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2章
夫婦生活の報告8
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「あー・・・笑った」
笑うことに満足した時には時雨もその両親も落ち着きを取り戻していた。
「孫はともかく、改めて話がしたかったのはもちろんうまくやっているのかと、なぜいきなり結婚に?という疑問もあるのだが、まあ、結婚できたのは美世さんの性格的なものが幸いしたといったところで、夫婦生活は互いに相性よくうまくいっていると理解しよう。結婚を了承した意味は、いくら聞いても私たちには理解できないに違いない」
「顔がいいのとお金がありそうで生活に困らなさそうなのと、恋を知りたいからです」
「恋を知りたいのは初耳ね。でもストーカー相手にそれを望む時点で私には理解できないわ。いくら息子といえどね」
理解も何もそのままの意味なのに。寧ろ、私が一般男性に恋ができるとでも?女性すら瑠璃以外遠巻きにされていたというのに。
まあ、理解してほしいわけではないけど。
「話を戻そう。君たちにはもうひとつ聞きたいこと以外に注意してほしいことがあって、それを言いたかったんだ。」
「注意してほしいこと?父さん、まさか伊集院家のことじゃないよね?」
伊集院とはまた立派な名字ね。確信めいた時雨の言葉からもして、何か私たちに関係ある人たちのようだけど・・・。どうしましょ?笑いに笑った名残か、胸が高まってきましたわ。
ここに暇潰しに来たのは正解ね!なんて思っていれば義父の真剣な低い声。
「その通りだ」
了承を得た言葉にまた時雨を見れば義父に視線を向けたまま、面倒だなといった表情。時雨にこんな表情をさせるなんてよっぽど面倒なお人なのだろう。
「伊集院家とはなんですの?」
「時雨の元婚約者よ」
「君に一目惚れしてすぐ破棄したんだけどね」
「まあ理由があるのだと、その時は時雨の意思を尊重させてもらって了承したし、向こうにもさせた。結婚したい人ができたと聞いた時は、婚約破棄の件はその女性を見つけたからかと納得し、やはり息子には幸せになってもらいたいから妻と喜んだものだが・・・」
「本当にその時は、会話すらしたことがないなら告白してうまくお付き合いができればと思って、結果を待ち望んでいたの。なのに帰ってきたら明日には結婚しますって意味がわからなかったわ!本当に籍を入れちゃうし、結婚式の準備はほぼできてると聞いて、いつか聞けば一週間後、もういつの間に?と混乱の嵐よ」
その時を思い出したのか、また疲れた表情を見せるお二人。私の両親も似たような気持ちだったのだろうかなんて思う。
「話を戻すと元婚約者さんは、私が気に入らないと言うことですか?」
「そういうことね・・・。反対したくてもする暇がなかっただろうから、余計に腹立たしい可能性もあるわ」
「彼女は時雨と違って、時雨を好いていたからね。破棄の時も嫌だと泣いて、時雨のためとはいえ、良心が痛んだものだ」
「女泣かせね、時雨」
「僕は美世以外どうでもいいよ。あれはこちらがいくら嫌悪しても、婚約者だと言って、誰よりもひっついてきて気持ちが悪かった。」
本当に嫌そうな顔。私に対しては自ら近くに寄らせようとところ構わずどんな近場でも、エスコートしようとするのに。気分がいいわ。これが優越感というものかしら?
私だんだん悪どい女性になっている気がしてならないわね。退屈するよりはいいけれど。
「毎日監視しているなら問題はなさそうだが、気を付けるように。美世さんがいなくなればまた自分が婚約者になって結婚できると思っているようだからな。伊集院家も娘を説得しながら監視もしているようだが、もしもの場合もあるからと注意を寄越してくれた。」
反対しているのは元婚約者の伊集院の娘だけということね。これが恋のライバルというものかしら?恋を知る刺激になるかもしれないわね。
「勝負事は好きですわ。受けて立ちましょう」
「あ、あのね?美世さん?私たちは気を付けてと・・・」
「私は恋を知るためなら、恋のライバルを蹴散らすのも知る要因になると思いますの」
「恋のライバルを蹴散らしても、恋を知れるとは思わない。危ないからやめときなさい。時雨も仮にも夫なら止めなさい」
ご両親が私を止めようと必死ながらも冷静に努めようとしているのがわかる。でも私は私のやりたいように生きてきたの。時雨に言われたって勝負から逃げる気はないわ。
「美世が楽しいならいいんじゃないかな。無理はしないでほしいけど」
意外にも時雨は賛成してくれた。
「ならまずはその元婚約者に会うことからね。お義母様、お義父様、今日は楽しかったですわ!元婚約者を迎える準備を致しますので今日は帰ります。そうね・・・あちらにも都合があるでしょうから早い内に私たちの家に来れないか連絡をいただけますか?」
「心配だから僕の仕事が休みな日に調整してくれるかな。あれに会うのは嫌だけど、美世が危険に晒される方が嫌だしね」
「なら会わせない方がいいだろうに・・・」
「美世のお願いはなんでも叶えたいからね」
「私、あなたたちの将来が心配だわ」
「ご心配には及びませんわ。私、勝負事にはカードゲーム以外にも強いのです」
「勝負事以前に君に勝てる人物がいる気がしない」
「寧ろ周囲が心配ね・・・」
一体時雨のご両親は私をなんだと思ってるのかしら?結局最後、義母、義父、どちらも疲れた表情で私たちを見送った。
疲れやすいのは仕事のしすぎねと私は気にもしなかったのだけど。
笑うことに満足した時には時雨もその両親も落ち着きを取り戻していた。
「孫はともかく、改めて話がしたかったのはもちろんうまくやっているのかと、なぜいきなり結婚に?という疑問もあるのだが、まあ、結婚できたのは美世さんの性格的なものが幸いしたといったところで、夫婦生活は互いに相性よくうまくいっていると理解しよう。結婚を了承した意味は、いくら聞いても私たちには理解できないに違いない」
「顔がいいのとお金がありそうで生活に困らなさそうなのと、恋を知りたいからです」
「恋を知りたいのは初耳ね。でもストーカー相手にそれを望む時点で私には理解できないわ。いくら息子といえどね」
理解も何もそのままの意味なのに。寧ろ、私が一般男性に恋ができるとでも?女性すら瑠璃以外遠巻きにされていたというのに。
まあ、理解してほしいわけではないけど。
「話を戻そう。君たちにはもうひとつ聞きたいこと以外に注意してほしいことがあって、それを言いたかったんだ。」
「注意してほしいこと?父さん、まさか伊集院家のことじゃないよね?」
伊集院とはまた立派な名字ね。確信めいた時雨の言葉からもして、何か私たちに関係ある人たちのようだけど・・・。どうしましょ?笑いに笑った名残か、胸が高まってきましたわ。
ここに暇潰しに来たのは正解ね!なんて思っていれば義父の真剣な低い声。
「その通りだ」
了承を得た言葉にまた時雨を見れば義父に視線を向けたまま、面倒だなといった表情。時雨にこんな表情をさせるなんてよっぽど面倒なお人なのだろう。
「伊集院家とはなんですの?」
「時雨の元婚約者よ」
「君に一目惚れしてすぐ破棄したんだけどね」
「まあ理由があるのだと、その時は時雨の意思を尊重させてもらって了承したし、向こうにもさせた。結婚したい人ができたと聞いた時は、婚約破棄の件はその女性を見つけたからかと納得し、やはり息子には幸せになってもらいたいから妻と喜んだものだが・・・」
「本当にその時は、会話すらしたことがないなら告白してうまくお付き合いができればと思って、結果を待ち望んでいたの。なのに帰ってきたら明日には結婚しますって意味がわからなかったわ!本当に籍を入れちゃうし、結婚式の準備はほぼできてると聞いて、いつか聞けば一週間後、もういつの間に?と混乱の嵐よ」
その時を思い出したのか、また疲れた表情を見せるお二人。私の両親も似たような気持ちだったのだろうかなんて思う。
「話を戻すと元婚約者さんは、私が気に入らないと言うことですか?」
「そういうことね・・・。反対したくてもする暇がなかっただろうから、余計に腹立たしい可能性もあるわ」
「彼女は時雨と違って、時雨を好いていたからね。破棄の時も嫌だと泣いて、時雨のためとはいえ、良心が痛んだものだ」
「女泣かせね、時雨」
「僕は美世以外どうでもいいよ。あれはこちらがいくら嫌悪しても、婚約者だと言って、誰よりもひっついてきて気持ちが悪かった。」
本当に嫌そうな顔。私に対しては自ら近くに寄らせようとところ構わずどんな近場でも、エスコートしようとするのに。気分がいいわ。これが優越感というものかしら?
私だんだん悪どい女性になっている気がしてならないわね。退屈するよりはいいけれど。
「毎日監視しているなら問題はなさそうだが、気を付けるように。美世さんがいなくなればまた自分が婚約者になって結婚できると思っているようだからな。伊集院家も娘を説得しながら監視もしているようだが、もしもの場合もあるからと注意を寄越してくれた。」
反対しているのは元婚約者の伊集院の娘だけということね。これが恋のライバルというものかしら?恋を知る刺激になるかもしれないわね。
「勝負事は好きですわ。受けて立ちましょう」
「あ、あのね?美世さん?私たちは気を付けてと・・・」
「私は恋を知るためなら、恋のライバルを蹴散らすのも知る要因になると思いますの」
「恋のライバルを蹴散らしても、恋を知れるとは思わない。危ないからやめときなさい。時雨も仮にも夫なら止めなさい」
ご両親が私を止めようと必死ながらも冷静に努めようとしているのがわかる。でも私は私のやりたいように生きてきたの。時雨に言われたって勝負から逃げる気はないわ。
「美世が楽しいならいいんじゃないかな。無理はしないでほしいけど」
意外にも時雨は賛成してくれた。
「ならまずはその元婚約者に会うことからね。お義母様、お義父様、今日は楽しかったですわ!元婚約者を迎える準備を致しますので今日は帰ります。そうね・・・あちらにも都合があるでしょうから早い内に私たちの家に来れないか連絡をいただけますか?」
「心配だから僕の仕事が休みな日に調整してくれるかな。あれに会うのは嫌だけど、美世が危険に晒される方が嫌だしね」
「なら会わせない方がいいだろうに・・・」
「美世のお願いはなんでも叶えたいからね」
「私、あなたたちの将来が心配だわ」
「ご心配には及びませんわ。私、勝負事にはカードゲーム以外にも強いのです」
「勝負事以前に君に勝てる人物がいる気がしない」
「寧ろ周囲が心配ね・・・」
一体時雨のご両親は私をなんだと思ってるのかしら?結局最後、義母、義父、どちらも疲れた表情で私たちを見送った。
疲れやすいのは仕事のしすぎねと私は気にもしなかったのだけど。
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