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君がいないと

福引

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「……どこ行けばいいんだろう?」
星月家から帰る途中、僕は頭を悩ませていた。
こういう場面ではどのようなところに行くのが正解なんだろうか、僕の浅い人生経験ではわからない。
「あれ、伊織じゃない! おーい、伊織―!」
色々考えながら近くの商店街を歩いていると突然大声で僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。
声の方向を見てみると母さんがいた……なんで?
「ちょっと恥ずかしいよ、母さん。それになんでこんなとこにいるの」
「なんでって買い物に決まってるじゃない。有海ちゃんにここで福引がもらえるって聞いたから……ほら」
そういって自慢げに福引券を取り出す母さん。
有海ちゃんってのは真斗のお母さんだ、親同士も仲がいい。
「へー、福引ね……それ何がもらえるの?」
「えーとね、確か……地球館のペアチケットが特賞だったような……ちょっと何するの、伊織これお母さんのよ!」
母さんが何か騒いでるけど無視して僕は奪った希望の福引券を空に掲げる。
これだ!!!

「おじさん、これ1枚でお願いします」
商店街の真ん中で福引屋をやっているおじさんコンビに福引券を渡す。
狙いは1等地球館のペアチケットのみ!
ぐちぐち言ってたお母さんは「デートに行くから!」というとスンと黙った。恋愛脳嬉しい。
僕から福引券を受け取ったおじさんは僕の方をじっと見る。
僕何かしたでしょうか……
すこしドキドキしているとおじさんはフッと何か納得した様に息をつく。
「兄ちゃん、このガラガラは左に回すんだよ」
「重さん! いいのかい?」
おじさんの言葉に隣にいたおじさんが反応する。ややこしいな。
「ああ、今年の係は俺だからよ。俺はな全力で何かに向き合ってる若者を応援したいんだ。この兄ちゃんの目を見ろ……まっすぐな目をしてやがる、気に入った」
「ふっ……さすが重さんだ。じゃあ俺からいうことはない。兄ちゃん、ほら早く回しな」
そういって僕に回すように促してくる。
なんか僕が置いてけぼりにされてるんですけど。
「ほら、兄ちゃん左だ。右利きでも左で回すんだ! ほら、ほら!」
重さんに強く念押しされたので1等を懇願しながら左向きにガラガラを力強く回す。
ガラガラという大きな音を立てて出てきたのは金色に輝く丸い球で……!
「大当たりーーーーーーーーー!!!」
カランカランというきれいな鈴の音とともに重さんの大声が商店街中に響き渡った。

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