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シアルトが怖いことはなくなった。なくなったのは子供の私にとってはとても良かったことだと思う。けれどそれがずっと続けば厄介なことこの上ない。あまりにもシアルトが私に引っ付いて来るため、仲のいい人ができないのだ。
その引っ付いている……というのは物理的に。
「で、ん、か!離してくださいませ!」
「離れるなどもったいない!今このときのリアリーは今しか味わえないというのに!」
学園に入学してからひっつき虫のようにベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタ……夏は暑くて何度か不敬にも手が出てしまった。
……………喜ばれたけど。
そんな遠い記憶に気がそれこそ遠くなる。自分から私の元へ来る彼に他の令嬢にとられるなんてことはないと断言できるし、なんだかんだ好意を隠そうとしなくなったシアルトに私は不覚にも好意を抱いてしまったのだから。
いや、まあそれは決められた結婚を考えればいいことだけれど。
「リアリー?リアリー?」
「あ……すみません。少し考え事を」
「考え事って?まさか私以外の男ではないだろうね?ああ、それは大変だ。今すぐ殺さないと」
「違いますわ!」
こうも思い込みが激しいのも年々ひどくなっている気がする。というかいつの間に私はシアルトに後ろから抱き締められていたの?侍女はどこへ?
「違う……?なら女かな。それも私は許さないよ……?リアリーの頭の中を私以外が支配するなんて処刑ものだと思うんだ。それが人でなくても」
何とも恐ろしいほどの愛。私なんでこの人が好きなのかしら……なんて改めて思う。これほど私が好きなくせに変にネガティブなのもまた困り者だ。
「なら問題ないですね。陛下との過去を思い返していたので」
「過去を……そうか。だが、昔の私より今の私を見てほしい。昔の私に嫉妬してしまいそうだ。それに私のことは陛下じゃなくシアと呼ぶよう言っているだろう?」
昔の自分にすら嫉妬とはいささかやばすぎる気がしてならない。シアと愛称で呼ばないのは照れ臭いから。私はシアルトみたいに愛をひけらかすようなことはできそうにない。
「……私は仕事をする人が好きなの。今日陛下はお仕事をする気があって?」
だからこんなことで誤魔化して逃げる。
「もちろんする!」
そう言っては飛んでいくシアルトにほっとする。あんなに愛されてもいつだって私は平静を保つので精一杯。
誤魔化したからには夜逃げられないだろうなぁなんて諦めるしかない。彼がそれを逃すような簡単な男なら私は好きにならなかっただろう。
「シア……愛してるわ……ふふ、なんてね」
「リアリー!私も愛して……っぶへえぇぇっ」
「どこから現れるのよぉおぉぉ!」
部屋を飛んでいったシアルトは天井から現れ、私は驚きと照れのあまりにどついてしまう。しかし、反省はしない。
どう見ても彼が悪いから。仮にも国王が天井から現れないでほしいと思う私だった。
おわり
あとがき
あれ……終わった。殴って、終わった。あれ?ざらめさん……期待答えられましたかね?ネタ提供ありがとうございます!
その引っ付いている……というのは物理的に。
「で、ん、か!離してくださいませ!」
「離れるなどもったいない!今このときのリアリーは今しか味わえないというのに!」
学園に入学してからひっつき虫のようにベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタ……夏は暑くて何度か不敬にも手が出てしまった。
……………喜ばれたけど。
そんな遠い記憶に気がそれこそ遠くなる。自分から私の元へ来る彼に他の令嬢にとられるなんてことはないと断言できるし、なんだかんだ好意を隠そうとしなくなったシアルトに私は不覚にも好意を抱いてしまったのだから。
いや、まあそれは決められた結婚を考えればいいことだけれど。
「リアリー?リアリー?」
「あ……すみません。少し考え事を」
「考え事って?まさか私以外の男ではないだろうね?ああ、それは大変だ。今すぐ殺さないと」
「違いますわ!」
こうも思い込みが激しいのも年々ひどくなっている気がする。というかいつの間に私はシアルトに後ろから抱き締められていたの?侍女はどこへ?
「違う……?なら女かな。それも私は許さないよ……?リアリーの頭の中を私以外が支配するなんて処刑ものだと思うんだ。それが人でなくても」
何とも恐ろしいほどの愛。私なんでこの人が好きなのかしら……なんて改めて思う。これほど私が好きなくせに変にネガティブなのもまた困り者だ。
「なら問題ないですね。陛下との過去を思い返していたので」
「過去を……そうか。だが、昔の私より今の私を見てほしい。昔の私に嫉妬してしまいそうだ。それに私のことは陛下じゃなくシアと呼ぶよう言っているだろう?」
昔の自分にすら嫉妬とはいささかやばすぎる気がしてならない。シアと愛称で呼ばないのは照れ臭いから。私はシアルトみたいに愛をひけらかすようなことはできそうにない。
「……私は仕事をする人が好きなの。今日陛下はお仕事をする気があって?」
だからこんなことで誤魔化して逃げる。
「もちろんする!」
そう言っては飛んでいくシアルトにほっとする。あんなに愛されてもいつだって私は平静を保つので精一杯。
誤魔化したからには夜逃げられないだろうなぁなんて諦めるしかない。彼がそれを逃すような簡単な男なら私は好きにならなかっただろう。
「シア……愛してるわ……ふふ、なんてね」
「リアリー!私も愛して……っぶへえぇぇっ」
「どこから現れるのよぉおぉぉ!」
部屋を飛んでいったシアルトは天井から現れ、私は驚きと照れのあまりにどついてしまう。しかし、反省はしない。
どう見ても彼が悪いから。仮にも国王が天井から現れないでほしいと思う私だった。
おわり
あとがき
あれ……終わった。殴って、終わった。あれ?ざらめさん……期待答えられましたかね?ネタ提供ありがとうございます!
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