過去編・花蓮ノ子守唄15

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 *

 親父! 母さん! 無事であってくれ!

「クソッ、どこだ!」

 煙で前が見えやしねぇが、とにかく進むぞ!
 
 ──俺は殆ど手探りで、もがくように進んでいくが、親父達は見つからない。

(上手く何処かに身を潜めて、避難しててくりゃいいんだが……)

「──親父! 母さん!」

 ダメ元で名を呼ぶが、やはり返事はない。

 それにこの噴石ふんせきだ。
 大~小まで様々な大きさだが、噴火の勢いでとんでもないスピードで飛んできている。

 小さい噴石でも、銃弾かそれ以上の威力がある。

 ──だが、諦めるわけにはいかない。
 俺は懸命に二人を探した。

 不味い、不味い、見つからない。

 いくつものバカでかい噴石を蹴り壊し、下敷きになっていはしないかと確認しながら進む。

 そして俺は微かな希望とも呼べる──山小屋を見つけた。
 ここなら生きてる可能性は十分にある。

 藁にも縋る思いで俺は山小屋に入ると、

「何だこれ……」

 山小屋に大勢が逃げてきていた。それはいい。
 だが、誰一人と息をしているものはいなかった。

 というか、山小屋は真っ赤な血で染まっている。
 屋根から貫通したのだ、噴石が。それが雨のように降り注いだ。結果、散弾のようになった噴石の雨がここにいる人々の命を奪った。

 親父達がここにいるか調べたがここにはいなかった。
 それについては俺はホッと胸を撫で下ろした。

(親父達はどこだ!? クソ、無事ならいいが)

 その後も、俺は探して探して探し回った。
 けれども、親父達は見つからない。

(どこだ!? 一体どこにいる!?)

 探しても、探しても、見つからず、数時間が経った頃──
 日が沈み、辺りが暗くなってきた頃だ。

 その影を俺が見つける。

「親父! 母さん!」

 慌てるように俺は二人に駆け寄る。
 
 駆け寄ったその二人の体はゾッとする程に冷たかった。

「親父! 親父っ! 母さんっ!」

 俺は直ぐに回復魔法を使おうとする。

 が──

 バチバチバチン!

(これは!?)

 俺が時に起こる反応だ。

 ・生まれつきの怪我や病気
 ・死者の蘇生
 ・風邪の治癒

 この3つに当てはまったということだ。消去法で言うと、生まれつきの病気でも怪我でもなく、風邪でもない二人はということになる。

「おい、待てよ、何かの間違いだろ?」

 冷静に脈と呼吸を確かめるが二人にそれはない。

「何でだよ……」

 俺は両膝を地面に吐く。

「おかしいだろうがぁァァァ!!」

 ドン! と、俺は地面を叩く。

 何で、親父と母さんが死ななければならない──死ぬべき人間なんて他にいくらでもいるだろうが!
 何で親父と母さん何だよ!? なあ、神様!! 居るかどうか何て知らねぇが、あんまりじゃねぇかよ。

 それに親父も母さんも、何でそんな安らかで幸せそうな顔で死んでんだよ……
 それじゃ、何にも言えねぇじゃねぇかよ……

 *

「ねぇ、おじーちゃん、おばーちゃん、おかーさん達大丈夫だよね?」
「きっと大丈夫よ、理沙ちゃんこっち来なさい」

「……理沙。わしは嫌なやつじゃからの、本音を言うぞ?」
「本音?」

「ユキマサが到着して、二人に息があれば十中八九助かるじゃろう。じゃが、その時点で息が無ければ生存率はかなり低い、いや、無いに等しい」
「おじーちゃんは嫌なやつじゃないよ、だっておじーちゃん悪くないもん!」

「そう言ってくれると助かるの」

 そう言うと暁は立ち上がる。

「おじーちゃん、どこ行くの?」
「今日は店は臨時休業じゃ、張り紙を貼ってくる。今のわしにはこれぐらいしかできることがないからの」

 そういい暁は店を閉めに向かうのだった──
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