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許可
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それからおじさんは屋敷に入る前まで運んでくれた。
「これ以上は怪しまれたら敵わんからな。屋敷の人間に頼みな」
「ありがとう、おじさん」
「また困ったら助けてやる」
くしゃりと髪をわし掴むように撫でられ、にかっと笑うとおじさんは去っていった。名前はもちろん聞いたが教えてもらえず初めて人に優しくされて胸がぽかぽかと温かくなったが、まずはスラムの子が優先だ。
嫌がられたが、それでも僕も公爵家の息子ではあるので門前で警護していた兵に僕の部屋までスラムの子を連れていってもらい、侍女を呼んで簡単な手当てもしてもらった。
スラムの子の目が覚めるまで、あのおじさんにまた会えるかな、この子は僕を嫌な目で見ない人となってくれるかなとたくさんの考えが頭に浮かぶ。目が覚めたらお風呂に入れてそれでそれでと考えていればノックの音。
「はい、どうぞ………」
屋敷内では僕が何か頼んだとき以外滅多に人が部屋に来ることはないためびくびくとしながらも入室の許可をすれば入ってきたのは怖い顔をした父。
「平民ならいざ知らず、スラムの子をうちに招くとは……」
きっとも何もスラムを運んでくれた兵か手当てをした侍女が父に話したのだろう。スラム街に行ったことはもちろんバレているだろうし、スラムの子というのは一目瞭然。スラムの人を人間以下として見ている父が怒るのは簡単に予想できていたことだが、怖いものは怖い。
「あの、この子に親がいなかったら、じゅ、従者に、してもいいです、か?」
それでも僕の考えを現実にするには屋敷の主である父の許可は必須。声を震わせ噛みながら思い付いたスラムの子を従者にしたい願いをもって父に聞く。
「スラムの人間を従者に?」
父から低い声が室内に響く。やはり難しいのだろうか?でも僕だって限界なのだ。母を知るものしかいないこの屋敷にいることが。だから僕はスラムの子を自分の救いとして傍に置きたいのだ。親の所へ帰りたいというならもちろん強制こそしないが。
それに必ずしも救いになるなんて思ってもいない。でも、それでも僕は誰かと関わりたい。人がいるのにひとりというこの環境から脱したかった。
「ふん、貴様にはスラムみたいな人間以下の従者が似合いか。従者にするのは勝手だがそれは貴様専属、専属ならば貴様が面倒を見ろ。私はそれに対して給金は出さんし、盗みを働いたり犯罪を侵すようなら容赦なく警備へ付き出して二度と日の目を浴びせぬからな」
「は、はい……!」
まさか許可がもらえるとは思わなかったため思わず笑顔で返事をしてしまえば父は僕を睨み付けて舌打ちをしながら部屋を出ていってしまった。とにもかくにも後はスラムの子の意思次第だが希望が持てたことに僕はさらに未来の明るい想像を頭の中に浮かべるのだった。
「これ以上は怪しまれたら敵わんからな。屋敷の人間に頼みな」
「ありがとう、おじさん」
「また困ったら助けてやる」
くしゃりと髪をわし掴むように撫でられ、にかっと笑うとおじさんは去っていった。名前はもちろん聞いたが教えてもらえず初めて人に優しくされて胸がぽかぽかと温かくなったが、まずはスラムの子が優先だ。
嫌がられたが、それでも僕も公爵家の息子ではあるので門前で警護していた兵に僕の部屋までスラムの子を連れていってもらい、侍女を呼んで簡単な手当てもしてもらった。
スラムの子の目が覚めるまで、あのおじさんにまた会えるかな、この子は僕を嫌な目で見ない人となってくれるかなとたくさんの考えが頭に浮かぶ。目が覚めたらお風呂に入れてそれでそれでと考えていればノックの音。
「はい、どうぞ………」
屋敷内では僕が何か頼んだとき以外滅多に人が部屋に来ることはないためびくびくとしながらも入室の許可をすれば入ってきたのは怖い顔をした父。
「平民ならいざ知らず、スラムの子をうちに招くとは……」
きっとも何もスラムを運んでくれた兵か手当てをした侍女が父に話したのだろう。スラム街に行ったことはもちろんバレているだろうし、スラムの子というのは一目瞭然。スラムの人を人間以下として見ている父が怒るのは簡単に予想できていたことだが、怖いものは怖い。
「あの、この子に親がいなかったら、じゅ、従者に、してもいいです、か?」
それでも僕の考えを現実にするには屋敷の主である父の許可は必須。声を震わせ噛みながら思い付いたスラムの子を従者にしたい願いをもって父に聞く。
「スラムの人間を従者に?」
父から低い声が室内に響く。やはり難しいのだろうか?でも僕だって限界なのだ。母を知るものしかいないこの屋敷にいることが。だから僕はスラムの子を自分の救いとして傍に置きたいのだ。親の所へ帰りたいというならもちろん強制こそしないが。
それに必ずしも救いになるなんて思ってもいない。でも、それでも僕は誰かと関わりたい。人がいるのにひとりというこの環境から脱したかった。
「ふん、貴様にはスラムみたいな人間以下の従者が似合いか。従者にするのは勝手だがそれは貴様専属、専属ならば貴様が面倒を見ろ。私はそれに対して給金は出さんし、盗みを働いたり犯罪を侵すようなら容赦なく警備へ付き出して二度と日の目を浴びせぬからな」
「は、はい……!」
まさか許可がもらえるとは思わなかったため思わず笑顔で返事をしてしまえば父は僕を睨み付けて舌打ちをしながら部屋を出ていってしまった。とにもかくにも後はスラムの子の意思次第だが希望が持てたことに僕はさらに未来の明るい想像を頭の中に浮かべるのだった。
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