3 / 20
カリフォルニア
しおりを挟む
機関車は、フランス文化の香りがするニューオーリンズに止まり、広大で見渡す限り何もないテキサスを横切り、サンフランシスコに到着した。サンフランシスコで乗り換えて、カリフォルニアのバークレーに到着したのは夜の10時を過ぎていた。
駅の近く、今夜泊まる予定のナショナルハウスに到着すると、まだ受付に灯りが点っていた。メガネをかけてハゲたおじさんが新聞を読んでいる。
「こんばんわ」
ドナルドが声をかけると、おじさんはメガネ越しにほほえんだ。
「おぉ、いらっしゃい。ドナルド・キーンくんだろ?」
「あ、はい。ぼくが予約した部屋はまだありますか」
「当たり前だろ。東海岸から来る若者は、だいたいこの位の時間になるからね」
二人がナショナルハウスの2階の廊下を歩いている。受付のおじさんが鍵を入れて扉を開く。
「はい、ここね」
ドナルドが大きな荷物3つを部屋に入れて振り返る。
「ありがとうございました」
受付のおじさんがほほえむ。
「列車の旅は疲れるからね。その無精髭の様子だと4日かな?」
「5日かかりました」
「あぁ、そりゃ大変だ。ま、よく眠りなよ」
受付のおじさんがドアを閉めたので、ドナルドはベットにちょっと横になってみた。そして、そのまま熟睡してしまった。
娘たちの笑い声がする。
ドナルドが目を覚ました。カーテンから光が漏れている。外から娘たちの笑い声がするので、カーテンをあけてみると、強い日差しが差し込んでまぶしかった。外を見ると、パステルカラーのセーターを着た娘達が外を歩いていた。その向こうには、たくさんの花々が咲き誇っている。
ドナルドが大きな荷物を3つ持って、インターナショナルハウスの受付に立つ。
「おじさん、ありがとうございました」
受付のおじさんは、読みかけの新聞越しにドナルドを見る。
「よく眠れたみたいだね。どうだい? カリフォーニアは?」
「目をみはりますね。太陽がまぶしくて、花が咲いていて。ニューヨークはまだ雪なのに」
受付のおじさんが大きくほほえんだ。
ドナルドは、海軍から指定されたカリフォルニア大学バークレー校の教室に向かった。すでに30人位の男女が教室に座っていた。ドナルドがうしろの方の空いている席に座ると、ちょうど前の方から海軍士官らしき人物が入ってきて前に立った。
「あー、いいから、いいから、そのまま、そのまま。こんにちは。えー、今日は軽くオリエンテーションをしてからクラス分けをします」
教室は静まりかえっている。
「ご存じの通り、我がアメリカは日本と戦争状態になりました。そこで、日本語を理解できるアメリカ人がたくさん必要になりました。と、いうわけで、諸君のような優秀な若者をどんどん育成していきます。計画としては、諸君は、およそ16ヶ月で日本語を習得します」
教室がどよめく。ドナルドもビックリする。
「たった1年半で?」
海軍士官は微笑する。
「じゃね、諸君の武器を配ろう」
たくさんの本を台車に乗せた人が入ってきて、本を配り始める。全員に配り終えたあと、海軍士官が本を掲げる。
「これがメインの教科書『標準日本語読本』ね。1巻から6巻まである。通称『ナガヌマ・リーダー』」
ドナルドは、リングで止められた『ナガヌマ・リーダー』第一巻をしげしげと眺める。海軍士官が続ける。
「あとは、富山房の『英和辞典』、研究社の『和英辞典』、ローズ・イネスの『漢字辞典』、と、これはアメリカの普通の日英対訳辞典、それから上田和年の『漢和辞典』だ」
ドナルドは、辞典を一つづつ見てため息をついた。
ドナルドが、クラス分けの紙を持って指定された教室に入っていく。金髪でさわやかな笑顔の若い男座っている。ドナルドを見て立ち上がって右手を差し出す。
「やぁ、ボクはオーティス・ケーリ。よろしく」
ドナルドも右手を差し出す。
「よろしく。ボクはドナルド・キーン」
ドナルドはクラス分けの紙を指す。
「ここに書いてある「リリィ・デイヴィス」って女性かな?」
オーティスも自分の持っている紙を見る。
「うん。女性だろうな」
二人で向き合ったまま沈黙する。ドナルドが紙を見ている。
「女の子と一緒のクラスなんて、いつ以来だろう」
「ほんとだな。海軍は女性を入れることにしたのかな?」
そこへ、噂のリリィ・デイヴィスが、元気よくスキップで入ってきた。赤毛で、目鼻立ちのハッキリした美人。
「あー、やっと見つかった。ここでしょ? あんたたち、ドナルドとオーティス?」
リリィが紙をヒラヒラさせながら尋ねる。ドナルドとオーティス、揃って小さくうなづく。リリが「はぁー」とため息をつきながら座る。
「わかってるよ。あんた達が思ってること。「女の子と一緒のクラスなの?」って思ってるでしょ?」
ドナルドとオーティス、揃って小さくうなづく。リリィが二人を見つめる。
「まだ発表されてないけどね、米国陸海軍はね、思いっきり女性を登用する方針を固めたの。ルーズベルト大統領とエレノア夫人の強い意向があってね」
ドナルドとオーティス、揃って小さくうなづく。リリィが窓の外を見る。
「やっと。あたぃ達の能力が生かせる時が来たのよ。やっと、大臣の妻になるためでなく、大臣になるために生きられるのよ。わかった? あんた達!」
ドナルドとオーティス、揃って小さくうなづく。リリィ、満足そうにうなづく。
「よし。じゃ、質問ある?」
少し恐る恐るオーティスが尋ねる。
「どこの大学から来たの?」
「ラドクリフ・カレッジ」
ドナルドがビックリする。
「セブンシスターズだ! 名門から来たんだねぇ」
リリィが片目でドナルドを見る。
「あんたはどこの大学?」
「コロンビア大学」
リリィがもう一個の片目でオーティスを見る。
「あんたは?」
「アーモスト大学」
リリィが笑う。
「なーに言ってんだか。みんな名門じゃない」
オーティスも笑う。
「そりゃ、そうだな。ここにいる人はみんな全米トップ5%以内の人たちらしいもんな」
ドナルドがビックリ。
「えー! そうなのー?」
リリィが疑った目でドナルドを見る。
「そんなこと言って、あんた日本語できたりするんじゃないの?」
ドナルドがちょっとドギマギする。
「うーん、ちょっと勉強はしてたよ。大学と、夏期講習みたいなので」
「よし。あたしと同じようなもんだ。オーティス、あんたは?」
オーティスがすまなそうな顔になる。
「ボク、日本生まれなんだ」
ドナルド、目をむいてオーティスを見る。リリィが大きな声を出す。
「えー! あんたBIJなのぉー!?」
ドナルドがリリィに尋ねる。
「BIJってなに?」
リリィが片目でドナルドを見る。
「Born in Japan」
オーティスが照れている。
「うん、まー、小樽で小学校行って、一旦アメリカ帰って、それからまた神戸で中学通ったんだ。中学はインターナショナルスクールだけど、小学校は日本の小学校だった」
リリィがつぶらな瞳でオーティスを見る。
「小樽も神戸もどこだかわかんないけど、すごいねー。ここじゃ貴族ねー」
オーティスが照れる。
「そんなことないだろー」
ドナルドが興味深そう。
「ビジネス? 宣教師?」
「宣教師。じーさんと父さんも宣教師」
リリィがほほえみかける。
「すごいねー。日本語ネイティブだ」
「うん。まーね。だいぶ忘れちゃったけど」
リリィがドナルドにほほえみかける。
「よかったね。オーティスに色々教えてもらえるね」
ドナルドが微笑で答える。
ランチの時間。食堂でドナルドとオーティスが談笑している。ランチの載ったトレイを持ったリリィが、ウロウロしてあたりを見回している。オーティスが気づいて手をあげる。
「リリィ、こっちこっち」
リリィが気づいてやってきて、ドナルドの向かいに座る。
「ダメねー。あたぃ、方向音痴なんだ」
オーティスが笑う。
「そんなんで、戦場行ったらどうすんだよ」
リリィが可愛い顔をして上目遣いになる。
「その時はぁ、オーティスかドナルド、よろしくね。テヘ」
オーティスが笑う。
「女性の権利向上をお叫びながら、女の武器は使うわけだ。こーゆーやつにダマされちゃダメだぞ。ドナルド」
ドナルドが苦笑する。
「でも、可愛いな。死んだ妹を思い出すよ」
オーティスが驚く。
「ダメだよー、ドナルド。リリィの思うツボじゃないか。ボクは姉二人いるから、ダマされないぞ。リリィ」
リリィが「テヘ」と笑って、自分のトレイを見る。
「あれ? ナイフとフォークがないよ」
オーティスがトレイを指す。
「あるじゃない。そこに」
リリィがトレイに置いてある木の棒を二つ手に取る。
「なにこれ? 渡されたから、もらっといたけど、、、」
ドナルドとオーティスがクスッと笑う。
「あっ、笑った。なんだよぉー。知らないの、あたぃだけ? ドナルド知ってるの?」
ドナルドが親指と人差し指と中指で正しく箸を持って、リリィの前に掲げる。
「知ってるよ。大学の唯一の友だちが中国人で、よく中華食べに行ったから」
オーティスが感嘆する。
「へー。ニューヨークには学生が食べられるような値段の中華料理店があるんだ? うらやましいなぁ」
「そうだよ。安くて、おいしかったよ」
リリィがドナルドの箸の持ち方を凝視している。
「ははは。箸だよ。日本人とか中国人のナイフとフォーク」
「へー。これで? 大変そうね」
オーティスが親指と人差し指と中指で正しく箸を持って、リリィの前に掲げる。
「そんなことないよ。慣れればナイフとフォークより便利だよ」
リリィが興味深そうに二人の箸の持ち方を見て真似る。うまくできて、ドナルドとオーティスに掲げて見せる。なんだか3人で大きなVサインを出しあっているようになった。
翌朝。
教室でメリーとドナルドが別々の机の席に座っている。それぞれ机の上に6冊の本と辞書が置かれている。
黒板の前で、オーティスと先生が日本語で話している。
「ほー、きみゃー、小樽な? ひやかったろー」
「寒かったですねー。鼻水が凍りましたよ」
「はははは。ワシんさとは高知の方であったかいき、そがな話聞いたことないなー」
オーティスが尋ねる。
「先生は、日本に行ったことあるの?」
「(苦笑)それが、ないがよ。オヤジもオフクロも内地のええ話せんき、あんまり行きたくもなかったけんど、こーなったら一度行ってみたいぜよ」
「じゃ、この仕事で行けるかもね」
メリーとドナルドが二人をボーッと見ている。メリーがヒソヒソ声で言う。
「さーすがBIJ」
教室の前に立った先生が英語で挨拶を始める。
「はじめまして。私は、アラセ・サブローです。日系二世です。カリフォーニアのサンノゼで生まれ育ちました。君たちに読解を教えます。よろしくお願いします」
アラセ先生がうやうやしく一礼する。オーティスがすぐに立ち上がって返礼する。リリィとドナルドは、たどたどしく立ち上がって、オーティスの真似をして返礼する。
「教科書はナガヌマ・リーダーです。本来なら、ひらがなとかカタカナとか教えるとこなんだけど、君たちには時間がないから、さっそくやっていくよ。オーティス、33ページから読んでみて」
オーティスがゆっくり立ち上がる。
「えーとー、、、」
オーティスがじっとする。みんな、見ている。
「えーとー、コレハ……デス。コレハ……イ……デスカ? ハイ、ソウデス」
アラセ先生が苦笑する。ドナルドも苦笑する。リリィはキョトンとしている。
「ひらがなだけ読むなよ」
「ははは。日本の学校行ったの小学校の3年だけなんで、漢字が全然わかんないんですよ」
みんなでひとしきり笑う。オーティスがドナルドを指す。
「このドナルドならきっと読めますよ。漢字大好きだから」
「ほー。キミは漢字が好きなの?」
「え、えぇ。」
「へー。じゃ、読んでみて」
ドナルドが立ち上がって読み始める。
「コレハ本デス。コレハ赤イ本デスカ? ハイ、ソウデス。コレハ白イ本デスカ? イイエ、ソウデハアリマセン」
アラセ先生が拍手する。
「こりゃー、立派なもんだ。どっかで勉強したの?」
「大学で多少、日本語と中国語を」
アラセ先生が教壇に置いた名簿を見る。
「ドナルド・キーンくんか。あぁ、コロンビアか。さすがに頭脳明晰だねぇ」
ドナルドが照れる。
次の授業。
リリィとドナルドが別々の机に座って前を見ている。オーティスが先生と、教壇を挟んで日本語で話している。
「わいわい~、おめは小樽なのかー? 寒ぐであったべなぁ」
「寒かったですねぇ。鼻水が凍りましたよ」
「だはははは。わがるわー。わがる。おら青森だし、雪国はキツいばなー」
リリィとドナルドが尊敬の眼差しで見ている。オーティスが別の席に座りながら英語で話しかける。
「しかし、先生の日本語すごい訛りだね(笑)それで会話教えるの?」
先生がキョトンとして、英語で答える。
「オレ、訛ってる?」
オーティスが苦笑。先生が英語で自己紹介を始める。
「はじめまして。私はナカムラ・イチローです。日本の青森で生まれ育って、東北大学を卒業してからアメリカに来ました。ロサンゼルスでジャーナリストをしていました。英語は訛ってないだろ?」
オーティスが苦笑しながらうなづく。ナカムラ先生も笑う。
「君たちに会話を教えることになってるんだけど、上が言うには、君たちにとって会話はそんな重要じゃないらしいんだ。だから、ゆるーく行こう」
リリィが両手をあげて「イエーイ」と喜んだ。ナカムラ先生は微笑して、自分のカバンの中から白い本を出す。リリィに向けて本を見せながら、日本語で尋ねる。
「これは赤い本ですか?」
リリィが少し考える。
「いいえ」
「では、何色ですか?」
リリィが少し考える。
「シロです」
ドナルドとオーティスが拍手する。リリィが少し怒りながら、照れる。
「なによ。やめてよ。あたしだって、少しはできるのよ」
次の授業。
リリィとドナルドが別々の机に座って前を見ている。オーティスが先生と、教壇を挟んで日本語で話している。
「へぇー。キミは小樽なのか? 寒かっただろうなぁ」
「寒かったですねぇ。鼻水が凍りましたよ」
リリィがドナルドの隣の席に移ってきて、小声で話しかける。
「ねぇ。オーティスさ、同じ話してるよね?」
ドナルドがうなづく。リリィが続ける。
「牧師だから同じ話続けられるのかな?」
リリィがドナルドの肩を叩きながら、小さな声で爆笑する。ドナルドもちょっと笑う。
オーティスが自分の席に座ると、先生が英語で話し始めた。
「はじめまして。アシカガです。日本美術が専門で、ついこの間までカリフォーニア大学のロサンゼルス校で教えてたの。書き取りを教えるわよ。よろしくね」
アシカガ先生が一礼したので、3人も立ち上がって返礼する。
「じゃ、オーティスさん、今から言うことを黒板に書いてみて」
オーティスが立ち上がって黒板の前に立ったところで、アシカガ先生が言う。
「赤い箱」
オーティスは少し考えて黒板に書くが、「赤」と「箱」が何らかの抽象文字のようになる。アシカガ先生が驚く。
「あれ? キミ、書くのダメなの?」
オーティスが苦笑する。
「そうなんですよ。日本語の学校行ったの小学校の3年までなんで。ドナルドはできますよ。漢字好きだから」
アシカガ先生が興味深そうにドナルドを見る。
「へー。じゃ、ドナルドさん、書いてみて」
ドナルドが黒板の前に出てきて、悩みながら書く。アシカガ先生が言う。
「「赤い」はあってるけど、「箱」がちょっと違うわ」
アシカガ先生が正解を黒板に書く。ドナルドがそれをジッと見ている。
「「箱」は難しいですね。今日習った中で一番難しいです。それに、書いてみると違いますね。書くのは難しい」
アシカガ先生がニヤッと笑う。
「その通り。だけど、書いて覚えると忘れないんだ。だから、これからはたーくさん書いてもらうよ。そのうち、きっと、ボクのことが嫌いになるよ」
夜の食堂。リリィとドナルドとオーティスが食後の紅茶を飲みながら話をしている。ドナルドが苦笑する。
「やっぱ「書き取り」が難しかったなぁ。自分で考えないといけないからね」
オーティスが深くうなづく。
「ほんとだよー。カンジ、面倒くさいなー」
リリィが笑う。
「BIJがあんなこと行ってる」
オーティスが苦笑する。
「なんかさー、なまじ喋れるだけに、余計面倒なんだよねー。そのうちボクが偉くなったら、キミたち手伝ってくれな。読み書き担当で」
ドナルドとリリィが笑う。
「いいよ」
「逆に、あたしたちが偉くなったら、あんた手伝ってよ。おしゃべり担当で」
オーティスが楽しそう。
「もちろん!」
その時、向こうのドアからアラセ先生が入ってきて、食堂にいるみんなに大きな声で告げる。
「はーい、じゃ、映画見るからねー。みんな映写室行って-」
映写室に30人位の人がいる。左の後ろの方の席にリリィとドナルドとオーティスが並んで座っている。日本語の音声が聞こえている。リリィが小声でドナルドに尋ねる。
「これって字幕ないの?」
「ないみたいだね。スパルタ教育だねぇ。日本人を知るために参考にしろってことじゃないの?」
映画を見ながらオーティスが「はははは」と笑う。リリィがオーティスを睨む。オーティスがリリィの視線に気づく。
「なに?」
「いいわね。あんただけ楽しそうで」
オーティスが笑顔になる。
「いまさ、忘れてた日本語を急に思い出したんだ」
ドナルドが興味深そう。
「どんな言葉?」
「「応援する」って言葉。英語だと「Support」」
リリィがつぶやく。
「さーすがBIJ。エンジョイしてるわ」
駅の近く、今夜泊まる予定のナショナルハウスに到着すると、まだ受付に灯りが点っていた。メガネをかけてハゲたおじさんが新聞を読んでいる。
「こんばんわ」
ドナルドが声をかけると、おじさんはメガネ越しにほほえんだ。
「おぉ、いらっしゃい。ドナルド・キーンくんだろ?」
「あ、はい。ぼくが予約した部屋はまだありますか」
「当たり前だろ。東海岸から来る若者は、だいたいこの位の時間になるからね」
二人がナショナルハウスの2階の廊下を歩いている。受付のおじさんが鍵を入れて扉を開く。
「はい、ここね」
ドナルドが大きな荷物3つを部屋に入れて振り返る。
「ありがとうございました」
受付のおじさんがほほえむ。
「列車の旅は疲れるからね。その無精髭の様子だと4日かな?」
「5日かかりました」
「あぁ、そりゃ大変だ。ま、よく眠りなよ」
受付のおじさんがドアを閉めたので、ドナルドはベットにちょっと横になってみた。そして、そのまま熟睡してしまった。
娘たちの笑い声がする。
ドナルドが目を覚ました。カーテンから光が漏れている。外から娘たちの笑い声がするので、カーテンをあけてみると、強い日差しが差し込んでまぶしかった。外を見ると、パステルカラーのセーターを着た娘達が外を歩いていた。その向こうには、たくさんの花々が咲き誇っている。
ドナルドが大きな荷物を3つ持って、インターナショナルハウスの受付に立つ。
「おじさん、ありがとうございました」
受付のおじさんは、読みかけの新聞越しにドナルドを見る。
「よく眠れたみたいだね。どうだい? カリフォーニアは?」
「目をみはりますね。太陽がまぶしくて、花が咲いていて。ニューヨークはまだ雪なのに」
受付のおじさんが大きくほほえんだ。
ドナルドは、海軍から指定されたカリフォルニア大学バークレー校の教室に向かった。すでに30人位の男女が教室に座っていた。ドナルドがうしろの方の空いている席に座ると、ちょうど前の方から海軍士官らしき人物が入ってきて前に立った。
「あー、いいから、いいから、そのまま、そのまま。こんにちは。えー、今日は軽くオリエンテーションをしてからクラス分けをします」
教室は静まりかえっている。
「ご存じの通り、我がアメリカは日本と戦争状態になりました。そこで、日本語を理解できるアメリカ人がたくさん必要になりました。と、いうわけで、諸君のような優秀な若者をどんどん育成していきます。計画としては、諸君は、およそ16ヶ月で日本語を習得します」
教室がどよめく。ドナルドもビックリする。
「たった1年半で?」
海軍士官は微笑する。
「じゃね、諸君の武器を配ろう」
たくさんの本を台車に乗せた人が入ってきて、本を配り始める。全員に配り終えたあと、海軍士官が本を掲げる。
「これがメインの教科書『標準日本語読本』ね。1巻から6巻まである。通称『ナガヌマ・リーダー』」
ドナルドは、リングで止められた『ナガヌマ・リーダー』第一巻をしげしげと眺める。海軍士官が続ける。
「あとは、富山房の『英和辞典』、研究社の『和英辞典』、ローズ・イネスの『漢字辞典』、と、これはアメリカの普通の日英対訳辞典、それから上田和年の『漢和辞典』だ」
ドナルドは、辞典を一つづつ見てため息をついた。
ドナルドが、クラス分けの紙を持って指定された教室に入っていく。金髪でさわやかな笑顔の若い男座っている。ドナルドを見て立ち上がって右手を差し出す。
「やぁ、ボクはオーティス・ケーリ。よろしく」
ドナルドも右手を差し出す。
「よろしく。ボクはドナルド・キーン」
ドナルドはクラス分けの紙を指す。
「ここに書いてある「リリィ・デイヴィス」って女性かな?」
オーティスも自分の持っている紙を見る。
「うん。女性だろうな」
二人で向き合ったまま沈黙する。ドナルドが紙を見ている。
「女の子と一緒のクラスなんて、いつ以来だろう」
「ほんとだな。海軍は女性を入れることにしたのかな?」
そこへ、噂のリリィ・デイヴィスが、元気よくスキップで入ってきた。赤毛で、目鼻立ちのハッキリした美人。
「あー、やっと見つかった。ここでしょ? あんたたち、ドナルドとオーティス?」
リリィが紙をヒラヒラさせながら尋ねる。ドナルドとオーティス、揃って小さくうなづく。リリが「はぁー」とため息をつきながら座る。
「わかってるよ。あんた達が思ってること。「女の子と一緒のクラスなの?」って思ってるでしょ?」
ドナルドとオーティス、揃って小さくうなづく。リリィが二人を見つめる。
「まだ発表されてないけどね、米国陸海軍はね、思いっきり女性を登用する方針を固めたの。ルーズベルト大統領とエレノア夫人の強い意向があってね」
ドナルドとオーティス、揃って小さくうなづく。リリィが窓の外を見る。
「やっと。あたぃ達の能力が生かせる時が来たのよ。やっと、大臣の妻になるためでなく、大臣になるために生きられるのよ。わかった? あんた達!」
ドナルドとオーティス、揃って小さくうなづく。リリィ、満足そうにうなづく。
「よし。じゃ、質問ある?」
少し恐る恐るオーティスが尋ねる。
「どこの大学から来たの?」
「ラドクリフ・カレッジ」
ドナルドがビックリする。
「セブンシスターズだ! 名門から来たんだねぇ」
リリィが片目でドナルドを見る。
「あんたはどこの大学?」
「コロンビア大学」
リリィがもう一個の片目でオーティスを見る。
「あんたは?」
「アーモスト大学」
リリィが笑う。
「なーに言ってんだか。みんな名門じゃない」
オーティスも笑う。
「そりゃ、そうだな。ここにいる人はみんな全米トップ5%以内の人たちらしいもんな」
ドナルドがビックリ。
「えー! そうなのー?」
リリィが疑った目でドナルドを見る。
「そんなこと言って、あんた日本語できたりするんじゃないの?」
ドナルドがちょっとドギマギする。
「うーん、ちょっと勉強はしてたよ。大学と、夏期講習みたいなので」
「よし。あたしと同じようなもんだ。オーティス、あんたは?」
オーティスがすまなそうな顔になる。
「ボク、日本生まれなんだ」
ドナルド、目をむいてオーティスを見る。リリィが大きな声を出す。
「えー! あんたBIJなのぉー!?」
ドナルドがリリィに尋ねる。
「BIJってなに?」
リリィが片目でドナルドを見る。
「Born in Japan」
オーティスが照れている。
「うん、まー、小樽で小学校行って、一旦アメリカ帰って、それからまた神戸で中学通ったんだ。中学はインターナショナルスクールだけど、小学校は日本の小学校だった」
リリィがつぶらな瞳でオーティスを見る。
「小樽も神戸もどこだかわかんないけど、すごいねー。ここじゃ貴族ねー」
オーティスが照れる。
「そんなことないだろー」
ドナルドが興味深そう。
「ビジネス? 宣教師?」
「宣教師。じーさんと父さんも宣教師」
リリィがほほえみかける。
「すごいねー。日本語ネイティブだ」
「うん。まーね。だいぶ忘れちゃったけど」
リリィがドナルドにほほえみかける。
「よかったね。オーティスに色々教えてもらえるね」
ドナルドが微笑で答える。
ランチの時間。食堂でドナルドとオーティスが談笑している。ランチの載ったトレイを持ったリリィが、ウロウロしてあたりを見回している。オーティスが気づいて手をあげる。
「リリィ、こっちこっち」
リリィが気づいてやってきて、ドナルドの向かいに座る。
「ダメねー。あたぃ、方向音痴なんだ」
オーティスが笑う。
「そんなんで、戦場行ったらどうすんだよ」
リリィが可愛い顔をして上目遣いになる。
「その時はぁ、オーティスかドナルド、よろしくね。テヘ」
オーティスが笑う。
「女性の権利向上をお叫びながら、女の武器は使うわけだ。こーゆーやつにダマされちゃダメだぞ。ドナルド」
ドナルドが苦笑する。
「でも、可愛いな。死んだ妹を思い出すよ」
オーティスが驚く。
「ダメだよー、ドナルド。リリィの思うツボじゃないか。ボクは姉二人いるから、ダマされないぞ。リリィ」
リリィが「テヘ」と笑って、自分のトレイを見る。
「あれ? ナイフとフォークがないよ」
オーティスがトレイを指す。
「あるじゃない。そこに」
リリィがトレイに置いてある木の棒を二つ手に取る。
「なにこれ? 渡されたから、もらっといたけど、、、」
ドナルドとオーティスがクスッと笑う。
「あっ、笑った。なんだよぉー。知らないの、あたぃだけ? ドナルド知ってるの?」
ドナルドが親指と人差し指と中指で正しく箸を持って、リリィの前に掲げる。
「知ってるよ。大学の唯一の友だちが中国人で、よく中華食べに行ったから」
オーティスが感嘆する。
「へー。ニューヨークには学生が食べられるような値段の中華料理店があるんだ? うらやましいなぁ」
「そうだよ。安くて、おいしかったよ」
リリィがドナルドの箸の持ち方を凝視している。
「ははは。箸だよ。日本人とか中国人のナイフとフォーク」
「へー。これで? 大変そうね」
オーティスが親指と人差し指と中指で正しく箸を持って、リリィの前に掲げる。
「そんなことないよ。慣れればナイフとフォークより便利だよ」
リリィが興味深そうに二人の箸の持ち方を見て真似る。うまくできて、ドナルドとオーティスに掲げて見せる。なんだか3人で大きなVサインを出しあっているようになった。
翌朝。
教室でメリーとドナルドが別々の机の席に座っている。それぞれ机の上に6冊の本と辞書が置かれている。
黒板の前で、オーティスと先生が日本語で話している。
「ほー、きみゃー、小樽な? ひやかったろー」
「寒かったですねー。鼻水が凍りましたよ」
「はははは。ワシんさとは高知の方であったかいき、そがな話聞いたことないなー」
オーティスが尋ねる。
「先生は、日本に行ったことあるの?」
「(苦笑)それが、ないがよ。オヤジもオフクロも内地のええ話せんき、あんまり行きたくもなかったけんど、こーなったら一度行ってみたいぜよ」
「じゃ、この仕事で行けるかもね」
メリーとドナルドが二人をボーッと見ている。メリーがヒソヒソ声で言う。
「さーすがBIJ」
教室の前に立った先生が英語で挨拶を始める。
「はじめまして。私は、アラセ・サブローです。日系二世です。カリフォーニアのサンノゼで生まれ育ちました。君たちに読解を教えます。よろしくお願いします」
アラセ先生がうやうやしく一礼する。オーティスがすぐに立ち上がって返礼する。リリィとドナルドは、たどたどしく立ち上がって、オーティスの真似をして返礼する。
「教科書はナガヌマ・リーダーです。本来なら、ひらがなとかカタカナとか教えるとこなんだけど、君たちには時間がないから、さっそくやっていくよ。オーティス、33ページから読んでみて」
オーティスがゆっくり立ち上がる。
「えーとー、、、」
オーティスがじっとする。みんな、見ている。
「えーとー、コレハ……デス。コレハ……イ……デスカ? ハイ、ソウデス」
アラセ先生が苦笑する。ドナルドも苦笑する。リリィはキョトンとしている。
「ひらがなだけ読むなよ」
「ははは。日本の学校行ったの小学校の3年だけなんで、漢字が全然わかんないんですよ」
みんなでひとしきり笑う。オーティスがドナルドを指す。
「このドナルドならきっと読めますよ。漢字大好きだから」
「ほー。キミは漢字が好きなの?」
「え、えぇ。」
「へー。じゃ、読んでみて」
ドナルドが立ち上がって読み始める。
「コレハ本デス。コレハ赤イ本デスカ? ハイ、ソウデス。コレハ白イ本デスカ? イイエ、ソウデハアリマセン」
アラセ先生が拍手する。
「こりゃー、立派なもんだ。どっかで勉強したの?」
「大学で多少、日本語と中国語を」
アラセ先生が教壇に置いた名簿を見る。
「ドナルド・キーンくんか。あぁ、コロンビアか。さすがに頭脳明晰だねぇ」
ドナルドが照れる。
次の授業。
リリィとドナルドが別々の机に座って前を見ている。オーティスが先生と、教壇を挟んで日本語で話している。
「わいわい~、おめは小樽なのかー? 寒ぐであったべなぁ」
「寒かったですねぇ。鼻水が凍りましたよ」
「だはははは。わがるわー。わがる。おら青森だし、雪国はキツいばなー」
リリィとドナルドが尊敬の眼差しで見ている。オーティスが別の席に座りながら英語で話しかける。
「しかし、先生の日本語すごい訛りだね(笑)それで会話教えるの?」
先生がキョトンとして、英語で答える。
「オレ、訛ってる?」
オーティスが苦笑。先生が英語で自己紹介を始める。
「はじめまして。私はナカムラ・イチローです。日本の青森で生まれ育って、東北大学を卒業してからアメリカに来ました。ロサンゼルスでジャーナリストをしていました。英語は訛ってないだろ?」
オーティスが苦笑しながらうなづく。ナカムラ先生も笑う。
「君たちに会話を教えることになってるんだけど、上が言うには、君たちにとって会話はそんな重要じゃないらしいんだ。だから、ゆるーく行こう」
リリィが両手をあげて「イエーイ」と喜んだ。ナカムラ先生は微笑して、自分のカバンの中から白い本を出す。リリィに向けて本を見せながら、日本語で尋ねる。
「これは赤い本ですか?」
リリィが少し考える。
「いいえ」
「では、何色ですか?」
リリィが少し考える。
「シロです」
ドナルドとオーティスが拍手する。リリィが少し怒りながら、照れる。
「なによ。やめてよ。あたしだって、少しはできるのよ」
次の授業。
リリィとドナルドが別々の机に座って前を見ている。オーティスが先生と、教壇を挟んで日本語で話している。
「へぇー。キミは小樽なのか? 寒かっただろうなぁ」
「寒かったですねぇ。鼻水が凍りましたよ」
リリィがドナルドの隣の席に移ってきて、小声で話しかける。
「ねぇ。オーティスさ、同じ話してるよね?」
ドナルドがうなづく。リリィが続ける。
「牧師だから同じ話続けられるのかな?」
リリィがドナルドの肩を叩きながら、小さな声で爆笑する。ドナルドもちょっと笑う。
オーティスが自分の席に座ると、先生が英語で話し始めた。
「はじめまして。アシカガです。日本美術が専門で、ついこの間までカリフォーニア大学のロサンゼルス校で教えてたの。書き取りを教えるわよ。よろしくね」
アシカガ先生が一礼したので、3人も立ち上がって返礼する。
「じゃ、オーティスさん、今から言うことを黒板に書いてみて」
オーティスが立ち上がって黒板の前に立ったところで、アシカガ先生が言う。
「赤い箱」
オーティスは少し考えて黒板に書くが、「赤」と「箱」が何らかの抽象文字のようになる。アシカガ先生が驚く。
「あれ? キミ、書くのダメなの?」
オーティスが苦笑する。
「そうなんですよ。日本語の学校行ったの小学校の3年までなんで。ドナルドはできますよ。漢字好きだから」
アシカガ先生が興味深そうにドナルドを見る。
「へー。じゃ、ドナルドさん、書いてみて」
ドナルドが黒板の前に出てきて、悩みながら書く。アシカガ先生が言う。
「「赤い」はあってるけど、「箱」がちょっと違うわ」
アシカガ先生が正解を黒板に書く。ドナルドがそれをジッと見ている。
「「箱」は難しいですね。今日習った中で一番難しいです。それに、書いてみると違いますね。書くのは難しい」
アシカガ先生がニヤッと笑う。
「その通り。だけど、書いて覚えると忘れないんだ。だから、これからはたーくさん書いてもらうよ。そのうち、きっと、ボクのことが嫌いになるよ」
夜の食堂。リリィとドナルドとオーティスが食後の紅茶を飲みながら話をしている。ドナルドが苦笑する。
「やっぱ「書き取り」が難しかったなぁ。自分で考えないといけないからね」
オーティスが深くうなづく。
「ほんとだよー。カンジ、面倒くさいなー」
リリィが笑う。
「BIJがあんなこと行ってる」
オーティスが苦笑する。
「なんかさー、なまじ喋れるだけに、余計面倒なんだよねー。そのうちボクが偉くなったら、キミたち手伝ってくれな。読み書き担当で」
ドナルドとリリィが笑う。
「いいよ」
「逆に、あたしたちが偉くなったら、あんた手伝ってよ。おしゃべり担当で」
オーティスが楽しそう。
「もちろん!」
その時、向こうのドアからアラセ先生が入ってきて、食堂にいるみんなに大きな声で告げる。
「はーい、じゃ、映画見るからねー。みんな映写室行って-」
映写室に30人位の人がいる。左の後ろの方の席にリリィとドナルドとオーティスが並んで座っている。日本語の音声が聞こえている。リリィが小声でドナルドに尋ねる。
「これって字幕ないの?」
「ないみたいだね。スパルタ教育だねぇ。日本人を知るために参考にしろってことじゃないの?」
映画を見ながらオーティスが「はははは」と笑う。リリィがオーティスを睨む。オーティスがリリィの視線に気づく。
「なに?」
「いいわね。あんただけ楽しそうで」
オーティスが笑顔になる。
「いまさ、忘れてた日本語を急に思い出したんだ」
ドナルドが興味深そう。
「どんな言葉?」
「「応援する」って言葉。英語だと「Support」」
リリィがつぶやく。
「さーすがBIJ。エンジョイしてるわ」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる