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「エミリー嬢、貴女はイチ様の様子に何か疑いをもたなかったのですか?……いや、疑いは持っていましたね、血だらけのイチ様と会っていたわけですし。でもそれを踏まえて今日まで何故誰にも伝えなかったんですか?」
「それ、は………」
「ふふ……っ随分おかしなことを言うのね?」
私の言葉に返事をしようとしたエミリー嬢を遮ったのはミリーナ様だった。静かに佇んでいた何を考えているのかわからなかったミリーナ様が、ようやく本性を表したかのように歪んだ笑みを見せながら。
「その原因の貴女が言うんですか?」
ミリーナ様の異様な様子に後退りそうになりながらも負けじと言葉を返す。
「原因?みんな自分の意思でしたことよ。自ら不幸を被ろうとするなんて、本当にバカで憐れで……可哀想よねえええ?ああ、思い出すだけでもぞくぞくするわ……!」
数分前までとはあまりに別人。二重人格と言われても信じてしまいそうなくらいにミリーナ様の様子はあまりにも異常で、異質な存在感を露にしていた。
「頭、おかしいんじゃないですか」
その存在感に思わず呟いた言葉。ただ思ったことが口に出ただけ。けれど、誰が見てもそう思うだろう言葉。しかし、ミリーナ様はその呟きに笑いを止め、無表情でこちらを見たと思えば次は怒りを露にし始めた。
「おかしい?私がおかしい?私を異常者だと言いたいわけ……?私は普通よ!みんなみんな私がおかしいだなんだとうるさいのよ!!私からしたらおかしいのはあんたたちだわ!周りの目を気にして影では人の悪口を言いながら目の前にいれば何も悪いことは言ってませんみたいにへらへら笑いで媚を売ろうとして、いざ本当のことを言えばすっとぼけて、それに怒り狂えば異常者扱い。それでいい気味だと笑うの……。人の不幸を笑うものが幸せなのよ?それを異常だと、おかしいと言う方がおかしいのよ。綺麗事を並べた偽善者という……ね」
まるで溜まっていた何かを吐き出すように言うミリーナ様。ミリーナ様にも過去色々あったのかもしれない。そう思えたけど、だからといって許されることは何一つない。それは同じく罪を犯してしまったゼロにも言えることかもしれないけれど……それでも自分の幸せのために他人を陥れるのは間違っている。
何よりも命を笑う人に幸せを語ってほしいとは思わない。
「貴女みたいな人になるくらいなら偽善者の方がマシです。貴女にとっての普通は私たちにとって異常で間違いないですよ。貴女がいくら否定しようと、貴女は頭のおかしい人です。命を笑う貴女を同じ人間とすら思いたくありません」
「ああああああっ!偽善者が鬱陶しい!鬱陶しい!鬱陶しい!あんたに私の何がわかるのよ!」
「頭がおかしいことだけしかわかりませんけど?」
最初こそ怯えてしまった部分はあるけれど、相手が冷静を欠けばなんてことはない。寧ろ冷静になる自分がいた。
「それ、は………」
「ふふ……っ随分おかしなことを言うのね?」
私の言葉に返事をしようとしたエミリー嬢を遮ったのはミリーナ様だった。静かに佇んでいた何を考えているのかわからなかったミリーナ様が、ようやく本性を表したかのように歪んだ笑みを見せながら。
「その原因の貴女が言うんですか?」
ミリーナ様の異様な様子に後退りそうになりながらも負けじと言葉を返す。
「原因?みんな自分の意思でしたことよ。自ら不幸を被ろうとするなんて、本当にバカで憐れで……可哀想よねえええ?ああ、思い出すだけでもぞくぞくするわ……!」
数分前までとはあまりに別人。二重人格と言われても信じてしまいそうなくらいにミリーナ様の様子はあまりにも異常で、異質な存在感を露にしていた。
「頭、おかしいんじゃないですか」
その存在感に思わず呟いた言葉。ただ思ったことが口に出ただけ。けれど、誰が見てもそう思うだろう言葉。しかし、ミリーナ様はその呟きに笑いを止め、無表情でこちらを見たと思えば次は怒りを露にし始めた。
「おかしい?私がおかしい?私を異常者だと言いたいわけ……?私は普通よ!みんなみんな私がおかしいだなんだとうるさいのよ!!私からしたらおかしいのはあんたたちだわ!周りの目を気にして影では人の悪口を言いながら目の前にいれば何も悪いことは言ってませんみたいにへらへら笑いで媚を売ろうとして、いざ本当のことを言えばすっとぼけて、それに怒り狂えば異常者扱い。それでいい気味だと笑うの……。人の不幸を笑うものが幸せなのよ?それを異常だと、おかしいと言う方がおかしいのよ。綺麗事を並べた偽善者という……ね」
まるで溜まっていた何かを吐き出すように言うミリーナ様。ミリーナ様にも過去色々あったのかもしれない。そう思えたけど、だからといって許されることは何一つない。それは同じく罪を犯してしまったゼロにも言えることかもしれないけれど……それでも自分の幸せのために他人を陥れるのは間違っている。
何よりも命を笑う人に幸せを語ってほしいとは思わない。
「貴女みたいな人になるくらいなら偽善者の方がマシです。貴女にとっての普通は私たちにとって異常で間違いないですよ。貴女がいくら否定しようと、貴女は頭のおかしい人です。命を笑う貴女を同じ人間とすら思いたくありません」
「ああああああっ!偽善者が鬱陶しい!鬱陶しい!鬱陶しい!あんたに私の何がわかるのよ!」
「頭がおかしいことだけしかわかりませんけど?」
最初こそ怯えてしまった部分はあるけれど、相手が冷静を欠けばなんてことはない。寧ろ冷静になる自分がいた。
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