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第167話 終戦
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──大都市エルクステン・壁外──
そこにはゴライアスに乗った、血だらけの愧火がいた。脳と心臓は破壊されていないが、ティクタスとの戦いで怪我を負っていた。
ティクタスからは隙を突いて逃げ出してきたが、魔王が倒され、しばし呆然としていた。
「これは俺達の負けだな、ズラかるぞ」
そう言い、愧火はゴライアスの変異種に乗り、その場を後にする。
*
──大都市エルクステン・壁外北部──
「ユキマサ君、よかった、魔王を倒せたみたいだね♪」
魔物を葬りながらノアが嬉しそうに笑う。
魔王が倒されると、街に向かっていた魔物達はちりじりに散らばっていく。
だが、ノアはその魔物達を魔法で作った自身の身長の何倍もある大剣で、一振り、二振りと、大剣を振るい、魔物を倒して行く。
*
──大都市エルクステン・ギルド──
「「「「「「「うおぉぉぉぉ!!」」」」」」」
ギルドから歓声があがる。
「魔王が倒された! それは本当ですか!」
明るい笑顔になるロキ。
「はい、壁外上空にて魔王城の崩壊が確認されています」
「彼は無事ですか!?」
「ユキマサ様、クレハさんの無事の確認はまだ取れていません。現在、安否不明のギルド隊員も合わせて早急に確認いたします──」
*
俺とクレハは大都市エルクステンに向かい歩く。
「よし、戻るか!」
「うん、お、お疲れ様ぁ!」
クレハはドバっと疲れた様子だ。
と、その時だ──
パァァァン! と、空が光る。
(これは魔王の封印が変わった時と同じ──)
「魔王が倒されると、66日ごとに変わる魔王が繰り上げられるみたいだよ」
「なるほどな」
てことは、最悪、連戦の可能性もあるのか──
と、次の瞬間、
「「クレハぁーー!」」
ダダダダタッとエメレアとミリアが走ってくる。
「エメレアちゃん、ミリア!?」
「「クレハ!」」
ぎゅ、ぼふりと二人がクレハに抱き付く。
「二人共無事でよかった! 第1隊の援軍はどうなったの?」
「そ、それが……私達が駆けつけた時は既に魔族愧火は逃走した後だったわ」
「そうなんだ……でも、スゴい成果だよ! 魔王を倒して、魔王軍も殆ど壊滅だもん!」
「そうよね! でも、本当にここ最近は生きた心地がしないわ、クレハ、無事でよかったぁー!」
再び、むぎゅりとエメレアはクレハに抱きつく。
「おーい、お前ら、嬉しいのは分かるが、ギルドに戻るぞ?」
「べ、別に、貴方に言われなくても分かってるわよ」
ようやく俺を見たエメレアはムクれている。
渋々ながら歩き始めるエメレアはクレハに抱きついたままだ。いつも聞き分けのいいミリアも、今回ばかりはクレハの袖を可愛く嬉しそうに掴んでいる。
ぐしゃぐしゃになった大砦の門を潜り抜け、大都市エルクステンに戻る。
街の中は、あれ? こんな人沢山いたっけ? と思うほど騒がしくなっており、歓声が街にこだまする程に大きく広がっている。
「ユキマサさん! よかった、ご無事のようで!」
「ロキか、随分と街が騒がしいが、ノア達や他の連中はどうなっている?」
「大聖女様達もこちらへ向かってるようです。怪我をしたギルドの隊の者達も、既に救助に向かっております。お陰さまで被害も最小限と言っていいでしょう」
「そうか、そういえばロキ、こんな物を拾ったんだが、いるか?」
俺はロキに魔王石を渡す。
「魔王石!! 魔王を倒した証明になりますね! ですが、これは大聖女様にお渡しください」
「ノアにか? 分かった、そうするよ」
と、その時だ──
「──あーー! やっと、見つけた!! ユキマサ!!」
こちらに一人の少女が駆け寄ってくる──そして俺はその少女の姿を見ると、自分の目と耳を疑った。
「……は、理沙!? 何でお前ここにいるんだ!?」
それは他でもない。元いた世界の日本にいた筈の、俺の幼馴染みにして、血の繋がらない兄妹である栗毛色の長い髪の少女──花蓮理沙であった。
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