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君が好きだというために
君がすきだというために②
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「ねえ、伊織君もう一回言ってくれない?」
「え?」
「だから、もう一回好きって言ってよ、一回だけじゃ足りない! それになんか私が言わしたみたいだったし!」
抱き着いたまま足をパタパタする星月さん。
けど、なんか改めてちゃんと言うのは……恥ずかしい。
「もう、恥ずかしがらないでよ! 私は言えるよ、『伊織君、好きだよ』」
耳元でささやかれて心地よいようなむず痒いような不思議な気分になる。
「ねえねえ、伊織君もう一回言ってよー! ねえねえ!」
肩をグルグルたたかれる。
わかった、それじゃあ、ちゃんと……。
「星月さんの笑顔が好き。ワクワクしたときのキラキラした目が好き。恥ずかしがってる顔も、悪いこと思いついたときのしたり顔も、自慢するときの「うわー待って待って!」
慌てた様子で真っ赤な顔で僕の口を手でふさぐ星月さん。
その手をやんわりどかす。
「まだまだあるよ、君の好きなとこ。寂しがり屋なところでしょ、でもいつも元気なところでしょ、いつも一生懸命なところでしょ……」
「ちょ、ちょっと待って。そんな急に言われるとその……バカぁ!」
「うわっ!?」
ポンと突き飛ばされてわちゃわちゃしてベッドに崩れる。
「……あ」
気づくと、星月さんを押し倒すような形になっていた。
「もう、伊織君重いし、それに……熱いよ」
「ごめん、すぐどけるから……」
「待って!」
どけようとして動かした手を星月さんにがっしりつかまれる。
星月さんの顔の前につんのめる。
「……その、なんていうか、その……伊織君ならいいよ」
「え?」
「だから、その、君なら何してもいいよって、君にならないされてもいいよって……もう、言わせないでよばかぁ……」
耳元でささやかれた熱い声。
突然の言葉に頭がぐるぐるして動かない。
上気する体温が、激しくなる息が、早くなる心臓の鼓動がこれが現実だと教えてくれる。
「も、もう、伊織君顔真っ赤だし、バクバクだし……もう、緊張しすぎだよ」
「だって、だって、こんなの初めてで……! それに君だって顔真っ赤だし……!」
「そ、それは……えい!」
星月さんの手が僕の頬を包み込む。
ポカポカの体温が伝わってくる。
「……伊織君のほっぺあったかい」
ニコッと笑う星月さんにこっちもほっぺに手をやる。
「……星月さんの方があったかいし、絶対に僕より……だから僕の勝ちだ」
そうしていると星月さんのほっぺがぷくーと膨らんだ。
「もう、伊織君そういうことじゃなくて……そのあの……ふざけてないでさ……」
「かっこいいとこ見せてよ」
そういってほほ笑む。
どきどきする鼓動は抑えられなくて、心臓は飛び出しそうで。
真っ赤になった顔はずっと熱くて、燃えそうで。
でも、でも、その笑顔に、その言葉に覚悟を決めて。
この気持ちを無駄にしたくなくて。
破裂しそうな心臓に大きく息を吸って顔を近づける。
嬉しそうに目を閉じた星月さんの唇に……
「ニャー――!!!」
「うわああ、ちょっとみかん何やってんの!」
突然の来訪者に一気に意識がそっちへ向かう。
「ニャー」と楽しそうに鳴くみかんとバツが悪そうに扉の向こうに立つお母さんの姿が目に入る。
「お母さん!?」
「いや、あの、その、わざとじゃないんだよ。その、伊織君ってなんかアレルギーとかあるのかなって、そういうの聞きたくて……あのその、ごめん、ごゆっくり!」
みかんを抱えて階段を走り去るお母さん。
「……もう、お母さん何してるのよ、もう……」
そう恨めし気にでもどこか爽やかにつぶやいた星月さんがうーんと背伸びをする。
「ごめんね、伊織君……また今度だね」
夕焼けみたいな真っ赤な顔で舌をペロッと出して笑った。
「え?」
「だから、もう一回好きって言ってよ、一回だけじゃ足りない! それになんか私が言わしたみたいだったし!」
抱き着いたまま足をパタパタする星月さん。
けど、なんか改めてちゃんと言うのは……恥ずかしい。
「もう、恥ずかしがらないでよ! 私は言えるよ、『伊織君、好きだよ』」
耳元でささやかれて心地よいようなむず痒いような不思議な気分になる。
「ねえねえ、伊織君もう一回言ってよー! ねえねえ!」
肩をグルグルたたかれる。
わかった、それじゃあ、ちゃんと……。
「星月さんの笑顔が好き。ワクワクしたときのキラキラした目が好き。恥ずかしがってる顔も、悪いこと思いついたときのしたり顔も、自慢するときの「うわー待って待って!」
慌てた様子で真っ赤な顔で僕の口を手でふさぐ星月さん。
その手をやんわりどかす。
「まだまだあるよ、君の好きなとこ。寂しがり屋なところでしょ、でもいつも元気なところでしょ、いつも一生懸命なところでしょ……」
「ちょ、ちょっと待って。そんな急に言われるとその……バカぁ!」
「うわっ!?」
ポンと突き飛ばされてわちゃわちゃしてベッドに崩れる。
「……あ」
気づくと、星月さんを押し倒すような形になっていた。
「もう、伊織君重いし、それに……熱いよ」
「ごめん、すぐどけるから……」
「待って!」
どけようとして動かした手を星月さんにがっしりつかまれる。
星月さんの顔の前につんのめる。
「……その、なんていうか、その……伊織君ならいいよ」
「え?」
「だから、その、君なら何してもいいよって、君にならないされてもいいよって……もう、言わせないでよばかぁ……」
耳元でささやかれた熱い声。
突然の言葉に頭がぐるぐるして動かない。
上気する体温が、激しくなる息が、早くなる心臓の鼓動がこれが現実だと教えてくれる。
「も、もう、伊織君顔真っ赤だし、バクバクだし……もう、緊張しすぎだよ」
「だって、だって、こんなの初めてで……! それに君だって顔真っ赤だし……!」
「そ、それは……えい!」
星月さんの手が僕の頬を包み込む。
ポカポカの体温が伝わってくる。
「……伊織君のほっぺあったかい」
ニコッと笑う星月さんにこっちもほっぺに手をやる。
「……星月さんの方があったかいし、絶対に僕より……だから僕の勝ちだ」
そうしていると星月さんのほっぺがぷくーと膨らんだ。
「もう、伊織君そういうことじゃなくて……そのあの……ふざけてないでさ……」
「かっこいいとこ見せてよ」
そういってほほ笑む。
どきどきする鼓動は抑えられなくて、心臓は飛び出しそうで。
真っ赤になった顔はずっと熱くて、燃えそうで。
でも、でも、その笑顔に、その言葉に覚悟を決めて。
この気持ちを無駄にしたくなくて。
破裂しそうな心臓に大きく息を吸って顔を近づける。
嬉しそうに目を閉じた星月さんの唇に……
「ニャー――!!!」
「うわああ、ちょっとみかん何やってんの!」
突然の来訪者に一気に意識がそっちへ向かう。
「ニャー」と楽しそうに鳴くみかんとバツが悪そうに扉の向こうに立つお母さんの姿が目に入る。
「お母さん!?」
「いや、あの、その、わざとじゃないんだよ。その、伊織君ってなんかアレルギーとかあるのかなって、そういうの聞きたくて……あのその、ごめん、ごゆっくり!」
みかんを抱えて階段を走り去るお母さん。
「……もう、お母さん何してるのよ、もう……」
そう恨めし気にでもどこか爽やかにつぶやいた星月さんがうーんと背伸びをする。
「ごめんね、伊織君……また今度だね」
夕焼けみたいな真っ赤な顔で舌をペロッと出して笑った。
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