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エンド後ストーリー~共通編~【完結、分岐エンドに続く】

懺悔と真実~元婚約者視点~

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どうすればよかったのだろう。今更考えても仕方ないことばかりが頭の中で浮かぶのはきっと人生最大の後悔というものを味わったからだ。










 
 

初恋で、婚約者だった相手が処刑された。犯罪にまで手を出していたけれど、それでも惚れた弱みか、いつか改心してくれればなんてそんなことを思っていた。

婚約者は、結婚する相手は君がいいなんて言っても君は信じてくれなくて、まるで仕組まれたように今の婚約者に出会い、色々目の前で巻き込まれる彼女を助けているうちに、周りから将来の王妃は君じゃなくて今の婚約者が相応しいなんて言われ始めて………。

何故こんなことになってしまったんだろう。マリアの母が亡くなる前は笑顔が可愛くて、他人ばかりを心配してたまには自分のこともなんて思うほどに優しい子だったのに。

いつの間にか人を傷つけるような言動ばかりが目立つようになり、マリアの悪評が広まるのに時間はかからなかった。

ついには犯罪まがいのことから、殺人未遂まで………これ以上自分を貶めるマリアを見たくなくて処刑となれば反省して昔の彼女に戻ってくれるんじゃないかとそう考えた。

もしかしたら……考えたくはないけど、僕との結婚が嫌になったのかもしれない。それなら自由にしてあげるとばかりに婚約破棄までして。

なのに最後までマリアは自分を貫き、反省も後悔も見せず、僕に助けを求めることすら最後までせず公開処刑された。

『死にたくない!』

そう叫ぶ最後に言った言葉の中で、そのマリアの言葉だけが頭から離れない。最後まで涙ひとつ流さず言い切った言葉の中で、それだけは本音のように思えた。

だからこそわからない。死にたくないと言うなら見てくれだけでも反省を見せなかった理由が。

これではまるで死に急いでいるようではないか。何故、何故と考えたところでマリアは生き返らないというのに、僕は自分の判断が本当に間違っていなかったのかと未だに自問自答する。

時に教会で答えを教えてくれない神に何度も問いかけるようにマリアを想う。そんなある日、僕は聞いてしまった。真実を知るものだろう人の懺悔を。

「マリア様、私は不甲斐ない医者です。いくら調べても調べてもマリア様に生きる希望を与えてはあげられませんでした。優しいマリア様は気にしないでと言ってくれるでしょう。しかし、私は医者です。医者にだってプライドはあります。治せない病などないとそう考えて毎日を生きています。少しでも人生を最後まで生きれる人たちを増やすためにも。けれど、私が医者としてまだまだだったばかりに、貴女様を助けられませんでした。もう未来の死に怯えなくていいという安心感ひとつ与えられませんでした。わたし、は………わた、し……はっ!」

あれはエンブレム家の主治医ではなかったか。マリアの母の診察にて幼い頃、何度か会った覚えがある。とはいえ、人の祈り、懺悔を邪魔するわけにはいかないと去ろうと考えていたのに、マリアという名前が出たことで足はすぐに止まった。

盗み聞きなどよくないことだ。だけど、僕の知らない真実を語られているようで、足は棒のように一歩も動きはしない。

聞けば聞くほど医者の言葉は僕の心を蝕んだ。

生きる希望?

治らない病気?

未来の死?

ひとつひとつ嵌まっていくピースは、ひとつの真実に近づいていっている気がした。

決定的な言葉を言われたわけではないけれど懺悔からそうとしか考えられない。マリアのことは知りたいと思っていたのに、今は知りたくないと思う自分がどこかにいる。

だけど、知るべきだと心の中で叫ぶ自分がいた。

「懺悔中失礼いたします。盗み聞きしてしまったこと、謝罪いたします。ですが、どうか、貴方が知るマリアについて教えてください。エンブレム公爵家の主治医カーシィさん」

「! 王太子殿下……よりにもよって………貴方様が………」

「それは……どういう意味ですか」

カーシィという名前をなんとか思い出したものの、真実を問いただそうとすればまるで僕には知られたくなかったかのようにカーシィ医師は表情を歪めた。

そしてどういうことかと言ったもののどうするべきかとばかりに続く沈黙。卑怯かもしれないが、自分の身分を使って命令してでも聞き出すべきかと考えたときに第三者の言葉が沈黙を破った。

「全ての出会いは神様による巡り合わせです。知られるべきでなかった人と出会うのもまた運命。神様のお導きです。正しいと思う道ではなく、そうするべきだと自分の気持ちに従うことこそ神様は願うでしょう。この世は正しいことばかりではありません。道が正解でも不正解でも人の人生は続きます。真実とは時に残酷ですが、知ることによって人は前に進める時もあるのですよ」

全てを見透かしたようなその人はこの教会の神父だった。神父は神様の代理で人の懺悔を聞いて、時に必要な人には代理として言葉を与えるという。もしかすると懺悔を聞く中でマリアの真実を知る一人なのかもしれない。

けれど神父は懺悔を決して人には伝えないことは世界での決まりごと。だからこそ神父を問いただせはしない。結局はカーシィ医師に聞くしかないのだ。

こうして真実について口を割らせる手伝いをしにきてくれたようだから、それだけでも十分と考えるべきだろう。

後は自分が頑張らなければ。

「お願いします。ずっとマリアの夢を見るんです。僕は何か間違えたような気すらしてるのにそれがなんなのかすらわからなくて前に進めないんです。婚約者だったからじゃない。誰よりも愛した初恋の人だったからこそ、僕は真実を知りたいんです」

真実を聞いたからと言って前に進めるかもわからなければ、それをマリアが望んでるかもわからない。だけど、それでも僕は未来の国王だから立ち止まってばかりはいられない。ここできっぱりとマリアのことを断ち切る必要があるんだ。忘れたくないという自分の心の叫びに蓋ができるように。

「ああ……マリア様は失敗してしまったんですね。唯一の願いすら……」

「何を言って……」

「いえ、いいでしょう。マリア様との約束を破ってはしまいますかが、マリア様の本来の目的を無下にしかねないですから……マリア様のために王太子殿下にはお話ししましょう。悲しい願いを持って亡くなった少女のお話しを」

そう僕の望みを叶えてくれる言葉はとても震えていた。
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