4 / 22
3
しおりを挟む
「い……っは、離せ!」
「はいよ」
「な……っ」
リドル様は殿下の手首を掴む形でエヴァン様を庇い、その掴む力が強かったのだろう。殿下の顔は痛みで歪められ引っ張って離そうと試みたせいか、簡単に離されたことで誰にも支えられることなく尻餅をつく。
その様子にくすくすと笑う声。皆様は最初から笑顔だったけれど、こんな笑う声までは出ていなかった。
「ユーザ様!」
ただ一人だけは殿下に駆け寄ったが。
「助かったよ~、リドル」
「気にすんな」
そんな様子を気にもせず攻略対象のお二人は元々仲はいいのか、お礼を言っては特に気にした素振りを見せないと気安い関係が伺える。
乙女ゲームではヒロインの取り合いで優等生もどきのチャラ男、不良騎士と一番喧嘩していた二人だったため不思議な気分だ。
「り、リドル……お前まで!お前たちなどもはや私の側近に相応しくない!貴様らも笑うなぁあぁぁ!」
ようやくリアンヌの手を借りながら立ち上がっては顔をこれでもかと真っ赤にして怒鳴り散らす殿下。そんな中、だんだんと何故こんな人を好きになっていたのだろう?と思い始める。
ラフィーナ様の気持ちに釣られていたのだろうか?……もしそうだとしてラフィーナ様がこんな殿下を見ても好きでいられたのならそれは違うだろう。それは誰にもわからないこと。
私としてはヒロインみたいに今の殿下を見て好きだった気持ちを保つことはできず冷めていくばかりだ。ヒロインと私では立場が違えど、それはそれとして涙した時間が無駄に感じるほどに冷めてしまっている。結局私の殿下への想いはその程度だったのかもしれない。
王とは、民の言葉を傾けるべきで自分が納得いかないからと喚き散らすのは違う。いつでもどんなときでも冷静に、何故そんな事態になっているのか見極めて話をするべきだ。
なのに今の殿下はただ自分が納得いかないからと身分を、権威を振りかざそうとしているようにしか見えない。
その地位は民あってのことで決して振り回していいものではないと言うのに。
「殿下、貴方には失望しました」
気がつけばそんな言葉が出ていた。何かずっと抱えていたわだかまりがすぅ……っとなくなっていくようなそんな感じに、私は悟る。
私はこの国を、民を愛していることに。
殿下を通して国を見ていた。だからこそ王妃として認められなかったことが国から、民からも見放されたようで辛かったのだと。でも今の殿下は愛する国から見放されようとしている存在。それはまだ私は国から、国を作る民から見放されていないのではないかと言う希望をもたらしてくれた。
次は泣いたりなんかしない。悪役令嬢ラフィーナ様のように堂々とするんだと希望は私の背中を押してくれた。
「はいよ」
「な……っ」
リドル様は殿下の手首を掴む形でエヴァン様を庇い、その掴む力が強かったのだろう。殿下の顔は痛みで歪められ引っ張って離そうと試みたせいか、簡単に離されたことで誰にも支えられることなく尻餅をつく。
その様子にくすくすと笑う声。皆様は最初から笑顔だったけれど、こんな笑う声までは出ていなかった。
「ユーザ様!」
ただ一人だけは殿下に駆け寄ったが。
「助かったよ~、リドル」
「気にすんな」
そんな様子を気にもせず攻略対象のお二人は元々仲はいいのか、お礼を言っては特に気にした素振りを見せないと気安い関係が伺える。
乙女ゲームではヒロインの取り合いで優等生もどきのチャラ男、不良騎士と一番喧嘩していた二人だったため不思議な気分だ。
「り、リドル……お前まで!お前たちなどもはや私の側近に相応しくない!貴様らも笑うなぁあぁぁ!」
ようやくリアンヌの手を借りながら立ち上がっては顔をこれでもかと真っ赤にして怒鳴り散らす殿下。そんな中、だんだんと何故こんな人を好きになっていたのだろう?と思い始める。
ラフィーナ様の気持ちに釣られていたのだろうか?……もしそうだとしてラフィーナ様がこんな殿下を見ても好きでいられたのならそれは違うだろう。それは誰にもわからないこと。
私としてはヒロインみたいに今の殿下を見て好きだった気持ちを保つことはできず冷めていくばかりだ。ヒロインと私では立場が違えど、それはそれとして涙した時間が無駄に感じるほどに冷めてしまっている。結局私の殿下への想いはその程度だったのかもしれない。
王とは、民の言葉を傾けるべきで自分が納得いかないからと喚き散らすのは違う。いつでもどんなときでも冷静に、何故そんな事態になっているのか見極めて話をするべきだ。
なのに今の殿下はただ自分が納得いかないからと身分を、権威を振りかざそうとしているようにしか見えない。
その地位は民あってのことで決して振り回していいものではないと言うのに。
「殿下、貴方には失望しました」
気がつけばそんな言葉が出ていた。何かずっと抱えていたわだかまりがすぅ……っとなくなっていくようなそんな感じに、私は悟る。
私はこの国を、民を愛していることに。
殿下を通して国を見ていた。だからこそ王妃として認められなかったことが国から、民からも見放されたようで辛かったのだと。でも今の殿下は愛する国から見放されようとしている存在。それはまだ私は国から、国を作る民から見放されていないのではないかと言う希望をもたらしてくれた。
次は泣いたりなんかしない。悪役令嬢ラフィーナ様のように堂々とするんだと希望は私の背中を押してくれた。
18
お気に入りに追加
3,059
あなたにおすすめの小説
【完結】逆行悪役令嬢、ざまぁ(※される方)のために頑張ります!〜皆さん、ヒロインはあちらです!〜
葉桜鹿乃
恋愛
「ニア・ユーリオ伯爵令嬢、君との婚約は破棄する。そして、アリアナ・ヴィンセント子爵令嬢への殺人未遂で捕らえさせてもらう」
グレアム・ミスト侯爵子息からの宣言に、私は死を悟った。
学園の卒業パーティー、私からグレアム様を掠め取ったアリアナ嬢が憎くて、憎くて、憎くて……私は、刃物を持ち込んでしまった。そして、殺人を犯す間際にグレアム様に刃物を叩き落とされた。
私の凶行によって全て無くし、死刑を待つ牢屋の中で、どうしてこうなったのかを考えていたら……そもそも、グレアム様に固執するのがよくなかったのでは無いか?あんな浮気男のどこがいいのか?と、思い至る。
今更気付いた所でどうにもならない、冷たい鉄の板に薄布が敷かれた寝台の上で「やり直せるなら、間違わないのに」そう呟いた瞬間、祖父からもらった形見のネックレスが光を放って……気付けば学園入学時に戻っていた?!
よくわからないけどやり直せるならやり直す!浮気男(共)の本性はわかっている、絶対に邪魔はしない、命あっての物種だ!
だから私、代表して晴の舞台で婚約破棄というざまぁをされます!
さぁ皆さん、ヒロインのアリアナ嬢はあちらです!
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。
※小説家になろう様でも別名義で連載しています。
目的のためなら乙女ゲームがどうなろうとわたくしは知りませんわ!
天月せら
恋愛
魔法学園に通うフレイはウンザリしていた。
自身が通う学校は乙女ゲームの世界だったからだ。
そこかしこで繰り広げられるイベントは現実世界ではうっとおしいことこの上なかった。
そんなある日、フレイは魔法学園で開催される魔法大会に参加することになった。
前編、中編、後編の短編になります。
中身は殆どありません。
後日譚は本日22時アップ予定
ロールプレイングゲームのヒロイン希望だったけど転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢でした!も応援お願いします!
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
婚約破棄の特等席はこちらですか?
A
恋愛
公爵令嬢、コーネリア・ディ・ギリアリアは自分が前世で繰り返しプレイしていた乙女ゲーム『五色のペンタグラム』の世界に転生していることに気づく。
将来的には婚約破棄が待っているが、彼女は回避する気が無い。いや、むしろされたい。
何故ならそれは自分が一番好きなシーンであったから。
カップリング厨として推しメン同士をくっつけようと画策する彼女であったが、だんだんとその流れはおかしくなっていき………………
その国外追放、謹んでお受けします。悪役令嬢らしく退場して見せましょう。
ユズ
恋愛
乙女ゲームの世界に転生し、悪役令嬢になってしまったメリンダ。しかもその乙女ゲーム、少し変わっていて?断罪される運命を変えようとするも失敗。卒業パーティーで冤罪を着せられ国外追放を言い渡される。それでも、やっぱり想い人の前では美しくありたい!
…確かにそうは思ったけど、こんな展開は知らないのですが!?
*小説家になろう様でも投稿しています
執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる