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2章

夫婦生活の報告6

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「す、すまない、美世さん。まさかストーカー行為を働いていたとは」

「ま、まさか結婚も脅迫!?」

「脅迫されたように見えますか?」

「「全く見えません」」

涼しげな態度で言ってしまえば、即答で返された。取り合えずストーカーを気にしてない様子もそれで同時に理解してくれたと思うことにしよう。

「僕の一方的な愛ではあるけど、それを理解した上で夫婦生活は営んでいるから心配はいらないよ」

「な、なぜ結婚を?いくら息子がモテるとはいえ、初対面でプロポーズを受け入れるのは正気の沙汰じゃない」

さっきも言ったのに。ストーカーで全てふっとんだようだ。

「顔がよく、お金がありそうでしたから」

「切羽詰まるほどに、お金に困っているのか?」

「いえ?でもお金はあっても困りませんし」

「それはそうだが・・・ちなみにどんなプロポーズを?」

「榎本美世さん、結婚してください。それだけです」

時雨はどうやら、私と結婚すること以外両親にその状況を話さなかったのか、話しても耳に入らないほど両親が動揺していたのか。

義父は、私の言葉に絶句している。

「しょ、初対面だったのよね?」

興奮していたのが嘘のように青ざめながら真剣な顔で言ったのは義母。

「はい、姿すらプロポーズされた日、初めて見ましたわ。」

「そ、それですぐ了承したの?」

「さすがに名前も知らなかったので誰か聞きましたね」

名前も聞かず了承はさすがに私もしない。名前も知らない人と結婚なんて聞いたことがないもの。まあ出会った日に、名前も知らなかった人からプロポーズされて翌日に籍を入れるなんてことも聞いたことはないけれど。

「僕が名乗れば、次に私と結婚したい理由をどうぞと言われたから、今まで見てきた美世についてを語って、好きなところをあげていったよ」

「まるで会社の志望動機を言う面接みたいね・・・」

「・・・で?どうなった」

復活した義父は義母と共にもう遠いどこかを見る目になっている。

「了承しましたが?」

「「どんな流れだ(よ)!」」

時雨の両親は随分息ぴったりね。

「まだまだ語り尽くせなかったんだけど、了承をもらって、それで頭がいっぱいになったね。」

「まあ、今は出会った時のことを考えれば、多少好意はありますから、ご心配なく。恋愛方面かはわかりませんが、生活に不便もないですし、ストーカー行為も気になりません。」

「知らない人に自分のこと語られるのって、いくら時雨ちゃんが美形でも怖いのが普通よね・・・?」

「もうこの際プロポーズの件はともかく、今もストーカー行為をしているのか!?夫婦になって結婚式まてあげて、何故ストーカーをやめない?」

「僕から離れている間、美世を観察しないと落ち着かないからね。美世の願いをいつでも聞き届けたいし、危険からだって守りたい。それに、いつ美世のベストショットが撮れるかわからないし、美世はまだ僕を愛しているわけじゃないから、他の男にだって近づけないようにしないと。恋なんていつどこでするかわからないからね。美世を幸せにできるのは僕だけでありたいんだ」

「恋愛を経験すれば私もそう思えるのかしら?」

「本当なんで結婚したんだ・・・」

「顔とお金目当てにしても毎日ストーカーってつまりは監視よね?」

「はい」

「見られてばかりじゃ疲れないの?」

なんか瑠璃と似たようなこと言うな・・・。やっぱり瑠璃のお母様ですか?と聞きたい。まあ顔の造形からありえないけれど。

「特に気になりません」

「「・・・」」

義母、義父、共に絶句。監視されているからってなんでそうも落ち着かないやら疲れると思われるのだろう?感情をしっかり理解すればわかることなのかしら?
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