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下衆伯爵

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トールに言われるまではこんなほのぼのとした雰囲気で陛下と過ごせるとは思わなかったから改めて陛下をちゃんと見れたこの機会はなんだかんだよかったのかもしれない。

「くく……っあぁ………そういえば、伝えたいことがある」

笑いを誤魔化すようにして真面目な顔つきになった陛下。なんだかなぁと思いながらも顔の熱さも引いたのでこちらも真剣に聞く体制となる。

「伝えたいこととは……」

「まず結婚についてだが、まずはスモール家が治める領地の民に認めてもらうことから始めようと思う」

「陛下、お言葉ですが………そんなお暇はあるのですか?」

「時間は作るものだろう?」

「そう………ですね?」

国内とはいえ、城から離れてもいいのだろうかと考えていれば、自信たっぷりにそんなことを言われた。こういうところが暴君と言われる原因だったりするのだろうか?

まあ陛下がいいなら………いいのかな?

「それとコルトリアを愚かにも襲っておきながらスモール家を脅す下衆伯爵のことだが、思った以上に早く片付きそうだ」

「本当ですか!?」

この報告は素直に嬉しかった。下衆伯爵とは随分な言い様ではあるけど私からしてもその名に納得だし、誰も陛下を咎めないだろうからわざわざ指摘しようとも思わない。

陛下がどう片付けるのかはともかく、これで父の苦労が減ると思えば嬉しいものだ。あの伯爵が現れる度、民たちもギスギスしていたし。

「あの宰相がそれを知ってすでに罪を訴える準備も万端らしくてな。何より俺は暴君として誰もが知るところ。暴君らしくどう言い訳しようがねじ伏せてやるさ」

なんとも頼もしい。陛下が言えば偽証すらも真実にしそうな気がする。いや、それはよくないことではあるけど。でもあの伯爵に関しては私も怒っているのでしっかり反省してほしいと思うし、あの人のことでもう怖い思いはしたくないから徹底的にやってほしくもある。

「あの………罰としては何が………」

「一族根絶やし………」

「ええっ!?」

「………でもいいが、それは伯爵の一族すらも下衆な行いをしている場合に限ってだな。最もコルトリアを襲った下衆を許す気はない。身分を盾にしたんだ。身分で捩じ伏せて、生き地獄を見せてやる。処刑では生ぬるい」

陛下の方が私よりお怒りのようだ。なんだか大事にされているようでくすぐったい感じがする。

言ってることは素直に怖いと思うけれど、でも命を簡単にとろうとせず生きて償わせるようにするのは私も賛成だ。自業自得でも私をきっかけに人が死ぬなんてことになればどんな悪人でもきっと私は平気ではいられない気がするから。

「陛下……ありがとうございます」

「俺がしたくてしているだけだ。気にするな」

「それでも私は……」

陛下がここまでしてくれることに感謝せずにはいられない。

「わかっている。優しいな、コルトリアは」

そう言って感謝をさせてくれない陛下に、もしかしたら処刑にしないのは私のため?なんて思うのは自惚れが過ぎるだろうか。

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