上 下
177 / 284

第176話 過去編・花蓮ノ子守唄7

しおりを挟む


 次の日、また次の日も私はユキマサの家にお世話になった。何か私もお手伝いできることがあればと店の手伝いをした、魅王みおうさんにお菓子の包み方を教わり、私は毎日少しでも手伝っている。

 (こんな毎日が続けばいいな)と、そんなことを私が考えていた、お店も閉まっていた夜のことだ──

 ──ガッシャーーン!!

 お店の方から窓ガラスが割れる音がする。

「何事じゃ?」

 こんな状態でも、あかつきさんは呑気なまでに落ち着いた声を発する。

 私は走る、店の方へ向かって──

「理沙!」
「理沙ちゃん!」

 暁さんと魅王さんが私の名前を呼ぶ。

 店の入り口に着くと、私は血の気が引く……
 そこに金属バットを構えて立っていたのは、

 私の父親と──
 その仲間十数人がそれぞれ武器を持ち立っていた。

「やっぱりここだったかぁ? なあ、理沙ぁ?」

 と、その時だ、

「──へぇ、こりゃ珍客だ。それにしても、ここがよく分かったな? あんたにゃ、一言いってやんなきゃすまなかったからな」
「こ、木枯こがらしさんっ!?」

 コンビニから帰ってきた木枯さんが、私の父親に背後から話しかける。

「てめぇ、誰だ?」
「人ん来といて誰だも何もねぇだろう?」

 殴りかかる私の父親のパンチを木枯さんがひょいっと避ける。

「手が早ぇな?」
「ちッ、み、皆さん、頼みます!」

 私の父親が敬語で背後にいるヤクザみたいな人達に話しかける。
 というか、どう見てもヤクザだ……。

「理沙! 下がっとれ!」

 暁さんが私に叫ぶ。

 だが、私にバットが振るわれる。

 ──ガシッ

「牧野の話しだと、もう少し後だと思ったんだがな」
「ゆ、ユキマサ」

「よう、理沙、怪我は無いか?」

「出たな、このガキッ──」

 ドゥン!

「え、えっ? 吹き飛ばした!?」

 俺の回し蹴りが命中し、吹き飛ぶ理沙の親父を見て、理沙が驚いた声を上げる。

「お、流石だな。今の一瞬で見抜いたか?」

 ヤクザは目ざとい──簡単に言えば、敵が自分達よりも相手が強いか弱いかをのが早く、正確なのだ。

 ヤクザは弱い者からは吸い上げ、強者には取り入る能力が無ければ、のし上がることはできないし、最悪比喩ではなく死ぬことになるからだ。

 それに、ましてや、俺一人では無く、爺ちゃんや親父もいる。そこら辺のヤクザの組が結託して2、3組纏めてかかってきても対処できるだろう。

「ガキ一人に何やってんだよ!」

 吹き飛ばされた理沙の親父が肩で息をしながら俺の方へナイフを持ち、飛びかかってくる。

 ──ガシッ

「親父」

 然も当然かのように親父がナイフを止める。

「よぅ、あんたが嬢ちゃんの父親かい?」
「だったらなんだってんだよ!」

「父親なら、娘の一人ぐらい大切にしてみろよッ!」

 ドバンと、理沙の父親を親父が殴り飛ばす。

「お前が育てねぇなら、俺が育てる!」
「勝手にしろ……あんなゴミ……処分に困ってた所だ」

「お前、いい加減にしろよ?」

 ギロリと親父が睨む。

「はいはい、そこまでー」

 パンパンと手を叩きながら、目の細いヤクザが割り込んでくる。

「家族ごっこは他所でやれよ? それに舐められたままじゃ、こっちも面子が立たねぇんだよ?」

 最初は陽気な口調だったが、次第にドスの聞いた声に変わっていく、その男性が懐から取り出したのは──
 だ!

「ほー、本物ものほんだぜ、これ?」
「!?」

 俺は気づかずに男に近づき、背後から拳銃を握る。

 ミシミシ、バキンッ!

 俺はそのまま銃を握り潰す。

「──な、なんつー、握力してんだ、このガキ」
「さあな、ちゃんと計ったこと無いからな?」

 銃を壊した事で周囲にどよめきが走る。

 だが、数人がガチャ、ガチャ、と銃を俺に構える。

「やめときな? そんなから当たるわけないだろ?」
「なんだと!?」

「そこまでじゃ」

 ──バン、ドン、バン

 銃が割れる。

(これは──10円玉か?)

 爺ちゃんは高速で撃ち出した10円玉で銃を破壊したのだ。つーか、30円で壊したよ、リーズナブルだな。

「これ以上はこちらも本気で行くぞ? 引くなら今じゃぞ?」

 爺ちゃんが睨みをきかせる。

「く、くそ、引くぞ!」
「得体が知れん、何だコイツらは!?」
「引け、引け!!」

 黒塗りの車に飛び乗り、ヤクザが逃げていく。
 物の数分で静かになった店内を見渡すと、ペタりとその場に膝を着く理沙がいた。理沙には左右から母さんと婆ちゃんが肩をささえている。

「よう、嬢ちゃん、今日から俺が嬢ちゃんの親父だ」
「え、あ、あの……私……」

「嫌かい?」

「じゃあ私は理沙ちゃんのお母さんね」
「私はお婆ちゃんよ、孫が増えたわ」
「わしは爺ちゃんじゃの」

 ノリノリの母さんと婆ちゃんと爺ちゃん。

「い、嫌じゃないです、私、木枯こがらしさん達の子になりたいです!」

 うぇぇんと泣く理沙を母さんが受け止める。
 そうして何はともあれ、家に一人家族が増えたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、エブリスタでも投稿中

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。 人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】 前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。 そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。 そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。 様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。 村を出て冒険者となったその先は…。 ※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。 よろしくお願いいたします。

処理中です...