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3章
夫婦生活の恋の宿敵5
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「美世、大丈夫?」
「時雨・・・?」
瑠璃の眩しい姿に意識がいっていれば、ぽんと優しく叩かれた肩。振り向けば離れた席にいたはずの時雨と結愛。
「全く、あまりにしつこいから付き合ったけれど、当て馬なんてする気はないわよ!途中から見ていないし、やる気もないなら帰るわよ」
「結愛、ごめんなさい」
「え?」
時雨に返事を返すことなく、割り込むように話したのは結愛。一人突っぱねるような態度の中、表情はこちらを心配している様子が伺える。私がよく見ていなかっただけで時雨に限らず本来優しい人なのかもしれない。
だからこそ素直な謝罪がすんなりと出れば、動揺したような結愛。一体何がと向ける視線は瑠璃の元。
「私が説教したの。美世ちゃん、マイペースで人の気持ちに鋭く見えて鈍感だったりして、本人意識なく嫌な思いとかさせちゃう子だけど、悪い子ではないんだ。だからもしよかったら美世ちゃんの友達になってあげてほしいな。図々しいかな?」
「瑠璃・・・」
どこまでも私のことを考えてくれる友人を持てたことを私は誇りに思うべきかもしれない。
「友達・・・と、友達になりたいならまず、自分からお願いすべきではなくて?」
「私は友達になりたいわ。当て馬を強要してしまったこと本当にごめんなさい」
「私も是非、友達にさせて!」
何度だって謝罪する。瑠璃の言葉を無駄にしないためにも。何より私が結愛を嫌いではないから。友達になれるなら、なりたい。こんな私だけれど。
「仕方ないわね。友達になったのだし、許してあげるわ。もちろん、貴女のご友人も友達として認めましょう。美世、ついでに時雨の妻にしては不安だけどそれも認めてあげる」
「あ、ありがとう・・・あ、ら?」
「み、美世ちゃん!?」
「な、泣くほどのこと言った覚えはなくてよ!?」
目から温かい滴がポロポロと落ちる。泣いているらしい。なのに、この胸の温かさはなんだろう?結愛にお礼を何度も何度も言いたい気分だ。
「美世」
ふいに、私たちの会話に入ってこなかった時雨が私を呼ぶ。そちらに振り向けば頬に手を添えられ、親指で滴を拭かれた。でも、流れるそれが止まることはない。
そのまま私は時雨に言うべきことを言う。
「時雨・・・ごめん、なさい」
「うん」
「私・・・貴方にわかってて嫌なことさせたわ」
「そうだね」
「嫌いに、なった?」
「ストーカーするほど愛してるんだから、それはないね」
いつものにこにことした表情に益々涙が止まらなくなる。でも胸が軽くなったような気もして、瑠璃に言われたことが理解できないながらも重く感じてしまっていたのかもしれない。
「気にすることが恋の乙女なの気づいてないよね、美世ちゃん」
「私も新たな恋を探さなくてはね」
「一緒に探さない?私、鈴木瑠璃。結愛ちゃんは名前聞いてるから結愛ちゃんでいい?」
「構わなくってよ。瑠璃、いい男探すわよ」
「ええ!」
涙を止めるのに必死な私は、そんな二人の会話が耳に入ることはなかった。
「時雨・・・?」
瑠璃の眩しい姿に意識がいっていれば、ぽんと優しく叩かれた肩。振り向けば離れた席にいたはずの時雨と結愛。
「全く、あまりにしつこいから付き合ったけれど、当て馬なんてする気はないわよ!途中から見ていないし、やる気もないなら帰るわよ」
「結愛、ごめんなさい」
「え?」
時雨に返事を返すことなく、割り込むように話したのは結愛。一人突っぱねるような態度の中、表情はこちらを心配している様子が伺える。私がよく見ていなかっただけで時雨に限らず本来優しい人なのかもしれない。
だからこそ素直な謝罪がすんなりと出れば、動揺したような結愛。一体何がと向ける視線は瑠璃の元。
「私が説教したの。美世ちゃん、マイペースで人の気持ちに鋭く見えて鈍感だったりして、本人意識なく嫌な思いとかさせちゃう子だけど、悪い子ではないんだ。だからもしよかったら美世ちゃんの友達になってあげてほしいな。図々しいかな?」
「瑠璃・・・」
どこまでも私のことを考えてくれる友人を持てたことを私は誇りに思うべきかもしれない。
「友達・・・と、友達になりたいならまず、自分からお願いすべきではなくて?」
「私は友達になりたいわ。当て馬を強要してしまったこと本当にごめんなさい」
「私も是非、友達にさせて!」
何度だって謝罪する。瑠璃の言葉を無駄にしないためにも。何より私が結愛を嫌いではないから。友達になれるなら、なりたい。こんな私だけれど。
「仕方ないわね。友達になったのだし、許してあげるわ。もちろん、貴女のご友人も友達として認めましょう。美世、ついでに時雨の妻にしては不安だけどそれも認めてあげる」
「あ、ありがとう・・・あ、ら?」
「み、美世ちゃん!?」
「な、泣くほどのこと言った覚えはなくてよ!?」
目から温かい滴がポロポロと落ちる。泣いているらしい。なのに、この胸の温かさはなんだろう?結愛にお礼を何度も何度も言いたい気分だ。
「美世」
ふいに、私たちの会話に入ってこなかった時雨が私を呼ぶ。そちらに振り向けば頬に手を添えられ、親指で滴を拭かれた。でも、流れるそれが止まることはない。
そのまま私は時雨に言うべきことを言う。
「時雨・・・ごめん、なさい」
「うん」
「私・・・貴方にわかってて嫌なことさせたわ」
「そうだね」
「嫌いに、なった?」
「ストーカーするほど愛してるんだから、それはないね」
いつものにこにことした表情に益々涙が止まらなくなる。でも胸が軽くなったような気もして、瑠璃に言われたことが理解できないながらも重く感じてしまっていたのかもしれない。
「気にすることが恋の乙女なの気づいてないよね、美世ちゃん」
「私も新たな恋を探さなくてはね」
「一緒に探さない?私、鈴木瑠璃。結愛ちゃんは名前聞いてるから結愛ちゃんでいい?」
「構わなくってよ。瑠璃、いい男探すわよ」
「ええ!」
涙を止めるのに必死な私は、そんな二人の会話が耳に入ることはなかった。
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