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それからだ。シアルトがだんだん怖くなくなってきたのは。

「て……つないでいい?」

「……っ勝手にしろ」

「う、うん」

まずは触れる努力をした。睨むように私を見る目付きが怖かっただけに恐る恐ると握った覚えがある。

(おおおおお落ち着け、俺!リアたんが怖がってるだろう!だが、だがぁあああぁあああっリアたんの手が!おててが!俺の手を掴んで!握って!)

あまりのギャップの凄さに離しそうになった。だって私を睨みながら不機嫌そうな顔で内心がこれよ?これ本当に心の中のことだよね?とまだ能力に目覚めてから短い私は半信半疑になるのも無理ないと思う。

しばらくそんな感じで毎日手を繋ぐことで心を読み取りながら自分の能力を隠し続けて……やっぱり信じられないから私は勝負に出た。

「でんか、あのね」

「なんだ?」

(相変わらずマイスイートハニーリアたんは可愛い!そんな上目遣いで見て俺の心臓を壊す気か?いや、もう壊れる寸前だ!リアたんは存在するだけで世界を征服できるに違いない!)

相変わらずの不機嫌顔であまりのバカみたいなはしゃぎように毎日聞いても信じられなかったのは仕方ないと思う。ギャップがすごすぎて。

「わたし、でんかとけっこん……したくない」

これは本当の気持ちだった。お父様がちゃんと読めてると言われてもシアルトを前にすれば心の声がやっぱり信じられなくて思いきって言うことにした。殿下が了承してくれればこんな悩む日々も終わると。

どちらにしても毎日怖い顔をしてるのだから私が気に入らないのだろうとか、心の中で本当に私を想ってくれるなら私のお願い叶えてほしいとかそんなことばかりが頭に浮かんでいた。

でも、私はその日に自らの能力を認めることになる。

「あやまはたさまなはたさひらま」

「え?」

言葉じゃない言葉を吐かれてぽかんとすればシアルトの顔は真っ青になっていき、初めての表情にいささか驚いてしまった。

「リアたん!」

「え」

そして更に追い討ちとばかりにリアたんと初めて口に出され固まれば

「おおおれ俺のどこが気に入らないんだ?なお、直すから、嫌いに、ならなら、ならないでくれ……っ!」

これである。

「いや、えっと……あの?」

これが心の声ならば気のせいだと冷静にいられただろう。でもその時は口に出されていて信じるしかなかった。

私、本当に心読めてるんだと。

その後はなんとかシアルトを宥めて自分が人に触れると心が読めるようになったことを話した。

「まままさか、心でマイスイートハニーとか……」

「きこえてました……」

「そんな、俺が……い、嫌で……?」

「いえ、それよりもまいにちにらまれてこわかったから……こころのこえは、ほんとうはきこえなくて、きらわれてるとおもったんです」

宥めた後もいつもより断然話しやすくなったシアルトに私は本音がぽろりと出る。それからだシアルトの心の声が表に出るようになり、今となったのは。
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