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第122話 帰還
しおりを挟む──お墓参りを終えると時刻は、日本で言う所の夕方の少し前、午後3時過ぎぐらいの時間だった。
日が暮れる前に帰ろうと言う事で、俺達は乗って来た〝空竜〟に帰りも乗り、ミリアの湖を後にする。
「──タケシ! また帰って来るね!」
飛び立つ空竜に乗り、ミリアがタケシにブンブンと手を振る。
「じゃあね」
「またね」
「じゃあな」
エメレア、クレハ、俺もミリアに合わせて手を振る。
「ガウ!」
そんなタケシの元気な声に見送られて、俺達は来た道を辿り〝大都市エルクステン〟に帰還する。
「ユキマサ君、しっかり掴まっててね」
「ああ、悪いな」
来た時と同じく、2人乗りで空竜に乗り、クレハの後ろに俺は座る。
──帰り道も、景色を楽しんでいたら、ほんとあっという間に〝大都市エルクステン〟へ着いた。
〝大都市エルクステン〟の門に着くと、今朝も会った、第3騎士隊の緑髪ショートの〝鳥人族〟の背中に白い翼の生えた少女──フィオレ・フローリアに会うと、帰りも親しげな様子でクレハに話しかけて来る。
「クレハさん、お帰りなさい。道中どうでしたか?」
「はい、特に会敵等も無くスムーズでしたよ」
クレハが笑って返すと、
次にフィオレは俺に視線を向け……
「ユキマサさんもお疲れさまでした。それとお手数ですが、また入国にあたって〝ステータス画面〟の提示をお願いします」
と、言われたので
「分かった」
と、言われた通り〝ステータス画面〟を開示する。
―ステータス―
【名前】 ユキマサ
【種族】 人間
【性別】 男
【年齢】 16
「はい、確認しました。ありがとうございます」
と、軽い審査(?)を受け、俺とクレハは〝大都市エルクステン〟へ入る。
ちなみにクレハはギルド騎士なので顔パスらしい。
「確か〝ルスサルペの街〟では、入国がどうのとか何も言われなかったよな? 何か理由があるのか?」
俺はふと思い返した疑問をクレハに投げかける。
「うん、あの入出国のチェックは〝八柱の大結界〟の〝魔術柱〟が残ってる国だけだよ。公になってる場所だと──この〝大都市エルクステン〟と〝エルフの国〟と〝中央連合王国アルカディア〟だけかな?」
「ああ、なるほど。それに確か〝アーデルハイト王国〟の〝魔術柱〟は公にはされてないんだったな」
「あ、ちょ、ちょっと、しー、しー! ダメだよ、それフォルタニアさんに内緒って言われてるでしょ!」
「大丈夫だ、誰も聞いてない。魔法の気配も無しだ」
ノアに名前を言い当てられて以降、それまでより、魔法やスキル等を含め、辺りを警戒するようにしているが、今の所は近くに変わった事は特に何もない。
「ならいいけど……」
その後、エメレアとミリア、俺とクレハで借りて乗っていた空竜を〝借竜所〟に返し、一度皆で集まる。
「取り敢えず、お墓参りは終わりか?」
「そうだね、エルクステンにも帰ってきたし」
「私はクレハとミリアの意見に従うわ」
「わ、私は満足なお墓参りでした。皆ありがとう!」
ミリアが何か意見を言う前に従う姿勢を見せるエメレアだが、もうなんつーか、いつも通りの光景だ。
その後は、クレハとエメレアとミリアはシスティアへ、ミリアの湖で取れたフルーツをお土産に持って行くとの事だった。
そして俺は「ちょっと、街の外をブラついてくる。システィアによろしく」と、伝えると、エメレアとミリアと共にシスティアの元へ行こうとしていたクレハが「あ、私も行きたい」と言って、付いてくる事になった。
「あ、ちょっと、ユキマサ、フルーツ!」
「いけね、そうだ、悪い悪い、マジで忘れてた」
エメレアに呼び止められるまで忘れていたが、システィアのお土産用に、ミリアの湖の森で採ったフルーツも、俺の〝アイテムストレージ〟に仕舞ってあったんだった。
──ドババ、と〝アイテムストレージ〟から、果物を取り出すと、システィアのお土産だけでも、エメレアとミリアの両手が塞がるぐらいの量がある。
「じゃあ、悪いな。それとミリア果物ありがとな」
「あ、いえ、こ、こちらこそありがとうございます」
果物を抱えながらも、律儀にペコリとミリアが頭を下げる。
「クレハ、呉々も魔物とユキマサには気を付けるのよ。特にユキマサよ。あの黒い変態には特の特によ」
「う、うん。エメレアちゃん、果物落ちそうだよ」
はじめてのおつかいを任せる子供に〝道を気を付けるのよ〟と、言い聞かせる親のように口を酸っぱくして、クレハに俺の注意を促すエメレアは何故か半泣きで、持っていた果物を落としてしまいそうになっており、それをクレハに寸での所で支えられている。
「──クレハ、行くぞ? そろそろ日が暮れる」
今回、俺が何故この時間に〝街の外をブラつく〟何て言ったかというと──まあ簡単に言うと、ただ単に夜の異世界の街の外を見ておきたかったからだ。
夜行性の魔物や魔獣もいるだろうし、魔王だっていつ攻めてきても可笑しくない世界だ。
昼にも夜にも対応できるようにしておかないとな。
「あ、うん。待って! それじゃ、エメレアちゃんもミリアもまたね、今日はありがとう!」
そう言うと、二人に軽く手を振りクレハが俺に付いて来る。一人で回るのも場所とかよく分からないし、クレハが付いてきてくれたのは凄く助かるな。
そんな事を考えながら、俺は左隣を歩くクレハと共に〝エルクステン〟の街の外へ足を運ぶのだった。
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