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「ははっ高度なダジャレについていけないかな?私のはだからね!」

なんて疲れていれば、まさかのダジャレを認める発言。趣味がダジャレなのは、信用できる人しか話さないはずのヘイヘイ殿下が。

つまりそれだけ周囲を気にする余裕がないくらい必死だということ。オネエ様も罪なオンナである。

そんな中、凍りついて黙っていた周囲がざわつき始めた。

「え、やっぱダジャレ………なの?」

「王太子殿下が……?」

「なんだか、寒いですわ……」

偏見はよくないが、誰もが憧れる王太子が誰をも凍らせる能力があると知り、周囲が引いていくのがわかる。これが爆笑ものならそれはそれでどうなったのかわからないが、今はただただ寒い。

しかもオネエ様をこれで口説いているつもりなのだから。それを口に出せば誰もが嘘だろう?と逆に疑いたくなる光景。

「寒いんで、失礼ですが黙ってもらえますかしら?」

そして口説かれていることに気づかないオネエ様。まあ、気づく方がこの場合はすごいかもしれない。何故急にダジャレを連発されるのか?今すぐやめろとばかりの表情だ。惚れられる方も大変だなぁ。

「は、い………」

当然だが、一切心が揺さぶられないばかりか、だんだん心が離れていくのを理解してか、少し涙ぐむ殿下。ダジャレやめて、今すぐ恥ずかしい自分を出した方がマシですよと、アドバイスすることはできてもそんな義理はないので憐れむ視線だけ送っておく。

周囲は何がしたかったんだ?とばかりの視線を殿下に向けているけれど。

「ねぇ、あなた………」

そんな微妙な雰囲気を壊すように言葉を発したのはユリア。しかも、物凄くこちらを睨むように。

果たしてユリアはあんなに恐ろしい顔だったろうか?アラビアンの記憶ではもっと怖がって怯えてるような、か弱い感じだったのに。

あ、でもオネエ様を洗脳しようとした人だからあちらが本性……?うう、なんか混乱するわ………。

「さて、アラビアン、そろそろ行きましょうね」

「え?でも……」

そう思っていれば、オネエ様はまさかのユリアを無視。スルーして会話は終わったとばかりに二人から過ぎ去ろうとする。つい反応して振り向けば、オネエ様は少し顔が強ばっていた。よく見れば手も震えて………あ、そうか、洗脳………。

オネエ様は殿下よりもユリアを警戒している。それはまたいつ洗脳されるかわからないから、話すのが怖いのかもしれない。洗脳は自我を失うことだろうから。

私は本当にバカだ。オネエ様がオネエ様じゃなくなることで怖いのは私だけじゃない。洗脳される本人が一番怖いはずなのに。

ならばもはやスルーするのが正解なのかもしれない。そう思ったけれど、恐ろしくこちらを睨むユリアが見逃してくれるはずもなかった。

「逃がさない………逃がさないわよ、クラート?」

「「!」」

呼び止められたのは兄の名前で。何故、何故気づいたのだろう?最初見た時は女と認識していはずなのに……。

私は異様な恐怖に一瞬で包まれた。

あれは………あれが、本当にヒロインなの……?
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