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プロローグ
しおりを挟む外は晴天。暑い夏の日差しが窓から射し込める。
まだ少し眠たげな様子で、孤児院の自室のベッドから起き上がりながら、16歳にしては少し大人びた雰囲気の黒髪の少年──稗月倖真は呟いた。
「退屈だな……」
そう呟いた瞬間、部屋全体が光の渦に包まれる。
「──!? なんだ? これ……」
見慣れた自分の部屋が、謎に渦巻く光の渦に包まれるという摩訶不思議な現象に流石に驚いていると……
──バタバタバタ!
部屋の外から誰かが此方に走って来る足音がする。
「は……何、この光……ちょっと倖真!! また、何かやらかしたの!?」
同じ孤児院に住む幼馴染みの声だ。
恐らく、朝食の時間になっても、一向に起きて来ない俺を呼びに来てくれたのだろう。
「てか、眩しっ! 倖真、ドア開けるよ!」
理沙がドアノブに手をかける僅かな音が鳴る。
「──理沙か!? 流石に様子が変だ! 来るな!」
俺はそれ以上の言葉を発する間も無く──
そして理沙によって、部屋のドアが開かれる前に、俺はあっという間に光の渦へと吸い込まれていった。
*
時を遡ること少し前。
──孤児院の台所──
炊きたてのごはんと味噌汁、これぞ日本の朝食と言わんばかりの良い香りが台所に漂っている。そしてこの孤児院の今週の食事当番である、栗毛色の長い髪をポニーテールにした16歳の少女──花蓮理沙は朝食を作り終え、皿へ盛り付けを終えると満足気な顔で口を開く。
「これでよしっと!」
すると、背後から聞き慣れた声が聞こえてくる。
「理沙姉お腹すいたぁ! ご飯まだー? あ、テーブルの掃除と朝の洗濯は終わったよ!!」
中学生ぐらいの女の子と、その後ろに小学生ぐらいの男女が台所に入ってくる。孤児院の子達だ。
どうやら、自分達の分担仕事が終わると、お腹が空いて、こちらの様子を見に来たらしい。
「ご苦労様、ご飯もうできてるよ。後は運ぶだけだから手伝ってね? それと倖真はもう起きてる?」
「え、倖兄? 倖兄なら、まだ降りてきてないよ。多分、まだ寝てるんじゃない?」
はぁ、まったくもう……
「ごめん。私、ちょっと倖真起こしてくるから、皆で朝食運んでおいてもらって良いかな?」
「はーい。了解! ごっはん♪ ごっはん♪」
ご機嫌に鼻唄を歌いながら、可愛らしい笑顔で了解する。
理沙は「じゃあ宜しくね」と言い残し、倖真を起こす為、倖真の部屋へ向かう。
(全く、毎回いつまで寝てるのだろう……)
これではせっかく作った朝食が冷めてしまうではないか!
部屋に着いたら少し怒ってやろう──
そう思うと少し楽しくなってきた。
バタバタバタ! と、駆け足で倖真の部屋の前まで来ると急に、部屋全体が眩しく光り出す。
「は……何、この光……ちょっと倖真!! また、何かやらかしたの!?」
よく見ると、その光は渦を巻くように動いているように見える──『これは一体どういう状況なのか?』と、理沙は目の前の光景に首を傾げる。
「てか、眩しっ! 倖真、ドア開けるよ!」
すると中から珍しく焦った声で返事が返ってくる。
「──理沙か!? 流石に様子が変だ! 来るな!」
そうは言われても、この状況ではドアを開けざるを得なく、理沙はガチャッと部屋のドアを開けるが……
──そこに、倖真の姿はなかった。
「…………へ……いない? え、何……どういうこと……部屋の中から倖真の声はしたよね? ……って言うかさっきの光は何!? 今度は何やらかしたのッ!」
現状の整理ができず理沙は頭を抱え、焦る……
「取り敢えず……こういう時は、まず牧野さんに連絡だ。というか、他に頼りになりそうな人がいない……」
慌ててポケットから、携帯電話を取り出し、
通話履歴から牧野へと電話をかける。
だが、数秒たっても、全然呼び出さない携帯電話に違和感を感じ、携帯の画面を見てみると……
──圏外になっている。
……は? ……圏外!?
(もう、何でこのタイミングで……!)
そして画面には謎のメッセージも表示されていた。
──電波を阻害しています♪
女神アルテナより──と。
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