主人の僕を悪役にはさせません？何を言っているかわからないけどうちの従者は有能でやばい人～スラムの子を拾った結果～

例えそうだとしても～ループ公爵家長男視点～

エンドに負担をかけてしまったことを詫びてその日は城を後にした。最後の片付けをするために。

放置をしても結果は変わらない。だが、これは私自身が片付けたい案件だ。あえて証拠等を提示したのはループ家を完全に途絶えさせたいがため。でなければ母のような犠牲者がまた未来に現れてしまうだろう。

父が母を一方的な愛で縛り付け不幸にした事実を知って、やっぱりと思わずにはいられなかった。母が時折泣いていたのを子供ながらに私は見ていたから。

その理由を聞いてしまった日があったから。

『ははうえ、なにかつらいことでも……』

『……っ！勝手に入ってこないで！』

初めて優しき母が怒鳴った日を私が忘れることはないだろう。私を恨むかのような目。きっと私は父に似ていたから私を通して父を見ていたのかもしれない。

だけど母はすぐはっとしたように泣きながら私を抱き締めに走ってくれた。

『ごめんなさい……違うのに！ごめんなさい……っ』

『いえ、ぼくもかってにはいってすみません』

あの日のことは母のためにも思い返して話すようなことはしなかった。何が違うのか、何に謝っていたのか今ならわかる。優しい母はきっと恨みたいほどに嫌いな人物との子でもある私を愛そうとしてくれていたのだろう。

だけど、無理で。父とは違うとわかっていても………。

愛されてなかったと知った今でも私はエンドを産んだ母を恨む気などならない。寧ろ、愚かな父とでできた私によく優しくしてくれたものだと愛を注ごうと頑張ってくれたんだと感謝すらしている。

だから私はまともでいられるのだと。残念ながらもうひとりはそうではなかったが。

母が愛して産んだのがエンドだったと言うなら、私はもはや父の味方ではいられない。あんな愚かな父でも家族で決して嫌いにはなれないが、私たち子のために父と仲良く見せていた母、人生を壊された母の最後の希望がエンドというなら。

母が恨んだのが父というなら‥‥‥私は母の復讐を代わりにし、母とエンドが苦しんだ分エンドがループ家を気にしなくてもいいように全てを終わらせよう。

「母上、せめて父に従わなかったなら……エンドに自分の意を貫いて優しくできていたなら死後は半分が貴女の憎む血であれど愛していただけただろうか？」

今更悔いても仕方がないことだが。私にできるのは愚かな行いを許したループ家の血を絶やすこと。母を殺したのはエンドではなくループ家なのだから。

だというのにエンドに罪をなすりつけ、殺そうとしたんだからもちろん殺される覚悟もあるのだろう。もちろん全てを片付けた後、私もまた死ぬ覚悟はしているさ。

もう少しだから今はゆっくり眠っていてくれ、愛しき弟エンド。