上 下
45 / 49

38

しおりを挟む
そうして転生を果たし、月日は流れ、幼い私は教会へひとり赴いた。街に家族で出掛けたとき、迷子を装って。

「お待ちしておりました。アン様」

「あまりじかんがないの。はやく、せーおうにあわせて」

「はい」

神様のお告げ……神託により、私は行ってもない教会に認知されていた。それにより、会う日は決まっており、こうして出迎えもある。公爵家の貴族として目立つのもあってすぐわかってくれたようだ。

アラビアンではなく、久しく前世の名前で呼ばれてなんとなく嬉しくなりながらも、あまり迷子時間が長引いて、大規模な捜索が始まっても困るので急がせる。

元々この日は聖王に会うために来た。闇の存在と回収する魂が接触を果たしてしまったと聞いて、互いにしかない力で協力するに辺り、互いを知るために。

「彼が聖王テオ・クランです」

「神の代行者アン様に出会えて光栄です」

「かみにえらばれしせーおうにそういっていただけて、こちらこそこうえいにございます」

私より年上のクラン……いえ、テオは自分より小さい私に礼をしたので、私もまたそれに答える。この時、この世界の物語を知る私はイラストよりも少し幼さの残るテオに、少しかわいいかもなんて呑気にも思っていたりもした。

「さて、挨拶はこれぐらいにして神託によりだいたいの事情は理解してます。闇の存在が近くにいては、魂の回収が可能になっても回収は難しいとか……」

「ええ、やみのそんざいにじゃまされかねないのです。それにより、しょうひがはげしくなり、わたしのたましいがきえさるかのうせいもあります。たましいのかいしゅうには、わたしのたましいのちからをつかうので……。ばあいによっては、てんせいすらむずかしくなるでしょう。それでもさいしゅうてきにそれしかしゅだんがないのであればしかたがありませんが………」

「回収した後はどうなるのですか?」

「うまくいけばわたしはたましいをおいだされ、かみのもとへ。かいしゅうされたたましいはアラビアンのたましいとまざりあいひとつになり、ほんらいのアラビアンとなりえるでしょう」

元々アラビアンとひとつになるべきの魂なのだから回収したとたん、アラビアンの魂の糧となるのは簡単に予想できた。あるべき場所に納まる形だ。

「神様の元へ行ったあとは転生を果たすのでしょうか?」

「? たましいをやすめたあとに、そのよていではあります」

なんでそんなことまで聞くんだろうと思いながらも、私はテオの質問に答えていく。圧倒的に闇の存在や魂の回収などの知識は私の方が上である自覚はあったから。

「どれくらいかかるんですか?」

「さあ……しょうひにもよりますが、てんせいにひつようなたましいのかいふくはかなりかかるとききます。ひゃくねんでもみじかいかもしれません」

「百年……なら、アン様には魂回収後会えないのですか……?」

「はい……?」

この時私は思いもしなかった。テオが私に出会った瞬間に私のアンの魂に惹かれていることに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

お姉様の婚約者を好きになってしまいました……どうしたら、彼を奪えますか?

奏音 美都
恋愛
 それは、ソフィアお姉様のご婚約を交わす席でのことでした。 「エミリー、こちらが私のご婚約者となるバロン侯爵卿のご令息、オリバー様ですわ」 「よろしく、エミリー」  オリバー様が私に向かって微笑まれました。  美しい金色の巻髪、オリーブのような美しい碧色の瞳、高い鼻に少し散らしたそばかす、大きくて魅力的なお口、人懐っこい笑顔……彼に見つめられた途端に私の世界が一気に彩られ、パーッと花が咲いたように思えました。 「オリバー様、私……オリバー様を好きになってしまいました。私を恋人にしてくださいませ!!」  私、お姉様からご婚約者を奪うために、頑張りますわ!

断罪されて婚約破棄される予定のラスボス公爵令嬢ですけど、先手必勝で目にもの見せて差し上げましょう!

ありあんと
恋愛
ベアトリクスは突然自分が前世は日本人で、もうすぐ婚約破棄されて断罪される予定の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気がついた。 気がついてしまったからには、自分の敵になる奴全部酷い目に合わせてやるしか無いでしょう。

婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。

藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」 婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで← うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。

王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。 メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。 なんかこの王太子おかしい。 婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います

恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。 (あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?) シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。 しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。 「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」 シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。

処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~

インバーターエアコン
恋愛
 王宮で働く少女ナナ。王様の誕生日パーティーに普段通りに給仕をしていた彼女だったが、突然第一王子の暗殺未遂事件が起きる。   ナナは最初、それを他人事のように見ていたが……。 「この女よ! 王子を殺そうと毒を盛ったのは!」 「はい?」  叫んだのは第二王子の婚約者であるビリアだった。  王位を巡る争いに巻き込まれ、王子暗殺未遂の罪を着せられるナナだったが、相手が貴族でも、彼女はやられたままで終わる女ではなかった。  (私をドロドロした内争に巻き込んだ罪は贖ってもらいますので……)  得意の転移魔法でその場を離脱し反撃を始める。  相手が悪かったことに、ビリアは間もなく気付くこととなる。

処理中です...