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第146話 開戦
しおりを挟む(──魔王城!?)
空を飛ぶ魔王の城に俺は少し呆気に取られる。
この世界の魔王城ってのは空を飛ぶのかよ?
「このままだと、魔王城もノアの結界にぶち当たるが、どうするんだ?」
そう俺が呟いた時だ。
ビュン──ドババババババンッ!!
空に浮かぶ魔王城から、魔法による黄色く光る、光線のような攻撃が結界へと放たれる。
──ビキ、ビキ、ビリ
「不味いですね」
その攻撃には耐えたがノアの結界に亀裂が入り、今にも壊れそうな結界を見てシラセが額に汗を滲ませる。
「ああ、突っ込んでくるぞ。結界を割るつもりだ」
(それにさっきの攻撃は並みの攻撃じゃなかった。恐らくは魔王による攻撃だ──じゃなきゃ、軽々と3つの隕石を防いだノアの結界にヒビ何て入りはしない)
まあ、と言って、魔族の可能性もあるが、どちらにしろ、今のやつには警戒した方がいい。
「──お前ら! 全員下がれ! 巻き込まれるぞ!」
俺は第8隊に向かい、声を張る。
その間にも、魔王城はこちらへ迫ってくる。
「ユキマサさん、どうするつもりですか?」
ピタリと隣に来たシラセが俺に聞いてくる。
「このまま街に突っ込ませるわけにもいかないだろう? 取り敢えず、魔王城を空から叩き落とす!」
「叩き落とすって……そんなこと可能なんですか?」
「さあな、やってみなきゃ分からん」
「……分かりました。貴方を信じましょう」
「いや、今ので信じるのかよ? 自分で言うのも何だが、我ながら結構適当なこと言った気がするぞ?」
「ですね、ですが〝大聖女様〟やエルルカさんから貴方の事はお話に聞いています。それに私自身で貴方を見ても、貴方はとても温かく優しい感じがします」
シラセは優しく微笑む。その笑顔がこの戦場となる場所では、余計に可愛く、そして眩しく見えた。
「どうでしょう──この解答では御納得していただけませんか? これが私の貴方に感じた本心です」
「盛り過ぎだ。でも、ありがとう」
「いえ、それに私も微力ながらお力添えします!」
「助かる──来るぞ!」
俺とシラセは城壁の上に登り、魔王城を待つ。
その後、直ぐにノアの結界に魔王城がぶつかる──ヒビの入ったノアの結界は、魔王城をそれでも少しの間、食い止めるが、数秒で壊れてしまう。
そのタイミングで俺は走り出す──!
──ドン! っと、城壁の地面を踏み込み、この〝空飛ぶ魔王城〟よりも少し高く跳躍する!
(ハハ、景色は良いな? 実にファンタジックだ!)
背後にある、異世界あるあるヨーロッパ風の街に、真下にある城壁、そして目の前の空に浮かぶ魔王城を見て、一度呼吸を整え、拳を構える──
次に魔力を強く纏い、魔王城に拳を振りかざす!!
威力は十分、馬鹿みたいにデカイ空に浮かぶ魔王城の約3分の1程を破壊し、その勢いでバランスを崩した魔王城はそのまま真下に落下する。
──が、マズイ、勢いが死んでいない。
地面に落ちた魔王城は、そのまま街へ突っ込む。
(なら、もう一回だ!!)
と、俺は再度、拳に魔力を込め、魔王城を止めようとするが……
「α、Ω──お願い!」
そうシラセが叫ぶと、2匹の魔物(?)が現れる。
1つは、凛々しい顔の白い大きな狼。
もう1つは、スラリとした顔の白い龍だ。
そして驚くべきは、そのどちらも体が白く透けていて、向こう側が見える程に透明な色をしていた。
すると、その2匹が魔王城に向け結界を張る。
大きな土砂のように進んで来ていた魔王城が、それにより塞き止められる。
「「「「「おぉ! と、止まったぁ!!」」」」」
少し遠くから見ている、第8隊から歓声が上がる。
「──悪い、助かった。にしても、何だこれは?」
俺はシラセに礼を言う。
「はい、この子たちは魔物でも動物でもありません〝人工精霊〟です。αが犬神で、Ωが白龍です」
「〝人工精霊〟? 見たこと無いな」
透明な二匹の〝人工精霊〟に見ながら返事を返す。
と、その時だ──
「──クレハ! クレハ! しっかりして!」
エメレアの声だ。俺がそちらを振り向くと、地面に膝を尽き、頭痛を押さえるかのように、片手で頭を押さえ、システィアに肩を支えられたクレハの姿が目に入って来る。ミリアも心配そうにしているが、それと同時にそんなクレハ達を守るように臨戦態勢でいる。
「あぁ……ごめんなさい……お父さん……お母さん……」
クレハの絞るような声が聞こえる。
「不味い、ユキマサさん! 来ます!」
「──ッ!!」
シラセの呼び掛けで俺は、今まで不自然な程に何の動きも無かった、魔王城に振り向く。
人影だ、全身を黒いローブで包んだ、杖を持った人物が、壊れてない魔王城の土地に立っている。
「魔族──奴孔楼!!」
腰の剣を抜きシラセが叫ぶ。
魔族……まあ、そりゃ出てくるよな?
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