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1章

夫婦生活初日の初デート2

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「奥様とてもお似合いです」

「ありがとう」

最初に来た場所は・・・まあ服よね。デートの服は店で見繕うと言っていたのだから当たり前よね。

「可愛いね、美世。着心地や窮屈さはない?」

「大丈夫よ。着心地もいいし、動きやすいわ」

見た目はラフでもなく、可愛らしいドレス。色はピンクで、上はぴったりと、下は若干ふんわりとしたスカートは膝をちょうど隠すくらいに長い。腰辺りには大きめのリボンが結ばれていて、全体的にシンプルではあるもののリボンひとつで可愛らしく映る。

ちなみに時雨もタキシードを着ているので、お高い場所に行く予定なのかもしれない。ドレスコードとして私が今着ているこれなら大丈夫だろう。見た目はともかく、靴のヒールも低めなので、そういったのを好まない私でもそちらは大丈夫だし、この服は動きに窮屈さもなければ着心地だっていい。普段使いしたいくらいにはいい服だ。

さすがは私のストーカーで夫の時雨が選んでくれただけはある。ドレスコードひとつ私の好みに合わせ、それでいて見た目的に問題なしともさせてくれるのだから感心ものだ。

「このまま着ていくよ。お代はカードで」

「はい、少々お待ちを」

これが世に言うブラックカード。会計を済ませれば時雨にエスコートをされながら店を出る。手じゃなく腕を差し出されたから腕を抱くようにさせてもらったけど、手を繋ぐのも腕を組むのも一緒よね?

近くに停めていた車の助手席を開けられ、時雨から離れて中に入って座る。運転席には時雨。時雨なら運転手がいてもおかしくはなさそうだと聞けば、実家にはいるらしい。

呼べば来るようだけど、私との時間に他人を入れたくはない理由から運転を受け持っているみたい。運転しかしない人すら邪魔に思えるなんて、私も恋をすればわかるかしら?

「僕の愛が重いだけだよ」

「私にはそれぐらいがよさそうだわ」

心の声が聞こえてしまったようね。恋をした程度ではわからないと含みを混ぜた言葉に咄嗟に返した返事は嘘ではない。

恋愛どころか、服や食べ物の好みはあれど、何をするにしても興味が湧かない、心が動かない私にはやり過ぎなくらいな人がちょうどいい気がするのだ。

瑠璃がいい例だろう。あの子は喜怒哀楽が激しい感情豊かな子。だからこそ私の友人になり得たとも言える。何事もやりすぎはよくないと言うけれど、悪いわけでもない。

「着いたよ」

「ここは・・・」

「所謂賭博場かな。未成年の君を連れてくる場所ではないけど、僕の妻として付き添いと言う形なら入れてもらえる。未成年は賭博は禁止されているから、お遊びにはなるけど、お金を払って勝てば、賭けに応じた景品がもらえるよ。負ければ払った分だけ払い損だけど、参加賞みたいなささやかな物は必ずもらえる。成人すれば賭博ができるから稼ぐぞと息巻いて借金になることすらあるけど、未成年はどうあっても稼ぎにはならないからね。遊び程度にどうかなと思ってここにしたんだ」

デートにカジノってどうなのかしら?瑠璃は確か、ゲームセンターでこれほしいと言って仕方ないなと真剣にがんばる彼氏を眺めて、苦戦の中、ようやくとってもらったぬいぐるみを大事にするんだと妄想していた。

ゲームに勝てば景品がもらえる。ゲームセンターと似たようなものね。カジノだから勝ってもらって、景品をもらうとはまた違うのだろう。何より時雨は成人しているから未成年用のゲームは参加できない気がする。

「なんでカジノなの?」

「恋愛を知りたいのは理解しているよ。だから君の唯一の友人の妄想を頼りにしているようだし、付き合おうかなと。ゲームセンターは行ったことがないからカジノを代わりにしようかなって。こちらの方が僕には馴染みがあるから」

友人との会話まで知っている様子の時雨に、一体いつからストーカーされていたのかと思う。全く気づかなかった私が鈍感なのか、気づかれずにできる時雨がハイスペックすぎるのか。

まあ高級感漂うカジノを見てドレスコードが必要な理由がわかった。

「お気遣いありがとう。せっかく来たんだもの、楽しみたいわ」

「ぜひ楽しんで。お金はいくらでもあるから」

成人すれば賭博すら時雨なら好きなだけさせてくれそうだ。さて、初めてのギャンブルもどきだけど、私の運はどんなものかしらね。

初めての大きなことに、少し胸が高鳴った気がした。
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