12 / 27
混乱再び
しおりを挟む
「まさかすぐ会うことになるとはな、嬉しく思う」
陛下の謁見の場にようやく通され、震える私たちが礼をとる前に先手を切って話されたのは陛下。その様子から不機嫌だと聞いていたが、そんな風には見えない。にやりと笑う姿は震えが増すぐらいには怖いが、そこまで不機嫌そうには見えなかった。
「ところで………その異様に背が高い男はなんだ?」
なーんて私の勘違いだったのを数秒で理解する。不機嫌どころかすごく怒っていると。ずももも………と陛下の周りには黒いオーラでも漂っているような気さえした。そしてそのオーラを背負ったかと思えば、そのまま何故かトールを睨み付ける。私でもこんなに怖いのにまだ幼いトールは直接睨まれて耐えられるのかしら………と心配になったが………
「お初お目にかかります。私はスモール家の長男トール・スモールと申します」
平気そうだった。なんなら緊張ひとつ感じさせない様子さえ見せている。来る前はあんなに青ざめていた様子が嘘のように。しっかりものだと思っていたけどまさかここまで………男の子の成長は早いなぁ………なんてことを弟相手に思う。
「長男………?………随分背が高い兄だな……?」
まあ私たちを先に見た後にトールを知れば大抵の人は混乱する。そこまで動揺を見せない辺りはさすが陛下だ。混乱のお陰で黒いオーラは引っ込んだご様子に内心ほっと息を吐く。
「よく間違われるのですが弟です」
「弟………?」
「はい、弟です。姉の二歳下になります」
「二歳もか………!?」
「なので成人もまだです」
「…………」
陛下が思考停止したようだ。私たちからすればそこまで?となるが、大抵の人は動揺しまくったり、陛下と同じように思考停止したりするので慣れたものである。陛下の周りにいた御付きの人たちもえ?え?とばかりに視線がトールや私たちを何度も見比べているのを感じた。
陛下にも混乱を与えたことにさすがのトールも気まずそうに苦笑する。そしてようやく陛下の思考が動き出したのは数分経ったか経たないかぐらい。ひそかな平和な時間だったと思う。
「……失礼した」
「いえ、よくあることなので」
「そうか………で、宰相襲撃の件についてだったな。このせいでコルトリアの結婚手続きを宰相に頼んでいたのもあり、コルトリアとの籍がまだ入れられていない。にしても発覚したのはコルトリアらが帰った後だ。どう知った?」
陛下は特に私たちを疑う様子はなく、淡々と疑問だけを私たちにぶつけた。でもこの陛下の様子から民がまだ口を割らずに酷い目にあってる可能性が浮かぶ。自業自得とはいえ、私のためにと思うと居たたまれない。
「あうあうあう」
「あー……また怖がらせたか……?あうあう語は生憎習っていなくてだな……」
父は説明しようとしたのだろうが、緊張と恐怖のあまりあうあうマシーンになってしまったようだ。私も今口を開いたら同じようになるから気持ちはよくわかる。にしても皇帝にもなるとあうあう語が存在するのだろうか?初めて知った。
「陛下、父に代わり私が話してもいいでしょうか?」
「本当に成人してないのか……?」
「え?」
「ごほん……何でもない。許可する」
「ありがとうございます。まず知った理由ですが………」
この場で誰よりも冷静に見えるトールに陛下もつい再度確認してしまったのだろう。本当に私の弟はよくあんな普通に対応できるなと感心してしまう。そんなわけでこれからどうなるかわからない時間が、トールの説明によって幕を開けていく………。
陛下の謁見の場にようやく通され、震える私たちが礼をとる前に先手を切って話されたのは陛下。その様子から不機嫌だと聞いていたが、そんな風には見えない。にやりと笑う姿は震えが増すぐらいには怖いが、そこまで不機嫌そうには見えなかった。
「ところで………その異様に背が高い男はなんだ?」
なーんて私の勘違いだったのを数秒で理解する。不機嫌どころかすごく怒っていると。ずももも………と陛下の周りには黒いオーラでも漂っているような気さえした。そしてそのオーラを背負ったかと思えば、そのまま何故かトールを睨み付ける。私でもこんなに怖いのにまだ幼いトールは直接睨まれて耐えられるのかしら………と心配になったが………
「お初お目にかかります。私はスモール家の長男トール・スモールと申します」
平気そうだった。なんなら緊張ひとつ感じさせない様子さえ見せている。来る前はあんなに青ざめていた様子が嘘のように。しっかりものだと思っていたけどまさかここまで………男の子の成長は早いなぁ………なんてことを弟相手に思う。
「長男………?………随分背が高い兄だな……?」
まあ私たちを先に見た後にトールを知れば大抵の人は混乱する。そこまで動揺を見せない辺りはさすが陛下だ。混乱のお陰で黒いオーラは引っ込んだご様子に内心ほっと息を吐く。
「よく間違われるのですが弟です」
「弟………?」
「はい、弟です。姉の二歳下になります」
「二歳もか………!?」
「なので成人もまだです」
「…………」
陛下が思考停止したようだ。私たちからすればそこまで?となるが、大抵の人は動揺しまくったり、陛下と同じように思考停止したりするので慣れたものである。陛下の周りにいた御付きの人たちもえ?え?とばかりに視線がトールや私たちを何度も見比べているのを感じた。
陛下にも混乱を与えたことにさすがのトールも気まずそうに苦笑する。そしてようやく陛下の思考が動き出したのは数分経ったか経たないかぐらい。ひそかな平和な時間だったと思う。
「……失礼した」
「いえ、よくあることなので」
「そうか………で、宰相襲撃の件についてだったな。このせいでコルトリアの結婚手続きを宰相に頼んでいたのもあり、コルトリアとの籍がまだ入れられていない。にしても発覚したのはコルトリアらが帰った後だ。どう知った?」
陛下は特に私たちを疑う様子はなく、淡々と疑問だけを私たちにぶつけた。でもこの陛下の様子から民がまだ口を割らずに酷い目にあってる可能性が浮かぶ。自業自得とはいえ、私のためにと思うと居たたまれない。
「あうあうあう」
「あー……また怖がらせたか……?あうあう語は生憎習っていなくてだな……」
父は説明しようとしたのだろうが、緊張と恐怖のあまりあうあうマシーンになってしまったようだ。私も今口を開いたら同じようになるから気持ちはよくわかる。にしても皇帝にもなるとあうあう語が存在するのだろうか?初めて知った。
「陛下、父に代わり私が話してもいいでしょうか?」
「本当に成人してないのか……?」
「え?」
「ごほん……何でもない。許可する」
「ありがとうございます。まず知った理由ですが………」
この場で誰よりも冷静に見えるトールに陛下もつい再度確認してしまったのだろう。本当に私の弟はよくあんな普通に対応できるなと感心してしまう。そんなわけでこれからどうなるかわからない時間が、トールの説明によって幕を開けていく………。
11
お気に入りに追加
4,093
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
婚姻初日、「好きになることはない」と宣言された公爵家の姫は、英雄騎士の夫を翻弄する~夫は家庭内で私を見つめていますが~
扇 レンナ
恋愛
公爵令嬢のローゼリーンは1年前の戦にて、英雄となった騎士バーグフリートの元に嫁ぐこととなる。それは、彼が褒賞としてローゼリーンを望んだからだ。
公爵令嬢である以上に国王の姪っ子という立場を持つローゼリーンは、母譲りの美貌から『宝石姫』と呼ばれている。
はっきりと言って、全く釣り合わない結婚だ。それでも、王家の血を引く者として、ローゼリーンはバーグフリートの元に嫁ぐことに。
しかし、婚姻初日。晩餐の際に彼が告げたのは、予想もしていない言葉だった。
拗らせストーカータイプの英雄騎士(26)×『宝石姫』と名高い公爵令嬢(21)のすれ違いラブコメ。
▼掲載先→アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
身代わり皇妃は処刑を逃れたい
マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」
新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。
1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。
2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。
そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー…
別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる