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06 夢の魔王
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「あれが魔王城じゃないか?」
「なんだか拍子抜けするくらい普通の古城ね」
確かに、蔓が伸びてところどころ崩れている石造りのそれは、遺跡感さえ感じる。
一際大きな門の前に降り立つと、扉がひとりでに開ーーかなかった。
「不親切だな」
『それくらい自分たちで開けなさいよ』
どこからともなく声が聞こえた。
『はやく』
「はいっ」
クレアが素直に扉を押すが、ギシ、と音を立てるだけでびくともしない。
「しょうがないか、《飛翔加速》」
翼が四対に増える。増えた二対は赤紫色をしている。
『へぇ、面白いわねアンタ。早く来なさいよ』
「よいしょっ!」
クレアと俺で扉を押すと、老朽化した扉はぶっ壊れた。
そのままの勢いで中に突っ込み、仲良く2人で転がった先に。
「普通に入って来なさいよ」
ぶかぶかの衣を着た赤髪の幼女が、見下ろすように呆れていた。
「あなたが夢の魔王?」
「そう、私は夢の魔王、ペトラ。アンタたちが近づいてきたからとりあえず出てきたの。でーー」
一瞬で彼女の目が本気になる。殺気、いやこれは、覇気?
「暇だから急がせたんだけど、何の用?」
暇なら急がせるな、目的が分からん奴を簡単に入れるなと突っ込みたいがそうできる雰囲気でもない。
ちらとクレアを見る。
「私、呪い子なんです。呪いを治して貰えませんか?」
150キロの直球が出ましたね。
「あぁ......まぁ、とりあえずやってもいいわ。その代わり、一つ頼みごとを引き受けてもらう。それでいいわね?」
バッターアウト。
「は、はいっ」
クレアが元気の良い返事をした。素直というか、真っ直ぐというか......
苦笑いを浮かべてしまう俺を見、悪戯めいた微笑を浮かべて夢の魔王は手招きする。
「二人とも、もっと私に近づいて頂戴」
そろそろと近づいてみる。
ペトラは口元を歪ませる。
「ふふっ、《刃撃》」
「なっ!?」
魔力が刃を形作り、振り下ろされようとする先はーーー
「クレアっ」
突然のことに反応できていない彼女を凶刃が襲いかかろうとするが、咄嗟に横に飛んでクレアを抱きかかえ、回避する。
「あ、呪いが......」
「大丈夫だ。助かって良かった」
そう言って、刃を放ったペトラを振り返る。
「で、何のつもりだ?」
「必要なことだったのよ。これで準備は済んだ。《夢干渉》」
突然瞼が重くなる。猛烈な眠気が襲う。
「お休みなさーい」
「だまし……」
ひらひらと手を振る夢の魔王を目の片隅に捉えながら、意識がそこで無くなった。
「ようやく来たか」
あの声が鮮明に聞こえる。
荒涼とした大地に風が吹き荒れる。
「誰だ、お前は」
そう言うと、突如として一人の戦士が空中に姿を現した。
「我は神龍一族の長であった、アルペジオス。代々受け継がれる我が一族の記憶を具現化し、後継者を教育する者」
「アルペジオス。聞いたことがある。神龍の中で最も強大な力を持っていた、伝説の3人の一人だったか」
「その通り。我が一族の末裔であるお前を教育するのが己の定め。覚悟はできているな?」
「おい待て。もしかして試験を邪魔したのはお前か?」
「半分正解、半分外れだな」
「なぜそんなことをした」
「…………」
「貴様!そのせいで、俺は、あの二人は......」
そして俺は、奴の口が醜く歪み、嗜虐的な笑みを浮かべるさまを目にする。
「なんだか拍子抜けするくらい普通の古城ね」
確かに、蔓が伸びてところどころ崩れている石造りのそれは、遺跡感さえ感じる。
一際大きな門の前に降り立つと、扉がひとりでに開ーーかなかった。
「不親切だな」
『それくらい自分たちで開けなさいよ』
どこからともなく声が聞こえた。
『はやく』
「はいっ」
クレアが素直に扉を押すが、ギシ、と音を立てるだけでびくともしない。
「しょうがないか、《飛翔加速》」
翼が四対に増える。増えた二対は赤紫色をしている。
『へぇ、面白いわねアンタ。早く来なさいよ』
「よいしょっ!」
クレアと俺で扉を押すと、老朽化した扉はぶっ壊れた。
そのままの勢いで中に突っ込み、仲良く2人で転がった先に。
「普通に入って来なさいよ」
ぶかぶかの衣を着た赤髪の幼女が、見下ろすように呆れていた。
「あなたが夢の魔王?」
「そう、私は夢の魔王、ペトラ。アンタたちが近づいてきたからとりあえず出てきたの。でーー」
一瞬で彼女の目が本気になる。殺気、いやこれは、覇気?
「暇だから急がせたんだけど、何の用?」
暇なら急がせるな、目的が分からん奴を簡単に入れるなと突っ込みたいがそうできる雰囲気でもない。
ちらとクレアを見る。
「私、呪い子なんです。呪いを治して貰えませんか?」
150キロの直球が出ましたね。
「あぁ......まぁ、とりあえずやってもいいわ。その代わり、一つ頼みごとを引き受けてもらう。それでいいわね?」
バッターアウト。
「は、はいっ」
クレアが元気の良い返事をした。素直というか、真っ直ぐというか......
苦笑いを浮かべてしまう俺を見、悪戯めいた微笑を浮かべて夢の魔王は手招きする。
「二人とも、もっと私に近づいて頂戴」
そろそろと近づいてみる。
ペトラは口元を歪ませる。
「ふふっ、《刃撃》」
「なっ!?」
魔力が刃を形作り、振り下ろされようとする先はーーー
「クレアっ」
突然のことに反応できていない彼女を凶刃が襲いかかろうとするが、咄嗟に横に飛んでクレアを抱きかかえ、回避する。
「あ、呪いが......」
「大丈夫だ。助かって良かった」
そう言って、刃を放ったペトラを振り返る。
「で、何のつもりだ?」
「必要なことだったのよ。これで準備は済んだ。《夢干渉》」
突然瞼が重くなる。猛烈な眠気が襲う。
「お休みなさーい」
「だまし……」
ひらひらと手を振る夢の魔王を目の片隅に捉えながら、意識がそこで無くなった。
「ようやく来たか」
あの声が鮮明に聞こえる。
荒涼とした大地に風が吹き荒れる。
「誰だ、お前は」
そう言うと、突如として一人の戦士が空中に姿を現した。
「我は神龍一族の長であった、アルペジオス。代々受け継がれる我が一族の記憶を具現化し、後継者を教育する者」
「アルペジオス。聞いたことがある。神龍の中で最も強大な力を持っていた、伝説の3人の一人だったか」
「その通り。我が一族の末裔であるお前を教育するのが己の定め。覚悟はできているな?」
「おい待て。もしかして試験を邪魔したのはお前か?」
「半分正解、半分外れだな」
「なぜそんなことをした」
「…………」
「貴様!そのせいで、俺は、あの二人は......」
そして俺は、奴の口が醜く歪み、嗜虐的な笑みを浮かべるさまを目にする。
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