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【あはははっ!残念だったわね!悪役令嬢にされてたまるものですか!】

「あ………」

身体が震えた。失敗してしまった……それだけで済むならまだいい。けど、闇の存在を退けられない今、この失敗はこの世界の命運を左右する。

私が自分の気持ちに打ち勝てなかったばかりに、私は、私は。

「アン……!」

「テオ、わた、し……」

「これ以上はもたない!逃げよう!」

逃げる………?そうだ、逃げないと、でも、次はあるの?魂の回収する存在を知った向こう側はきっと対策をしてくるはず。今逃げれば捕まえるのも困難かもしれない。

高笑いはしていても余裕のない様子が見ていてわかる。私が覚悟さえ決めれば回収できるはずなのだ。甘えるな、ここはテオやアラビアンの生きる世界。私がいるべき世界じゃない。

闇の存在によって魂が世界を揺るがす悪い影響を出さないためにも、アラビアンの本当の魂の覚醒のためにも………私が今できることを。大切な人たちのために。

「………あきらめない」

【!?】

「まもらなきゃ………やくわりをはたさなければ………」

そうして沸き上がるのは神様への忠誠心。ああ、人と関わるにつれてまた忘れそうになっていたのかもしれない。人として生きていればどうしても天界のことは薄らいでしまうと注意を受けていた。魂の回収のことを忘れていないから実感はなかったけど、今は実感できる。

忘れられた忠誠心によって。

この忠誠心を忘れてなければ失敗などしなかったのに。

「私は神に忠誠誓いし使者。貴女の魂を回収いたします」

そこからは妙に冷静になった。

「ア……ン?」

「聖王は闇の存在の足止めをそのまま続けてください。私の魂の力を微力ながら付与します」

魂ごと消えることが怖くなくなった。

「! だめだ!そんな魂を削るようなこと」

テオの声に何も思わなくなった。

「確実な任務成功のため、その願いは受け付けません」

ただ私にあるのは神様の願いを、魂が消滅してでも実行しなくてはという使命感だけ。

【いや……やめて………いやああああっ】

「抵抗は無駄です。アラビアンの魂と一体になればアラビアンの魂の糧となり、貴女の人格は消えます。何も考える必要はありません」

【ふざけるなふざけるなふざけるなあああ!】

圧倒的有利。さっき失敗したのが嘘のように抵抗を抑え、確実にアラビアンの身体に魂が引き寄せられていく。ちらりと伺えばテオはこちらに気を取られながらも闇の存在にうまく足止めしているようだ。

よそ見をしながらよくやるものだと冷静に考えられるくらいには私も余裕で、いらぬ感情も取り払い頭もすっきりとしている。

しかし、回収がうまくいくのも今この瞬間私自身の魂を削りに削って力を全開にしているから。回収と同時に転生する力も残らないことを頭で理解しながらもそこに恐怖はない。

全ては神様のためなのだから。
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