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05 呪い子
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クァー。クァー。
けたたましい鳥の声で俺は目を覚ました。体を起こすと毛布がかかっていることに気づき、周囲を見渡すと、か弱げな少女が少し離れて座っていた。
柔らかな草木の色が澄んだ空気と合唱している。時が止まっている、一枚の絵画のようだ。
とりあえず礼を言わなければと、俺は上体を起こす。
「俺の名はルシウス。あなたが介抱してくれたのか?ありがとう」
通りすがって、寝ている俺が風邪でも引かないように、と毛布を何処からか持ってきてくれたのだろうか?
いや? 考えてみれば、この世界にはアイテムボックスもあるんだったな。
少女の淡い桃色をした唇が動いた。
「いえ、当然のことをしたまでですよ。私はクレア。それから、不用意に私に近づかないでくださいね」
え?
思わず口を開けてしまった俺を見て、慌てたように少女が言った。
「あ、そういうことではないんです!」
話を聞いて、ようやく事情が判明したのだが、どうやら少女は呪い子と呼ばれているらしく、服の上からでも触れると、その呪いとやらが移ってしまうそうだ。
「呪いとは?」
「それが……毎晩毎晩、夢に悪魔が現れ殺されるのです」
「悪魔、か」
「はい。とても強大で禍々しい力を持っています」
『フィギの継承者か。ここで会えるとはな』
突然、ひび割れた声が聞こえた。頭の中から直接響いた感じがする。
「何か言いました?」
「いや、何も」
『夢の魔王のところへ赴けば、呪いは解ける』
「あ、また聞こえましたね」
どこかで聞いた気がする声、思い出せない声。
「ほ、ほんとうに呪いが解けるのでしょうか」
信じていいのだろうか、だが行く価値はありそうだ。俺はまだこの世界を殆ど知らないうえに、呪いについても恩は返したいと思う。
「夢の魔王か。言い伝えでは、この大陸の最西端に住んでいると教えられたな。クレアさんさえ良ければ一緒に行かないか」
というか、一般民が魔王の住所を知っているとはな。不思議だ異世界。
「是非、同行お願いできますか?ルシウスさん」
「もちろんだ。宜しくな」
母親にもらった地図を、あの時咄嗟に持ってきた鞄から取り出す。
「この道を真っ直ぐに行けば着くはずだな」
「地図が読めるって凄いです! 私にも教えていただけませんか?」
「敬語はいらない、(見た目は)同年代だろ?」
「あ、うん。私にも、教えてくれない?」
「もちろん」
こっちが北で、こっちが南で、と一つ一つ教えていく。
「こんなに世界って広かったんだね...」
「もしかして、今まで教育とか受けられなかったのか?」
「うん。呪い子は必要ないからって」
「そうか」
ひどいことをするな、と思いつつ、地図を指差して計算する。
「このまま歩けば一週間くらいで着くな」
そう言って気づいた。
神龍の固有スキル《飛翔》が此処でも使えることに。
「飛べばすぐ着くけど、どうする?」
「え? 飛ぶ?」
とりあえずクレアの背中にイメージを集中させる。
「飛翔付与」
ばさっと現れたのは純白の翼。
うわぁぁ!と嬉しそうにぱたぱたさせるクレア。
「凄い!」
「つい最近習得した固有スキル。使うのは初めてだけど、便利だな」
恐らく、全力で翼を使ったあの時に、レベルか何かが上がって使えるようになったのだろう。
翼に慣れるのに少し手こずったあと、二人は翼を広げて夢の魔王が住まう城へと向かったのだった。
けたたましい鳥の声で俺は目を覚ました。体を起こすと毛布がかかっていることに気づき、周囲を見渡すと、か弱げな少女が少し離れて座っていた。
柔らかな草木の色が澄んだ空気と合唱している。時が止まっている、一枚の絵画のようだ。
とりあえず礼を言わなければと、俺は上体を起こす。
「俺の名はルシウス。あなたが介抱してくれたのか?ありがとう」
通りすがって、寝ている俺が風邪でも引かないように、と毛布を何処からか持ってきてくれたのだろうか?
いや? 考えてみれば、この世界にはアイテムボックスもあるんだったな。
少女の淡い桃色をした唇が動いた。
「いえ、当然のことをしたまでですよ。私はクレア。それから、不用意に私に近づかないでくださいね」
え?
思わず口を開けてしまった俺を見て、慌てたように少女が言った。
「あ、そういうことではないんです!」
話を聞いて、ようやく事情が判明したのだが、どうやら少女は呪い子と呼ばれているらしく、服の上からでも触れると、その呪いとやらが移ってしまうそうだ。
「呪いとは?」
「それが……毎晩毎晩、夢に悪魔が現れ殺されるのです」
「悪魔、か」
「はい。とても強大で禍々しい力を持っています」
『フィギの継承者か。ここで会えるとはな』
突然、ひび割れた声が聞こえた。頭の中から直接響いた感じがする。
「何か言いました?」
「いや、何も」
『夢の魔王のところへ赴けば、呪いは解ける』
「あ、また聞こえましたね」
どこかで聞いた気がする声、思い出せない声。
「ほ、ほんとうに呪いが解けるのでしょうか」
信じていいのだろうか、だが行く価値はありそうだ。俺はまだこの世界を殆ど知らないうえに、呪いについても恩は返したいと思う。
「夢の魔王か。言い伝えでは、この大陸の最西端に住んでいると教えられたな。クレアさんさえ良ければ一緒に行かないか」
というか、一般民が魔王の住所を知っているとはな。不思議だ異世界。
「是非、同行お願いできますか?ルシウスさん」
「もちろんだ。宜しくな」
母親にもらった地図を、あの時咄嗟に持ってきた鞄から取り出す。
「この道を真っ直ぐに行けば着くはずだな」
「地図が読めるって凄いです! 私にも教えていただけませんか?」
「敬語はいらない、(見た目は)同年代だろ?」
「あ、うん。私にも、教えてくれない?」
「もちろん」
こっちが北で、こっちが南で、と一つ一つ教えていく。
「こんなに世界って広かったんだね...」
「もしかして、今まで教育とか受けられなかったのか?」
「うん。呪い子は必要ないからって」
「そうか」
ひどいことをするな、と思いつつ、地図を指差して計算する。
「このまま歩けば一週間くらいで着くな」
そう言って気づいた。
神龍の固有スキル《飛翔》が此処でも使えることに。
「飛べばすぐ着くけど、どうする?」
「え? 飛ぶ?」
とりあえずクレアの背中にイメージを集中させる。
「飛翔付与」
ばさっと現れたのは純白の翼。
うわぁぁ!と嬉しそうにぱたぱたさせるクレア。
「凄い!」
「つい最近習得した固有スキル。使うのは初めてだけど、便利だな」
恐らく、全力で翼を使ったあの時に、レベルか何かが上がって使えるようになったのだろう。
翼に慣れるのに少し手こずったあと、二人は翼を広げて夢の魔王が住まう城へと向かったのだった。
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